予期せぬ兄の訃報で突然の帰省だったのだが、一連の法事を終えた今、

特に涙が出るということでもなく、哀しいということもなく、割と淡々とした気持ちでいる事が不思議なくらいだった...。

どちらかといえばホッとしたとでも言えばいいのか。

数年前に脳梗塞を患い、それほどひどくは無いが、右足と言語機能に少し障害が残ったのだ。

元気な頃からは予想できないほどの落ち込みぶりは想像を絶するほどだった。

本人が一番キツかったのではないかと思う。

体の一部が思うように機能しないもどかしさ、それは健康な状態では想像も出来ないことなのではないだろうか...。

兄とは8歳も離れているのだが、小さい頃から可愛がってくれた。

彼からは、音楽を始め、文学、絵画といった芸術的知識及び文化的知識まで色んな意味で影響を受けた。

特に小さい頃から、ロックを始め洋楽の楽曲を聴いて育ったことは後の音楽的志向を決定づけることとなった。

それは幸せなことだったと思う。

彼とはまた、よく飲んだ。

時折、口論することもあったが...。

一時期、飲みに行って、必ず興にノルとスナックでよくデュエットしていた曲があった。

井上陽水と玉置浩二のデュエット曲、

『夏の終りのハーモニー』だ。

兄弟だけあって声質が似ているので、相性が
よく周りの客から割と好評だったのだ。

でも、それももう歌うことはできない。

夏はまだ終わらないが、一人の男の人生が静かに終わりを迎えた。

もう、兄とは歌えないこの歌を、1人口ずさみながらグラスを傾けた。

いつか、また、歌おう、それまで待っててくれ。

静かな酔に身を任せ、潮騒が慰めるかのように聴こえていた夜だった。


https://youtu.be/fpEdYX_kThE