地震と津波に襲われた町で、少年とその祖父は、連絡の取れない少年の母を探していた。
地震発生時は、車を運転していたという情報を得て彼らは、水の引いた町の中を探す。
少年は、テレビのインタビューにも気丈だった。励まされて、明るい表情でしっかりとお礼までいっていた。
10歳ぐらいの少年である。
道路は、水は引いたものの、長靴がないと歩きにくい泥道。少年は毎日、祖父と一緒に母を探し続けた。
その日、街かどの量販店の駐車場でその車を見つけた。車は、他の車と重なりながら横転していた。
カメラとインタビュアーをおいて、少年は走りだした。祖父はその背中に声をかけた「だいきー!覚悟しろー」。
一緒に走り出せない祖父の不器用ながら、せめてもの孫に対する思いやりの言葉。
少年は、さっきまでと変わらない表情で戻ってきた。「中にいるみたいだよ」
少年は、車の窓をたたき母に声をかけた「えりこー!」
レスキュー隊は無情にもブルーシートを広げた。
少年の母は、安置所に運ばれた。
少年は相変わらずの表情だった。
彼は・・・泣かない。
そうやって「自分」を保っていた。
もう、泣いても叫んでも、自分の求めている暖かい手に・・・触れることすらできない。
泣かない少年は・・・目の前の現実を受け入れてないのだろう。信じていない。
いつか、この悪夢が終わると思っている。
少年が泣くのは多分・・・母がいつも通り、夕方に「ただいま~」と仕事から帰って来たとき。
「ほら~やっぱり生きてた。なにしてたんだよう、僕、びっくりしたんだから」
少年は今、久し振りに、そこにあってあたり前の母の手を触って、柔らかい胸に顔をうずめて泣いている。
だから誰も、彼を起こしてはいけない。
そうやって泣いて・・・彼には・・・瓦礫の中、立ち上がって、大人になって欲しい。
少年の体のそこここに、大好きな母がいる。姿は見えなくても・・・間違いなく、
キミと母は・・・ふたりでひとつになったんだよ。