第28話
「ヌナ、
スジョンはヌナに
何を言いましたか?
ヌナはなぜ 泣いてますか?!」
彼の問いに何も答えられない私。
そんな私の沈黙に焦る彼の気持ちが電話越しから伝わってくる。
「ヌナ?
何か 答えて下さい!
お願いします!!
スジョンは何を言いましたか!!」
彼の口調が激しくなってくる。
危ない。
興奮してきてる。
「ヌナっ!!」
私は彼のその口調に冷静な自分を取り戻す。
今。
彼は自分の周りで起こる悲しみ、すべて。
それら、すべてを自分自身の責任だと感じていて。
太刀打ちできない状況に自分自身を毎日 毎日 責め立て 追い詰めている。
崩れ落ちた心は些細なことにも敏感に反応してしまうから。
きっと、私が泣く理由もすべて自分に原因があると思い詰めてしまう。
これ以上、彼の心の負担を増やしてはいけない。
これ以上、自分自身を追い詰めさせてはいけない。
絶対に。
私は小さく息を吐く。
そして…、嘘をつく。
「大丈夫だよ、チャンミン。
ごめんね、泣いたりして。
スジョンは…
チャンミンがいないよって
言っただけ。
ちょっと、びっくりして。
…ほら、最近 チャンミンと
会えないから
“いない"って言葉に
変に反応しちゃっただけだよ」
「ヌナ…、」
「心配させて ごめんね。
でも、ほら!
もう 泣いていないでしょ?
大丈夫だよ。
ね?
あ、チャンミン。
もう、お店に戻って。
スタッフの人、心配してるよ。
ね…?」
私は彼を追い立てる。
早く、
早く、
「ほんとに。
ほんとに 大丈夫ですか、ヌナ?」
彼の心配そうな声。
だけど…、落ち着きを取り戻した声。
「大丈夫!
また、明日 電話待ってる。
ね?チャンミン。
お店、戻って?」
早く。
「・・・・・・・、」
「チャーンミン、ね?」
ほら、早く。
お願い。
「…ほんとうに大丈夫ですか?
嘘ついてないですか、ヌナ?」
早く、
早く、電話を切りたい。
「…ついてない。」
ふぅ、っと彼の溜め息が漏れる。
「…明日、また連絡します。」
「うん、待ってる。
またね、チャンミン。」
……、プツッ、ツー、ツー、
電話の切れる音を合図に私の心を支えていた身体が崩れる。
ばらばらになる私の心。
だけど 優先すべきは彼。
彼の心。
大切だから。
もう、これ以上 壊れてほしくないから。
もう、これ以上 傷ついて欲しくないから。
彼の傷は私のものとは比べものにならないくらい深いものだから。
私は。
私の不安も悲しみも 全部、全部、飲み込んで。
忘れて。
何もなかったように。
今はやり過ごすしかない。
そう、やり過ごすしかない。
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(写真お借りしました&画像内出処記載)
