映画「累」 | champagne-bar-tritonのブログ 映画と観劇と浜田省吾

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福岡市にある、「シャンパンバー トリトン」のオーナーです

禁断のキスで顔を入れ替える、二人の女の嫉妬と欲望の物語。
劣等感と欲望のドロドロバトルを描く、愛と狂気の、衝撃のダークシンデレラ・ストーリー。

土屋太鳳と芳根京子のW主演で贈る、禁断の愛憎劇。
醜いのは、見た目か、心か?本当の美しさとは・・・?

毎度、原作は未読です。
この手のドロドロ劇は、大好きなジャンルなんだけど。。。

映画「累」

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伝説の女優・淵透世を母に持つ少女・累は、母親譲りの天才的な演技力を持ちながらも、顔の大きな傷に強いコンプレックスを持って生きてきた。
そんな彼女に母が残した口紅は、キスした相手の顔を奪い取ることが出来る、不思議な力を秘めていた。
美しい容姿に恵まれながらも、花開かずにいる舞台女優、丹沢ニナと、運命に導かれるように出会い・・・。

謎の口紅を塗ったら、顔が入れ替わる・・・という時点で、ファンタジー。
なので、このファンタジー設定に、突っ込んではいけませんね。

と思いつつも、芳根京子ちゃんが可愛くて、ただ大きな傷があるというだけなので・・・そんなに醜く見えないんですよ。
あの傷跡だけを、手術で目立たないようにすればいい話では?と思ってしまった。(笑)
二人が背格好も含め、普通によく似ているし。

傷跡だけじゃなく、本当に顔自体がブサイクな人を起用したら、幼い頃から抱き続けてきた劣等感が、もっと強く伝わるかも。

後半で、あの傷が出来た過去が明らかになりますが、あくまでもアクシデント。
少なくともそれまでは、可愛がられていたんじゃないかな。

あと、あの切り方(切られ方)で、傷跡が目の近くまでって、あり得ません!(笑)

それと、二人が思いを寄せる若手の演出家・烏合役の横山裕。
クールで、才能があって、やり手で・・・というキャラと彼が、まったく似合ってない。

かなり「無理に作っている感」があって、違和感。
頑張りは分かるけど、さすがにミスキャストだと思う。

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物語は、恵まれた美しい容姿を持つニナと、母譲りの天才的な演技力を持つ累が、羽生田により引き合わせられた事から始まる。

美貌と才能という、お互いが欠けていて欲しいものが一致した二人は、顔を入れ替える決断をする。
当初は、互いの利害関係が一致していたわけです。

今までずっと容姿にコンプレックスを持ち、人前に出ることはもちろん、人目を避けて孤独に生きてきた累にとっては、ニナの顔になり全て初めて知る世界ばかり。

光の当たる舞台に立ち、別人を演じる楽しさ、華やかな芸能界、注目される快感・・・。
「完璧な女優」となったニナは、一躍脚光を浴び始め、互いの欲求が満たされていく。

だが、累が烏合に惹かれていくことで、それぞれの欲望と嫉妬心が抑えられなくなり、暴走を始める・・・。

以前から、烏合に憧れていたニナが、黙って引っ込んでいるはずも無く・・・。
このまま自分の人生や存在が乗っ取られるのではないか,という不安もあり、行動がエスカレートしていきます。

自分の名声を手に入れる為には累は必要だけど、「影」のまま我慢していられるのか?
華やかな舞台の光と、その陰にある闇。
虚像と実像が交錯していく、複雑さ。

土屋太鳳、芳根京子共に、一人二役=二人一役、をしているので、このガチンコ演技合戦が、見どころ。
瞬時に顔は入れ替わるものの、中身がどちらなのか、をちゃんと演じ分けているのはお見事。

欲望をむき出しにし、狂気に染まっていく様は、どちらも鬼気迫る迫真の演技で素晴らしい。

お互い、舞台女優として認められたい、花開かせたい、という情熱、欲望が伝わってきた。

ニナの抱えた問題であるあの「秘密」とやらは、ちょっと都合良過ぎやしないか・・・と思ったけど。

女同士の嫉妬って、本当に怖い!
嫉妬に狂うほどに、醜く、汚く、落ちぶれて、それでも必死でもがく悲しい性が、切なくやるせない。
そんな女の欲望と業を、まざまざと炙り出す。

大作舞台への主演が決まった累は、この舞台に賭ける。
ニナは、黙って助けるのか、陥れるのか、ドロドロバトルに発展する。

この騙し合い、駆け引きで、力関係が次々と入れ替わる、クライマックスの怒涛の展開は、面白かった。

また、劇中劇である「サロメ」の演技が、本当に素晴らしい。
土屋太鳳ちゃんの本気のダンスといい、わずかな劇中劇も楽しめるのは良かった。
あの舞台、フルで見てみたい!

栄光を極めた者だけが見れる、あのラストショットも圧巻の光景。まさに、女の執念の結晶。
ゾクッとさせる、鳥肌モノのエンディングでした。

あの高さから・・・無傷はあり得んでしょ・・・という突っ込みどころが、最後にまたよぎるけど。(笑)
そんな細かいことを気にしなければ、充分楽しめますし、若手の主演女優二人の演技は、良かったです。

二人とも演技派だし、ぶりっ子なキラキラ映画は卒業して、こうして新たな境地を開いていくのは、女優としての幅も広がるし、いいんじゃないかな。今後の活躍にも期待、ですね。