ヴィム・ヴェンダース監督のもうひとつの作品も、懲りずに鑑賞。
カンヌ国際映画祭パルムドール受賞した、ロードムービー。
映画「パリ、テキサス」
一人荒野を彷徨い続け、生き倒れてしまった男トラヴィス。
何も話さないが、弟ウォルトと連絡が付き迎えに来ることに。
やがて彼は、4年前に妻子を捨てて失踪したと分かってくる。
息子のハンターは、ウォルトと妻アンが引き取り育てている。
トラヴィスはだまったまま、目を離すとすぐ逃げ出そうとする。
長らく疎遠で行方不明だった兄が突然現れた、弟の心情も複雑だ。
次第にトラヴィスは口を開き、ウォルトはロスの自宅に連れ戻す。
そして、ハンターと再会を果たすが、それぞれの心情が交錯する。
弟夫婦はハンターを我が子のように愛し、大切に育ててきた。
ハンターも彼らに懐き、親子同然に接してきた家族の絆がある。
トラヴィスに何があったのか分からず、クズっぷりにイラつく。
ハンターが素直で無邪気で可愛いので、余計に腹立たしい。
昔のホームビデオを皆で鑑賞するが、仲が良くて幸せそう。
ここから現在に至るまで、果たして何があったのか。
一家に受け入れられたトラヴィスは、記憶を取り戻していく。
さらに、少しずつハンターと交流し、親子の絆を構築していく。
精神を崩壊するほど病んでいた彼が、生気を取り戻すまで回復。
幼い子供の癒しの存在は大きく、ダメ男の再生物語でもある。
実の親子の交流は微笑ましいが、アンが喜べないのも分かる。
そんな中トラヴィスは、妻ジェーンがヒューストンにいると知る。
そこで車を調達し、ハンターと共にジェーンを探す旅に出る。
奇跡的に見つけ出したトラヴィスは、放浪の旅に出た理由を告白。
かつての心情を吐露し、ようやく夫婦に何があったか過去が判明。
あまりに愛し過ぎた故に起きる、双方のすれ違いが切なく悲しい。
全ては共感出来ないが、執着し過ぎたあまり心を病んでしまった。
過去を悔やみ、詫びる姿にまだ愛があるだろうが全ては戻せない。
どんなに好きでも結ばれないことはある、それも運命だろう。
ジェーンも若過ぎたし、残されて先が不安になったのも仕方ない。
だが、大人の事情で振り回され、子供が犠牲になるのは不憫だ。
最後のトラヴィスの選択も、無責任で納得いかない部分がある。
ジェーンの職業や経済状況を考えると、安心して託せるのか?
弟夫婦の元で育つ方が、ハンターにとってベストな気がした。
しかも自分は再び旅立つので、弟夫婦にとっては迷惑な話。
放浪の自由気ままさに男のロマンを感じるか、身勝手と思うか。
評価されるのは分かるが、ラストは複雑で苦々しい余韻が残った。
親子愛に家族愛、崩壊からの再生劇に感動を呼ぶのだろうが・・・。
不器用な男の生き様に、家族の在り方を考えさせられる作品だった。