寿フォーエバー/昭和の読書/大いなる聴衆/さよならのあとで | 音盤ながし

寿フォーエバー/昭和の読書/大いなる聴衆/さよならのあとで

 雪にかまけて読んだ本の感想に手を付けぬ間に読了本が溜まってきたので、この辺でエイッとウッチャリな感じで決めてみよう。

●山本幸久『寿フォーエバー』
 
  荒川洋治『昭和の読書』
  永井するみ『大いなる聴衆』
  ヘンリー・スコット・ホランド:詩、高橋和枝:絵『さよならのあとで』


 山本幸久の職場青春小説が大好きで、だから当然この結婚式場という職場を舞台にした『寿フォーエバー』は避けて通れない(笑)。ことに『凸凹デイズ』に皆さんが再登場するとなれば、これは読み逃せない。相変わらずゴミヤのイケイケ・キャラは強烈でしたね。ヒロイン靖子は結婚式場に勤める、自身婚活中である。結婚式のプランニングを仕事としている。チームがある。山本の職場小説が好きなのは、職場のチーム・仲間のキャラが良く、仲間っていいな、と思わせるとこなんだね。現実はともかく、山本の職場小説は温かい。『寿フォーエバー』のラスト、靖子の思いはこうだ。「...他人の愛は素敵だ。ならば自分の愛も素敵なはずだ、きっと。ぜったいそう。愛は、ある。」

 そうそう、、と主人公を温かく励まし応援したくなるのが、山本の職場青春小説なんだよね。

 一転こちら荒川洋治の『昭和の読書』は硬派な味わい。昭和に書かれた、そして読まれた文学を案内してくれるエッセイ集として読んだ。けっこう刺激的で、読みたい本が何冊も出てきた。保田興重郎『日本の橋』はさっそく文庫本で探して買った。これは難物だった。己の無学が嘆かわしくなった。普段、気楽に楽しめるエンタメ読書ばかりしているせいで、言葉への探求力が落ちているんだなと痛感した。難しい文章について行けないんだよね。いかんなあ。

 「新感覚派」って人達がいて、平成の世から昭和の新感覚とは?と読んでみると、それは関東大震災後に登場した新感覚な作家達で、有名なとこでは川端康成、横光利一。そこで横光の小説の冒頭の一句。「沿線の小駅は石のように黙殺された。」これは急行列車の走る様子の表現。が~んときたね。かっこいい!クール!なるほど新感覚!
 と、なかなか刺激的な『昭和の読書』なのでありました。

 永井するみ。大好きな作家だったが、惜しくも2010年に49歳という若さで亡くなった。『唇のあとに続くすべてのこと』が最初に出会った小説だった。恋愛小説でありミステリー&サスペンスであり、この辺がじつに巧い作家だったと思う。この『大いなる聴衆』は彼女の初期の作品で、やはり恋愛&ミステリー&サスペンス小説なんだけど、ここではさらにベートーヴェンのピアノ・ソナタが重要な役割を担う。永井するみが東京芸大音楽学部中退だってことを、この文庫のあとがきで知りびっくり。自身の得意な領域から物語を作り出したわけで、道理でピアノ・ソナタ「ハンマークラヴィーア」に関して精密で、そしてピアニストの生態についてはリアルである、といったことが頷ける。天才ピアニストがいて、その天才に魅せられ振り回される人達がいる。最後の一言が甘美で恐い。そして巧い。


 『さよならのあとで』は発行者で出版元夏葉社代表島田潤一郎氏の思いのこもった詩画集。一編の42行の詩に絵が添えられている。大切な人を亡くした時に読まれてきた詩だという。詩も絵も、静かで温かみがある。死は静かに穏やかにそこにある日常なのだということか。

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昭和の読書/荒川 洋治
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