春の花木 | 湯戯三昧、蕎麦三昧できるかな?

春の花木

今回は樹木を…

ヒメコウゾ姫楮

『ヒメコウゾ』と『カジノキ』の雑種が本来は『コウゾ』と呼ばれます。コウゾはご存じの通り昔から和紙の原料として知られていますね。

しかし、『ヒメコウゾ』と『コウゾ』は、実際の区別が難しいので、『ヒメコウゾ』を通称『コウゾ』として紹介されることが多いらしい。

本州の岩手県以南から、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、台湾まで分布する落葉低木です。

◇科名:クワ科 コウゾ属(Broussonetia=ブラウソネッティア。[Pierre Marie Auguste Broussonet(17611807)]フランスの医師で自然科学者)にちなんだ名前 ◇学名:Broussonetia kazinoki(kazinoki=カジノキ)

『カジノキ』の学名が≪Broussonetia papyrifera(papyrifera=紙を持った)です。

古い時代には『ヒメコウゾ』との区別が余り認識されていなくて、上記したとおり現在のコウゾはヒメコウゾとカジノキの雑種といわれています。江戸時代に日本を訪れたあの『日本植物誌(フロラ・ヤポニカ)』のシーボルトもこの両者を混同してヨーロッパに報告したために、今日の『ヒメコウゾ(姫楮)』の学名が「Broussonetia kazinoki」となってしまっています。

コチラが以前に記事アップした『カジノキ』の花。

『ヒメコウゾ』の雌花も同じような花ですが、赤っぽいです。雌雄同株です。展葉と前後して開花します。樹形は当然『ヤマグワ』にも似ているのですが、ヒメコウゾは樹高がせいぜい24mの低木です。

樹皮は暗褐色で、縦に縞模様がはいります。褐色の皮目が多くみられます。 

葉は互生、葉身はゆがんだ卵形になります。

尾状鋭尖頭で先の方が尖り、基部は左右不相称の心形です。表面は短毛が散生していてざらついた感じです。縁には鋸歯があります。 


枝の基部に雄花がつき、上部の葉腋には雌花が付きます。雄花序は新枝の基部に数個つき、多数の雄花が球状になります。雌花序は新枝の葉腋に単生します。暗紫色の長い毛は花柱です。一年枝は黒褐色で細い。

集合果は1cmほどの球形です。全体としては液果のように見えますが、個々の果実は核果で核があります。甘いけど、花柱や核が残るためざら付いた味らしい。

これが『カジノキ』の果実。


これがヒメコウゾの雄花です。

下の画像で雄花の向こうに見えているのが雌花。

因みに『コウゾ』ならば和歌に出てきそうですが実際はこれくらいしか思い浮かばないですね。

『春すぎて夏来にけらし白妙(しろたえ)の衣干すてふ天の香具山  持統天皇(645年~702)

【夏来にけらし】は、夏が来たようだなあと言う意味。【ニ】は完了の助動詞で、【ケラシ】は助動詞ケリ・ラシの接合した語で、ケルラシの約です。もともと過去の推量(~したのだろうか)をあらわす語で、その後ケリと同じように、「気づき」とそれに基づく詠嘆をあらわす表現としても使われるようになったものです。【白妙の衣】が、栲(たえ。これが楮=こうぞ=などの樹皮から採った繊維のことになります)で、織りあげた白布で製った衣。【ほすてふ】は、乾すということ。テフは《と言ふ》の約。【天のかぐ山】藤原京の東に位置する山。天から降ってきたとの伝承があり(伊予国風土記逸文)、それゆえ《天の》が付いたらしい。「かぐ」は香具・香久などの漢字を宛てることもあったようです。


コチラは、幹をはじめとして、随所に鋭い棘があるのが特徴ですね。

たらの木

北海道から九州にかけて分布し、山野に生える、ウコギ科タラノキ属の落葉低木で、花や全体の姿は『ウルシ』『ヌルデ』『ハゼノキ』などのウルシ科の仲間とそっくりですが、幹のトゲを見たらはっきり違いが判りますね。

