「スムーズに進む時は、見えない存在からの後押しがある」

そんなようなことを書いているうちに、ふと思い出したことがあります。

私が昔住んでいた東京の近所の方の話です。

 

その方は、ずっと前から、とある県に移住したい、と常日頃言っていました。

大きなビルに囲まれた町で、毎日デパートに出掛けるのが好きな人なのですが、

「山を見て暮らしたい」と、まるで夢見る少女のように口説いていたそうです。

 

その方が数年間ずっと口説いている間、私たちは、思いもしないきっかけから、

ほんの1ヶ月ほどで今住んでいるところへ移住が決まり、

あれよあれよといううちに話が進み、半年後には引っ越していました。

 

さて、その方はどうなったかというと。

私たちが引っ越しを済ませた数年後、ようやく夢を叶え、

山のふもとの広大な土地に家を建てたそうです。

 

ところが…

 

次々と、その方に不幸が襲い掛かります。

町内会に入るのを断ったせいもあるのか、地域に溶け込むことなく孤立し、

一番最寄りのスーパーは「小さすぎてろくなものがない」ため満足できず、

運転ができないのに車がなければ一歩も出られない生活に付いて行けず、

不満ばかりが口に出て...ついに、その方の「わがまま」に耐えかねた夫が、

その方に手を挙げたのでした。近所の診療所の医者は、見抜いていました。

 

あんた、すぐにでも元いた町に戻った方がいい。

 

けれど、その方はまだそこに居続けようとしました。

そして、ろくなものを食べないせいか、肺炎にかかってしまいます。

また夫も、東京の病院まで通わなくてはならないような病にかかってしまいました。

 

続きます。