山下達郎『Ray Of Hope』 | 音盤ながし

山下達郎『Ray Of Hope』

●山下達郎『Ray Of Hope』
 達郎の新作がようやくリリースされた。去年9月始め頃、新潟県民会館で達郎のライヴを見たんだけど、その時もうじき出ますからと本人が言ってたCDが、ついに登場した。
 
 そこで達郎の新作を待つ気持ちを俺なりに考えてみた。先ず、そんなに変化はないだろう。確立された達郎サウンドは今回もそのままだろうと。それはすでにTVのドラマなどで耳にしている曲が少なからずあり、それがまさに達郎印の音楽だから新作にも大きな変化はないと思えた。

 TVとのタイアップだけど、それは竹内まりやさんも同じで、新作までのインターバルが長いから、その数年の間にTVのドラマ主題歌やCMなどで新曲をちょびちょびと発表してるわけで、ファンは達郎&まりやさんの新曲の感じをなんとなく分かってるわけだ。だから新作CDというのは、半分はここ数年の集大成としてまとめて楽しみ、そして残り半分が新曲への期待となる。

 でもすでにTVでお馴染みの曲といっても、ドラマやCMで流れるのとCDでまるごと1曲聴くのでは、その曲の印象も違ってくる。やはりCDできちんと聴くと、その曲の強さが数倍に膨れ上がる。TVで毎週見ていたドラマの主題歌だった「街物語」など、TVで聴く度にもうすこし聴かせろよと、欲求不満を募らせていたものだ。「ずっと一緒さ」にしても「希望という名の光」にしても、フルバージョンで聴きたい欲求を募らせるに十分の、達郎らしいキャッチーな詞とメロディーを持っていた。

 3月11日の大震災は、やはりこのアルバムにも少なからず影響を及ぼしていると思える。「俺の空」は力強いファンクロックに乗せて " 俺の空を 誰が売り飛ばした... 俺の空を 返せよ!" と歌われる。また「希望という名の光」のように、震災前に作った曲だけど、その詞の内容が震災後の心情に寄り添い励ましの歌に聞こえ、達郎もそれを思い、アルバムの最初と最後に、曲のコーラス部 " A Ray Of Hope For You..." をアカペラ・コーラスで、まるでレクイエムのように挿入したのじゃないだろうか。

 山下達郎のマルチプレイヤーぶりにも触れておこう。彼はこれまでのアルバムでも、ギター、ベース、ピアノはもちろん、打ち込みによるドラムなどによる一人多重録音で完成させた曲が多い。達郎の場合、限られたレコーディング期間にスタジオを押さえてアルバムを完成させるというような、レコード会社からのさしせまった要求が無いようで、だから自分一人でこつこつと自宅スタジオなどで妥協のない録音に打ち込み、ベーシックなトラックを完成させ、それでそのベーシックなものが完成度があまりに高いので、そのままアルバムに入れることができる、そんな事情があるような気がする。
同じような制作過程を持つ竹内まりやのアルバムと、サウンドが似ているのは当然のこと。

 そのようにして練り上げられたサウンドは、贅肉はそぎ落とされ、飾りのような音はいっさい無く、ひじょうに強度の高いサウンドになっている。
「新しすぎず、古すぎず、時の試練に耐える歌」と達郎&まりやの音楽について、達郎が語ったことがあった。彼は革新的な音楽など目指してはいない。普遍的で力強いポピュラー・ミュージックこそ彼が目指している音楽だと思う。R&Rのフォー・リズム、ギター・ベース・ピアノ・ドラムによるタイトで力強いサウンドに乗ったドリーミーなメロディー、それが山下達郎の音楽だと思うのだが。

 あたりまえながら、本作もまた素晴らしいアルバムだった。ロックン・ロールよ永遠なれ。


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