樹皮や根皮にはサポニンを含んでいて、生薬名が『タラ根皮(こんぴ)』。

糖尿病の薬となるほか、健胃、強壮、強精などの薬効があります。

◇科名:ウコギ科 ◇属名:タラノキ属(Aralia=最初の標本についていたケベック州の現地語「aralie」から ◇学名:Aralia elata(elata=背の高い)

開花時期は8月で、大型の円錐花序で、白い小花をたくさんつけます。

『5数性』というもので、これは1つの花は萼片が5枚、花弁が5枚、雄蘂が5本ずつあり、花柱も5つに裂けます。

実も出来ます。球形で果皮が肉質で液汁が多い液果で、11月ころに黒く熟します。

この新芽が「タラの芽」。

タラの芽はウコギ科のタラノキの新芽の事で、この新芽の部分を山菜として食用とします。

天ぷらなどにして頂きますが、ほのかな苦みや、もっちりした食感が春を伝える食材として人気があって、山菜の王様とも言われています。

タラの木は全国の山野に自生していますが、最近では栽培も進んでいます。

樹高は2メートルから5メートルくらいで、幹は真っ直ぐに伸び、上部に大きな複葉をまとまってつけます。葉は2回羽状複葉というもので、鳥の羽のように左右に小葉がいくつか並んで1枚の葉が構成される羽状複葉を、もう1回繰り返すの形なので、1つ葉の長さは50センチから100センチにもなります。

互生につきます。小葉の形は卵形ないし楕円形で先が尖って、縁には鋸歯があります。


ヤマフジ

万葉集でも多く詠われていて、咲き方も、その薄紫の色も、とても風流な日本原産の花です。

この時期、公園やお寺などで藤棚で見かけることが多い花です。

蝶のような形をした薄紫色の小花が幹の方から先端に向かって房状にぶら下がります。 

藤の花にはたくさんの品種があるようですが、大きく分けて「ノダフジ系」と、この「ヤマフジ系」の2つの系統に分けられます。 

花房が長く、つるが右巻きなのが「ノダフジ」です。代表的な物に花房の長さが1mを超すナガノダフジ(ナガフジ)、濃い紫色の花を付けるヤエコクリュウ(八重黒龍)、ピンク色の花を咲かせるホンベニ(本紅)などがあります。かつてフジの名所だった大阪の野田という地名に由来した名前です。

「ナガフジ」は2mぐらいの長さの蔓になることもあります。

これに対して花房が短くて、つるが左巻きになるのが「ヤマフジ」です。

品種としては、八重咲きのヤエヤマフジ、濃いピンク色の花を咲かせるショウワベニ(昭和紅)、花付きの良い白花種シロカピタン(白花美短)があります。

◇科名:豆科 ◇属名:フジ属(Wisteria:ウィステリアは、19世紀のアメリカのPhiladelphiaの有名な解剖学者「Caspar Wistar」教授(17601818)の名前から)

◇学名 Wisteria floribunda(=たくさんの花をつける)


クサボケ

名前は草だけど、もちろん木本ですよ。木瓜より小型なのでこの名があります。クサボケは、落葉性の低木です。高さが40センチから、丈の高いもので100センチメートルくらいになります。葉は短枝に輪状につくか、長枝に互生しています。長さ25センチで、倒卵形で先が丸く、葉縁は鋸歯状になります。長枝につく葉は腎臓形の托葉が目立ちます。

