もう20年ぐらい前の話です。
あの頃、何度か、法廷に足を運ぶ機会がありました。
離婚の件とか、DVの件とか、子供の養育費の件とか。アメリカだからでしょうか、色々と、事あるごとに、という感じでした。
そういう時でも、いつも出逢いってあるものですね。
その中でも、今でもとっても印象に残っている人がいます。
その人のお名前とかは忘れてしまったのですが、法廷内でガードをされている女性の職員さんだったと思います。
法廷が終わった時点で、静かに近寄り、私に話しかけてくれました。
話の内容は確かこんな感じです。
怖い思いをして大変だと思うけど、何かあったら相談に乗るので連絡くださいね。週末はルームメイトと映画を観たりパーティーをしたりしているので、よかったらいつでも遊びに来てください。
そして、ご自分のビジネスカードを渡してくれました。
私はその時、法廷ではたった一人で、身寄りも無いし、きっと凄ーく頼りない震えた1匹の小動物みたいな感じだったんじゃないでしょうか。もう、今すぐとって食べられる直前みたいな。
そんな私を見て、「あなたは一人じゃないよ」と教えてくれようとしたんだと思います。私は、彼女からのメッセージをそう受け取りました。
そして、とっても心が温まりました。
私はその後、彼女に連絡を取ることも、また法廷で会うこともありませんでした。
正直なところ、電話で話すのは自信が無かったですし、何となくですが、自分の中で、電話をするのに正当な理由みたいなのが見つからなかったんだと思います。意地を張っていたのかもしれません。
でもあの時の、お腹の底の方からジワジワとあったまってくる感じ、よく覚えています。あの時の優しい声掛け。どれだけ嬉しかったことか。
私、あの時のこと、今でも時々思い出しては、強く思うことがあります。
私も、ああやって声を掛けられる人でありたい。
一瞬でも、誰かの心を支えてあげられる人になりたい。
もうお名前も覚えていないし、ビジネスカードも見つからないです。でも、彼女とのあのエピソードは、ずっと私の中に残ります。思い出の中に、それから、私の心の教科書の中に。