関口良雄『昔日の客』 | 音盤ながし

関口良雄『昔日の客』

●関口良雄『昔日の客』
 「...かつては私の背中におんぶされ、私の両手に手を引かれるようにして運ばれた本達よ。...」著者関口さんが、愛蔵の書物を日本近代文学館へ寄贈した時のことを綴った文章です。まるで自分の子供(あるいは老いた親)のように本を愛した著者の心情にうたれ、心が温かくなりました。
関口さんは古本屋さんです。そしてその当時昭和20~30年代、関口さんは本の買い付けなど、風呂敷に本を包んで運んでいたのですね。
 東京大森の古書店「山王書房」には、多くの作家や学者も訪れました。そんな山王書房を舞台に、尾崎士郎、尾崎一雄、上林暁、野呂邦暢など特に親交の深かった作家達との交友や、古本にまつわる話しが、素敵な短編小説のような語り口で綴られたのがこの随筆集です。昭和53年、著者が59歳で逝った1年後に出版され、その後幻の名著として語り継がれ、去年夏葉社より待望の復刊となりました。
 本書の魅力はずばり関口良雄さん本人の魅力です。古本を愛し、文学者を愛し、お酒が好きで、話し好きで、酔うと歌い出す、そんな関口さんが素敵です。そして、今では、そんな関口さんのようなひと、ここに登場するような人達、そんな人付き合い、そういったものすべてが『昔日の客』のように思われます。
 日本も日本人も、変わってしまい、
『昔日の客』の世界は懐かしい日本を想い起こさせます。そして僕はそんな懐かしい日本が好きなんだと思います。
昔日の客/関口 良雄
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