「古今狂言会」2024福岡公演 | champagne-bar-tritonのブログ 映画と観劇と浜田省吾

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福岡市にある、「シャンパンバー トリトン」のオーナーです

狂言を見に行って来ました。大濠公園能楽堂にて。
このシリーズ大好きで、福岡に来た時はいつも参加しています。


「古今狂言会」2024福岡公演

 


今回の席は、右端に近いけど最前列の良席。
柱が邪魔にならず、近くで見れたので良かった。


指定席は満席、桟敷席の自由席もほとんど埋まってた。


まず最初に、南原清隆さんが登場してご挨拶。
明るく爽やかでチャーミングなナンチャン、大人気です。
観客にアンケートを取りながら笑わせてくれて、掴みはOK!という感じ。


そして、ドロンズ石本さんと大野泰広さんで狂言の説明を。
古典狂言の2つの演目の大まかな粗筋や、楽しみ方を教えてくれます。
難しいと思われがちですが、こんな風に分かりやすく解説してくれるのは嬉しい。

 


古典狂言「樋の酒」

太郎冠者に野村万蔵、主人に佐藤弘道、次郎冠者に野村万禄。


主人の留守に、酒蔵と米蔵の番を言いつけられた太郎冠者と次郎冠者。
酒蔵を任された次郎冠者は、こっそり酒の盗み飲みを始める。


米蔵の太郎冠者も酒が飲みたくなるが、離れることが出来ない。
二人とも酒好きなので、何とかして飲もうと知恵を振り絞る。


果てしない人間の欲望に対し、ユニークな知恵と工夫を駆使する姿が面白い。
酒が進むにつれ、次第に大胆になり歯止めが利かなくなっていく。


帰宅した主人に見つかり咎められるが、開き直るほどになっていた。


古典狂言「魚説法」
清発意に南原清隆、施主に石井康太。


やるせなすの石井ちゃんだったお笑い芸人ですが、ついにプロの能楽狂言方に。
この古今狂言会がきっかけで狂言に目覚め、弟子入りして修行を積んだそう。
そんな二人が同じ舞台で二人で演じるのも、感慨深いものです。


ある人が親の追善のためお堂を立てたので、供養と説法を頼みに寺に行く。
だがあいにく僧は留守で、出家して間もない新発意しかいない。


頼まれると、ろくに経も知らない新発意はお布施欲しさに引き受ける。
新人ながら大胆なうえ欲深い、人間の愚かさが滑稽で愉快。


魚の名前を用いてダジャレのような経を披露するのが、可笑しかった。
すぐに施主にバレてしまうが、とぼける二人のやり取りが面白かった。

 


現代狂言「ちょっとGPT」
南原清隆作、野村万蔵演出の、現代を風刺した作品。


人類の役に立つ人型対話AI「ちょっとGPT」を開発している博士。
とある交差点で、悩みを持つ人々の生の言葉を学習していた。


ちょっとGPTを演じるのがナンチャン、ロボットらしい動作が可愛い。
万蔵さん演じる博士は、成長が早いちょっとGPTに翻弄される。
イマドキの若者言葉など、多様な言語についていけずにバグってしまう。


そこへ、ちょっとGPTの発明者だと名乗る者が返せとやって来る。
実は博士は助手だったと分かり、生みの親と育ての親の主張が対立。


今回は、万蔵さんの息子3兄弟が全員参加していて初々しい。
長男が演じ、親子関係が逆転している姿が面白かった。


他にも、売れない漫才コンビや、会社の上司と部下が登場してドタバタ劇に。
彼らは色んな言葉で傷付けあい、言葉のバトルが繰り広げられる。


言葉遊びの妙が楽しくて、さらに色んなネタが盛り込まれている。
さすがナンチャン、巧みさに唸ったし笑った!めっちゃウケまくった!


着眼点が天才的だし、ナンチャンは脚本家もいけるんじゃないでしょうか。


人との関わりで武器にもなるが、救われるのもまた言葉が持つ力。
進歩し続けるAIに対し、人はどこまで頼り、どう接すればいいのか。


昔から変わらないものと、変わっていくものとの対比がお見事だった。
争っていた彼らはやがて、「許す」というキーワードで変化を見せる。


皮肉と風刺を込めて問題提起しながら、ユーモアたっぷりに描いていた。
最後はまさかのAIが自立?!という、最高に愉快な着地点だった。

 


カテコ?というか、最後は全員が登場して舞台挨拶あり。
福岡からスタートしたばかりで、今後の意気込みなどそれぞれより。


こんな舞台上の記念写真が撮れるファンサービスもあり、最後まで楽しかった。


チケット代金、指定席だと6500円とお得に楽しめる。
狂言もこんな風にイマドキにアレンジしたら、すごく面白い。


古き良き古典芸能を守り伝承しながら、広く普及するにはいいと思う。
踊ってボケて、ナンチャンの芸達者ぶりに、感心しちゃいました。