次に目を覚ましたのは、
病院のベットの上だった。
目覚めてすぐに母さんの顔が目に入った…
それはもう…ものすごく心配した顔で…
「チャンミン……心配したわ……」
母さんは泣きそうになっていた。
僕は全身を強く打ち、あちこちに擦り傷があったけれど、大きな怪我はなかったようで。
あの階段から落ちたのに…軽傷だった…
ユノが…守ってくれたから……だね……
ユノ……
ユノは……?
「…母さん…僕と…一緒に居た人は…?」
母さんは一瞬だけ悲しそうな顔をしながらも、
「あの子も大丈夫みたいよ…少し頭を打ってしまったみたいで…今は検査とか、色々と……でも、話も出来るし、大丈夫みたい…」
「母さん…あの人が僕を守ってくれたんだ……」
「…そうみたいね……あとで、お礼に行かなきゃね……」
「母さん……
僕が小学生の頃…泣きながら帰って来た日の事、覚えてる……?服に大きな穴を開けて帰って来た日の事…」
「…えぇ…駅の階段で転んだって…」
「本当はね、あの時も誰かに助けてもらったんだ…忘れてたけどね……その子、大怪我しちゃってた…膝からたくさん血が出ててね……僕、それが怖くて逃げたんだ………でも…その子……その子がっ…今日も助けてくれた…ユノ…だったんだ……今更…思いだっ…しちゃっ…て……」
僕は大きな声を出して泣いた……
痛む身体の事なんか気にしないで、
とにかく大きな声を出して泣いたんだ………
「そう…だったのね…母さんも…何も知らなくて…お礼…しなきゃね……今日はゆっくり休みなさい…チャンミン……」
そんな僕の背中を…母はこれ以上は何も言わずに撫で続けてくれた……
安静の為に、
今日は入院する事になって。
夜…病室を抜け出してユノの部屋へと向かった。
コンコン…
返事はない…
静かに病室のドアを開ける…
そこにはすやすやと眠っているユノがいて。
頬に大きな擦り傷があるユノ……
「……ユノ……」
ユノの両頬を優しく包んで声をかけた…
「…んっ…チャン…ミナ……チャンミナなのか……」
「そうだよ…僕だよ…ユノ…」
「……大丈夫…か…?」
「うん……ユノが守ってくれたから……」
布団の上に置かれていたユノの手を握る…
「…ユノは…?ユノは大丈夫……?」
「……大丈夫だよ…チャンミナ…検査の結果的にも大丈夫だった…明日には退院する…よ…」
「良かった……ユノ…良かった…うっ…うっ…」
それでも頬には大きな擦り傷…
手にも包帯を巻いていたし、
いたるところに内出血も……
涙が止まらなかった……
そんな僕を見て、ユノはゆっくりと上半身をおこす。
そして、
僕をそっと抱き寄せた…
「…チャンミナ……良かった……今度は逃げないでいてくれて……」
「…ユノ…ユノだったんだね……小学生の頃、僕をっ…僕を助けてくれたのは……」
「……覚えて…た?…チャンミナ……」
そう言って僕の頬に軽いキスをするユノ…
「ううん……。思い出したんだ…ユノ…あの時、僕…怖くて…ユノの足から流れる血が怖くて……逃げたんだ……ごめんね…ユノ…ごめんね…」
涙は止まらない…
「それに…その時の…怪我が……この……膝の傷…なんでしょ……?」
「チャンミナ…大丈夫だよ…俺が君を守りたかった…ずっと…小学生の頃からチャンミナを見てた…」
「……えっ……?」
「いつも遅くまでランドセルを背負って…歩いているチャンミナが気になってた……
俺、小学校このころから…バスケのジュニアチームに入っててさ。練習、結構遅くまでやってたからさ……そこから帰る時、いつもチャンミナを見たんだ……」
確かに僕はずっと塾に通っていた。
帰りも遅くて。
でも自分で決めた事だったから、どんなに遅くなっても…ちゃんと通っていた…。
「その頃から…僕を…知ってたって…事……?」
「あぁ…瞳の大きい子だなって…なんだか…すごく気になってた…ほんと、毎日気になってた…
いつも一人で歩いてて…チャンミナ…いつもりんごのジュース、飲んでた…いつも同じ場所でさ…
俺も一人だったし、思い切って話しかけようとしてたんだ…友達になれたらなって…
その時にチャンミナが大人とぶつかって……咄嗟にがばってた…何も考えずに…咄嗟に……」
僕を抱きしめる腕に…力が入る…
「…ユノ…僕のせいで…僕のせいで怪我…したんだね…その為に、バスケ…も…」
包んでいた腕が外され、
僕の頬を両手で包んだユノ…
泣きじゃくる僕の瞳から流れる涙をそっと拭って、
「…違うよ…チャンミナ……そのことは気にしなくていい……俺はチャンミナが怪我をしなくて…本当に良かったと思ってた…すぐに立ち上がったチャンミナを見て…安心したんだ…」
ユノ……嘘…だよね……
僕のせいで…
バスケ……出来なくなったんだよね……
あなたのせいでユノは夢をあきらめたのよ……
ハルさんの言葉が突き刺さる……
「ユノ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
嗚咽して泣きじゃくる僕の背中を優しく撫でてくれた…
「それから俺…病院の都合で…あの駅にもいかなくなって…チャンミナを見る事が無くなった…どうしているのか…ずっと心配してた…」
「…僕も…塾をやめたんだ…」
「ずっと…ずっと気になっていたんだ…泣いてないかな…本当に怪我をしなかったかな…って…。忘れた事なんか…一度も無かった……。
それが…施設実習でチャンミナを見た時…本当にびっくりしたんだ…
でも…すぐに分かった……あの時の子だって……名前も知らなかったお前を……ようやく見付けたんだ…」
「……ユノ……」
「すぐに声…かけれなくて…チャンミナも…覚えていないのかなって…でも、覚えていないなら…それでいい。その方が良いって。ただ笑ってくれていたら…それでいいって……チャンミナ…ずっと…ずっと前から…好きだったよ……」
「……ようやく掴まえたんだ…俺の初恋の人を………」
ユノがそう耳元で囁いた……
ユノ…
僕だって…
僕だって…本気で恋をした人はあなたが初めてだよ…
本気で愛した人……
それがユノ……
ユノだよ……
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