Daydream   入江から



矢沢の少しハスキーがかった声で囁くかのように歌い上げる夏の終わりをイメージさせるようなバラードだ。

矢沢の曲の中では最も好きな曲だ。

カラオケでも必ず歌う。

作詞を担当したのは、西岡恭藏だ。

矢沢のイメージに合わせた最高の詩だ。

矢沢はバラードが似合う。

この歌を聞いていた高1の頃、ある女の子を好きになった。

天然の茶色っぽいストレートヘアに目のぱっちりとした少し日本人離れした顔立ちの女の子だった。

いつの間にか、僕は、その女の子のことばかり考えるようになっていた。

友達と会えばお互いの好きな女の子の話に夢中になっていた。

ある日のことだ。

いつものように友達とお互いの好きな女の子の話をしていたのだが、何故だかエスカレートして、

じゃ、告白しようではないかとなり、公衆電話から女の子の家に電話して告白することになったのだ。

結果は、2人とも見事に撃沈。

失意のドン底に突き落とされた哀れ2匹のヤングマンは、僕の家でやけ酒をしたのだった。

バックに流れていたのは、矢沢の『棕櫚の影に』だった。

2人見つめたのは
過ぎ行く  Summer Dream

お互い話すこともなく、慣れぬ酒を乱暴にあおりながら、矢沢の歌を聴いていた。

ただ、聴いていた。

夕方になるとひんやりとした空気が漂い始めた季節だった...。