さて、最後のお産、五男のお産の前に

私に多大な影響を与えてくれた

愛猫ゴマちゃんのお産のお話を先に書かなくてはいけません。


私が五男の妊娠をしる二ヶ月前に

ゴマがお産をしました。


ゴマは知人のお家の外に置いてある使っていない靴箱のなかで

野良猫ちゃんが生んだ子でした。


もう一匹クウというまっしろな猫ちゃんと一緒に

生後一ヶ月ちょっとでうちにやってくることになりました。


二匹の猫はどちらもメスでしたが

うちはかなりの山奥で


おまけに数キロ離れた集落に猫を飼っているお宅があるとはいえ

その猫ちゃんたちは避妊手術をちゃんと済ませた猫ちゃんたちだったため

まさか、ありえないと避妊手術をしていなかったのです。


野良猫の姿も見かけないし~と思っていたら


…たまに入りこんできちゃう子がいるようで


ゴマは私たちの知らない間に妊娠していたのです。


夫と「ゴマ太ったね~」と話すようになって

キャットフードを「体重管理用」に変え

そんなころに、ある日突然お産は始まりました。


3月の半ばのことでした。


コタツの中に入ったゴマが

私たちの足を邪魔そうに、怒って噛んできたのです。


もちろん、こんなことは初めて。


えらく機嫌が悪いなぁと足を入れられずにいると

中から聞いたこともないようなゴマの声が数回。


静かになったなぁと思ったら、また。


おかしいと思い、中を恐る恐る見てみると…


なんとなんとそこには二匹の赤ちゃんが生まれていたのでした。


もう、びっくり。


お産の様子を見ていたら

ゴマが唸り声をあげ、赤ちゃんが出てきて

ゴマはあかちゃんを舐めるより先に

一緒に出てきた胎盤を食べていました。


そして、あかちゃんを舐めながら

また数十分後、次の子を産むといった感じで。


四匹目が出てきたときには、恐ろしくなりました。

これ、いつ終わるんだ、と。


お産は四匹で終わったみたいでした。


ダンボール箱を用意して

布をひき

一番あたたかい場所にゴマとあかちゃんを移してその日は眠りました。


次の朝

そのダンボールの中にゴマも赤ちゃん猫もいません。


すごく心配になりましたが

ゴマは屋根裏に場所を移し、子育てを始めたようでした。


子を守りたい本能に感動したものです。


それまで仲良しだったクウとは

子育てを機に仲が悪くなってしまったのも悲しいのですが


この時のゴマにとって

子を守ることが一番の優先事。


うちには犬もいたし、やんちゃな男の子が4人いるし

そりゃそうよね。


見に行きたいのを子供たちとぐっと我慢して


なりゆきを見守っていました。


ゴマは、本当に慎重に赤ちゃんたちの場所を移動しながら


少しずつ少しずつ


私たちの住む空間に赤ちゃんを連れてきてくれました。


その慎重なこと。


感動すら覚えました。



この一連のゴマのお産、子育てで思ったことがあります。


当たり前ですが

ゴマには「妊娠」という概念がなかったはずです。


あるとき、オスと出会い

そして本能のままに交尾があって

赤ちゃんが宿ったこと


知識としては理解していないと思います。


体の変化は容赦なく

そういえば、よく吐いているときがあったし

どんどんお腹が大きくなっていってたし

胎動があったり

食欲が増したり。


知識がないとはいえ

その体の変化をただただ受け入れ

起こることを受け入れ続けている強さ。


陣痛、怖かっただろうか、とか。


死ぬんじゃないかって思ったかな?とか。


不安に襲われることもなく

ただ、自分に起こることを受け入れられるのかも、とか。


とにかく、自分と比べてばかりでした。


私たちは妊娠ということを体験せずとも

概念で知り

知識で知り

それと照らし合わせながら、体験していく。


知識がある分

危険や異常を見分けることができるメリットはあるのだけど


そのまんまを受け入れるということが、できにくくなってしまう。


本能を生かしにくくなってしまう。


子を守ろうとするのは本能です。


こんなに当たり前にその本能を発動し


それだけに神経を費やし


育児書もなし

おばあちゃんの知恵もなし


ただただ本能のままに

DNAに書き込まれたものを頼りに


立派すぎるほどの母猫になったゴマを見ていると


私たちのお産のおかしさが

まざまざと思えてきて。



人間が地球に誕生して以来

ずっと続いてきたこと。


生まれて死ぬという、当たり前のことが


今は病院におまかせ

助産師さんにおまかせになっているのが

すごくすごく不自然なことのように思えてきたのです。


そんなときに、妊娠。


わたしの気持ちは一気に


自分の力だけで

産んでみたいという方向に進みました。