皆さま
周囲にいてくれる人は、当たり前に
いてくれるわけではありません。
そのことに気が付いてみると、
かけがけのない時間を過ごしていることが
わかります。
一瞬一瞬を大切に生きていきたいものですね。
この物語が教えてくれました。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「大切な人を思い浮かべて読む物語」
~握られた手に伝う~
ベッドに横たわる人がいます。
それは、とてもとても大切な人です。
何物にも代えがたい、何物にも
代えることなどできない大切な人です。
その人は、目を閉じていて、そこに
自分以外の人がいることにさえ
気が付いていないかのようでした。
とても大切な人のほとんど動かなくなった、
その人の、右手が少しだけ動いたような
気がしたのです。
気のせいのようでしたが、どうしても
動いたように思いました。
もしかしたら、そう信じたかったのかも
しれません。
大切な人の右手を同じ右手で
そっと握ってみました。
しばらくの間、そのまだ暖かい右手からは
返答はありません。
でも、そのまま、その右手を離したら、
もう二度と返事が返ってこないような気がして、
待ち続けるのです。
どれくらいの時間が経ったなんて、わかる
わけもありません。
1分かもしれませんし、1時間だったかも
しれません。
たしかに、たしかに、右手をそっと
握り返されたのです。
握り返したのは、もちろん、大切な人
でした。
すぐに、その右手を見ました。
そうして、大切な人の表情を見ました。
でも、先ほどと何も変わらずに
そこにいるだけなのです。
そっと、握られたことが本当のことだったのだと
思い返してみます。
そう思い返してみるだけで、様々な
メッセージが伝わってくるようでした。
「今まで大切にしてくれてありがとう」
「ずっと応援しているからね」
「本当に感謝しているよ」
「やっぱり」
「ありがとう」
握り返さなくなった右手を軽く
握りながら、胸のあたりに緩やかな
炎が灯ったきがします。
その炎が押し出してくれたのか、
目からは涙という今までの想いが
溢れるように出ていきました。
言葉になりそうになかったので、
大切な人の右手が痛くならないように
そっともう一度だけ握り返すことにしたのです。
精一杯の想いを込めて。
大切な人の静けさが、先ほどよりも
さらに静かになったような気がしました。
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。