映画「DOGMAN ドッグマン」 | champagne-bar-tritonのブログ 映画と観劇と浜田省吾

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福岡市にある、「シャンパンバー トリトン」のオーナーです

リュック・ベッソン監督の、バイオレンス・アクション。
映画史に刻まれる、愛と暴力の切なくも壮絶な人生を描く。


映画「DOGMAN ドッグマン」

 


ある夜、負傷し女装した男が乗るトラックが警察に止められる。
荷台には十数匹の犬が乗せられており、男は署に連行される。


ドッグマンと呼ばれるダグラスは、精神科医に半生を語り始める。
今に至るまでの彼の過去を、幼少期から遡って展開していく。


暴力的な父に支配され、兄も一緒になり虐待を繰り返す日々。
ついに犬小屋に放り込まれ、優しい母は出て行ってしまった。


犬と共に育った、あまりに辛く凄まじい壮絶な少年時代の記憶。
犬との交流は可愛いが、ボロボロになっていく姿が悲しい。


そして暴走した父により、車椅子生活になった理由が分かる。
傷付いた彼を救ったのも犬であり、犬の愛に助けられてきた。


色んな犬種がいて、それぞれのスキルを発揮する賢い犬たち。
完全に犬と意思相通したダグラスの、生きる知恵が素晴らしい。


孤独なダグラスは施設に入るが、絶望的な人生は変わらない。
そんな中、束の間光が差したのは一人の女性との出会いだった。


明るく聡明な彼女に多くを教わり、変化を見せるダグラスだが。
長くは続かないのも運命の定か、絶望を受け入れる決意をする。


社会の底辺で生きる障害者と犬、という共通点がある弱者たち。
愛情を返してくれる犬たちの従順さが可愛く、賢さに感心する。


やがてダグラスは仕事を探す中で、あるキャバレーに辿り着く。
優しいドラァグクイーンたちも同じ弱者で、彼を受け入れる。


一連の話を聞く精神科医も、ダグラスが同じ痛みを感じたから。
共鳴し合い、互いに再生を遂げる弱者達の抵抗がたくましい。


女装してステージに立つダグラスに、初めて光が当たった瞬間。
彼の魂のパフォーマンスは素晴らしかったし、感動的だった。


ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの、狂気の演技がお見事。
不条理に晒されながらも誰より純粋で、醜いほどに美しい。
虚構の世界に自身の居場所と希望を見出す姿が、良かった。


そして彼はギャングに目を付けられ、激しい戦いに発展する。
犬と共に工夫して戦うバイオレンス・アクションが、面白い。


獰猛な犬と化し、悪を退治する姿にハラハラしつつ痛快だった。
忠実で賢い犬がチームとなった活躍ぶりも、見どころのひとつ。


全て冒頭に繋がり、愛と暴力に満ちた彼の人生がよく分かる。
世の権力と暴力に抗い続けた男の、壮絶な生き様を描いた作品。
ラストに彼が起こす奇跡は、切なくも神々しくて象徴的だった。