池波正太郎『幕末新撰組』 | 音盤ながし

池波正太郎『幕末新撰組』

●池波正太郎『幕末新撰組』
 池波正太郎の新撰組と聞けば、そりゃあ面白いに決まってるから読みたい。そしてそれを娘が持っていたのでさっそく拝借。主人公は二番隊隊長永倉新八。これもいいなあ。永倉新八!竹を割ったように真っ直ぐな快男児。そして幕末を生き延び、大正四年に七十七歳の長寿を全うした男。剣を取っては、近藤、土方をしのぎ、ナンバーワンの沖田と互角だったともいわれる。というようなことは新撰組ファンには知られたことです。
 さて池波新撰組の永倉新八はといえば、江戸っ子剣士ですね。単純明快を好み、女性に対しては純情で、もちろん宵越しの金は持たねえ(笑)って好漢である。これは池波さんの江戸っ子贔屓から来ているわけで、西国贔屓の司馬遼太郎が書けば、様相も変わってくるんだよね。佐々木譲(北海道生まれ)が
榎本武揚を主人公に書いた『武揚伝』では、勝海舟なんかめちゃくちゃ悪い奴だし。
 勝てば官軍、歴史は勝者によって作られる。教科書の日本史では「明治維新」といかにも立派だけど、江戸っ子や東国の反薩長勢力にとっては、思いはまた別だったはずで、賊軍だった新撰組の衰えない人気の裏には、こうした負け組への共感が根強いことが伺える。俺も日本史の中では負け組であり裏日本新潟の人間だから、明治維新なんていう言葉には複雑な思いを持っているひとりだ。
 そうだ、永倉新八のことだった。この物語は、永倉が近藤達と出会った頃から、大正に大往生するまでの人生を描いている。ぶれない男の成長物語として痛快であり、特に明治期の晩年の永倉がかっこいい。
幕末新選組<新装版> (文春文庫)/池波 正太郎
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