クサボケの幹は、基部からよく枝分かれし、下の方の枝は横になって地面についています。

短い枝はそこで成長がとまって、このように鋭い刺になります。『木瓜』と比較して名前の通り背(樹高)が低く、枝にトゲがいっぱいあるのが特徴です。

別名は『シドミ』『ノボケ』『コボケ』など。

果実の形から『地梨(じなし)』とも呼ばれます。

45月ころに、日の当たる山林や野原、土手などに花を咲かせます。鮮紅色で直径3センチほどの花ですが目立つ。

◇科名:薔薇科 ◇属名:ボケ属(Chaenomeles=カエノメレス。ギリシャ語の「chaino=開ける」+「melon=リンゴ」が語源。裂けたリンゴと言う意味 ◇学名:Chaenomeles japonica(japonica=日本の)

花は前年の枝の葉の脇につき、地面に近い下部の枝の腋に35個束生します。

クサボケの花は「雌性花(両性花)」と「雄性花が」あって1本の木に混生してつきます

雄花は5弁花で円形、色は橙赤色の花を、普通は45月頃に咲かせます。径は1.5センチ程です。

雌花は長楕円形で710ミリ程の大きさです。花柱は15~17ミリで、雌性花は子房が太く花柱が長いようです。

画像が無いのですが、秋になる果実は黄緑色に熟します。球形で約3センチ程の大きさになり、黄熟してリンゴに似た芳香があり、酢っぱい味がします。実はボケよりは小さく、木瓜の実には縦にスジと言うか彫りが入ってますが、クサボケの実にはありません。



ハウチワカエデ羽団扇楓

葉の形が、天狗の羽団扇に似ているためについた名前です。

別名は『メイゲツカエデ』

展葉と同時に、若枝の先に散房花序を出し、暗紅紫色の花を開きます。

雄花と雌花が雑居します。雄しべが長く突き出た花が雄花です。

カエデの雄しべは多くが8本。

◇科名:カエデ科 ◇属名:カエデ属(Acerカエデの一種 A.campestre のラテン名。この言葉には裂けると云う意味があり,切れ込んだ葉形に基づく。 ◇学名:Acer japonicum(japonicum=日本の)

樹皮は若いうちは灰青色で滑らかなのですが、老木になってくると、不規則に剥がれるようになってきます。

葉は対生について、径が712cmで掌状に911裂します。

裂片は卵形で尖鋭頭で縁には重鋸歯があります。

類似のカエデと比較すると、葉柄が葉身の半分以下と短いのが特徴で、葉柄は有毛で、裂片の切れ込みが浅い、などの特徴があります。

翼果が出来てますね。若葉には初め両面ともに白い長い毛があるのですが、後に無毛になります。

果実は偏平な翼果で、斜めに翼を開出するのです。花の上の方に翼が見えてますね。熟すと2つに分かれてプロペラを回転させながら落ちていきます。見てると面白いよね~。




コチラは時たま小さな公園や、樹木園とかでも見かけますね。

メグスリノキ

メグスリノキは日本だけに生息する樹木で落葉高木です。別名で「長者の木」「千里眼の木」とも呼ばれています。戦国時代からの民間療法で、樹皮を煎じた汁を目薬として使用するとさまざまな効能があると伝えられています。樹皮や葉っぱ、枝などにはタンニンの一種の「ロドデンドロール」「カテキン」といった成分が含まれていて、抗菌効果や利尿作用を促進する効能があるといわれています。

他にも、血圧や血糖値を下げる働きや肝機能の解毒作用が向上するといった体にプラスな効果がある。

樹皮は滑らかです。


カエデ属なので、葉っぱは秋に色も赤くなります。山地の沢筋に多く生えます。葉は対生し3出複葉。小葉は楕円形で、縁に細かい鋸歯があります。

裏面は、脈上を中心に、毛が密生していて、葉柄、若枝にも毛が多いです。

◇科名:ムクロジ科 ◇属名:カエデ属(nikoense=Nephelium、nephelion =小さい雲,又は別の植物名nephelimを転用)◇学名:Acer nikoense Maxim(Maxim=最大の)

葉が対生だったり、紅葉が綺麗だったりするのですが、いわゆるカエルの手のような葉ではないですよね。


コチラは仕事場の近くに咲いていたので

リラの花ですね。

長さ約1cmの筒状の花が枝先に密集して咲きます。

ライラックという名前のほうが馴染み深いかな?。「ライラック」は英語名です。

フランス語のLilasを、英語ではLilacと呼ぶことから。

北欧の春を飾る花として親しまれています。

フランスで「リラの咲く頃」というのは、一番良い気候のことを指します。

ヨーロッパ南東部からコーカサス,アフガニスタン特にハンガリー,バルカン半島に多く分布します。

日本には明治の中頃に渡来しました。

和名は「ムラサキハシドイ/紫丁香花」 金衝羽(きんつくばね)という名もあります。

和名のハシドイの由来は、花がたくさん集まって咲くという、木曽方言の「はしつどい」からきた名前。

英名では学名の元になった「パイプツリー」とも言います。一重咲き,八重咲きのそれぞれに白色,淡青色,濃紫色と大きく6グループに分かれます。

花色は紫の他に、白、赤などもあります。

イギリスでは5月祭の花になっている。

札幌市の花でもあります。 

とてもよい香りがしますね。

香水の原料にもなります。 

園芸店では、オランダからの輸入物が中心で、水揚げをよくするために葉は落としてあります。

花びらはふつう4枚ですが、まれに5枚のものがあり、それを見つけると幸せになれるという言い伝えがあるらしい。 

◇科名:木犀科 ◇属名:ハシドイ属(Syringaシリンガ=ギリシャ語の「Syrinx(笛、パイプ)」が語源。枝から笛、パイプを作ったことから。もっとも本来は、これはユキノシタ科の Philadelphus の小枝の事です。最初Philadelphus属の名であったものが,後に全く異なる今の属に移されたものです。

PhiladelphusB.C.283247のエジプト王 Ptolemy Philadelphus に捧げられた名。

◇学名:Syringa vulgaris(=普通の,通常の

📌📌📌📌

1960年に、榛谷美枝子が「リラ冷えや 睡眠剤は まだ効きて」という俳句を詠み、1971年に渡辺淳一が小説「リラ冷えの街」を発表しました。

📌📌📌📌 511日・512日・530()626の誕生花です。

他にも5月2日、5月17日、6月12日の誕生花になっています。

いったい何日あるんだヨゥ。。。五月だけで五日間?色別に誕生花になってるからかなぁ??

花言葉は「初恋の感動」「若き日の思い出」「若者の無邪気さ」「謙遜」

📌📌📌 年配の方ならご存じでしょうが

古い古~い、歌謡曲で『リラの花咲く頃』というのがあります。多分『懐かしの歌謡曲』とかでは流れていたのだとは思いますが、オイラは聞いたことがありません。 「田村しげる」と「寺尾智沙」夫妻の作曲作詞による歌らしい。

 🎼1951年「白い花の咲く頃」という曲に続いて作られ、岡本俊郎の歌でNHKの「ラジオ歌謡」からヒットした曲ということです。「ラジオ歌謡」…ですからね。

🎼🎹🎤一応歌詞を紹介しておきます。

1) リラの 花が 胸に咲く今宵  ほのかな 夢の香に

  ああ 思い出の あのささやき 遠く遥かに 聞こえ来るよ

2) リラの 花が 胸に散る今宵 やさしく 手を組みし

  ああ 過ぎし日の あのメロディー  霧の彼方に 流れ行くよ 

3) リラの 花が 胸に泣く今宵  はるばる 別れ来て

  ああ 懐かしの あの面影   一人狭霧の 小径を行くよ 

宝塚歌劇のテーマ曲「すみれの花咲く頃」の原曲となったといわれるシャンソン曲ですが、この原曲を遡るとウィーンの古曲「白いニワトコの花が咲く時」にたどり着くらしいです。 🎼


因みに👉ニワトコの花👉ニワトコの実👉ハシドイ