皆さま
いきなりで、なんですが、自分といっても
いろいろな自分がいますよね。
いろいろな自分の中で、お気に入りの自分だけを
残そうとすると無理が出ます。
お気に入りではない自分も自分の一部だからです。
そんなことを小動物の代表格リスが
教えてくれました。
鳥かごの似合わないフクロウは
登場するのでしょうか。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
-----------------------------------------------------------------------------
「緊張している自分もそっと抱きしめてあげる物語」
~緊張しているリス~
森の中にリスが住んでいました。
リスは、記念すべき日を迎えようと
しています。
今まで行っていた仕事を辞めて、
明日から新たな仕事に就くことに
なっているのです。
リスは、緊張していました。
「うまく通えるだろうか」
「通勤は苦しくないだろうか」
「職場に馴染めるだろうか」
「慣れない仕事で、疲れないだろうか」
「新しい分野で、自分にできるだろうか」
とにかく緊張をしています。
でも、リスは、新たな道を進もうと
している自分に厳しくありました。
「そんなことでどうするんだ」
「緊張なんてしている場合じゃないぞ」
「緊張なんかしてないしてない」
「きちんとできなくてどうする」
すると、不思議なことに緊張感は
増々、強くなっていったのです。
「あれ、どんどん緊張感が増してる」
リスは、お散歩に出かけることにします。
「フクロウに会いたい」
リスは、いつも転機などでやってくる
フクロウに会いたくなっていたのです。
リスは、森の木々を見ながら、フクロウが
どこかにいるのではないかと、探しながら
歩いていきました。
山登りでもしているのかと思うほど、
リスは歩き回りましたが、この日は
フクロウに出会うことができなかったのです。
そうしてリスが家に帰ると、家の前に
小さな子どものリスがいました。
知り合いのリスかと思いましたが、
どうやら違うようです。
でも、どことなく懐かしい雰囲気を持った
子リスでした。
リスが、子リスに挨拶をします。
「こんばんは」
子リスから、「こんばんは」と
返事があります。
子リスの声もやっぱり、懐かしい気が
しました。
まるで、若かりし頃の自分の声を
聞いているようです。
子リスは、リスのことをじっと見ています。
子リスが口を開きます。
「僕もよく緊張をしてしまうんだ」
「この間も、新しい学年に上がって」
「クラス替えがあってね」
「やっぱり緊張しちゃった」
「少し熱が出ちゃったよ」
子リスは、そう言うとはにかみながら
笑っていました。
リスは、なんだか他のリスの話しとは
思えずにいます。
その子リスが話すエピソードは、
まったくもって、自分が小さい頃の
それを同じだったからです。
「君は、小さい頃の僕・・・」
そう言うと、再びあの笑顔を浮かべて
子リスは、
「じゃあね、遅くなるとお母さんが心配するから」
そう言って、素早くその場を後にしました。
リスは、子リスのその姿をなんだか
茫然と見ています。
「あー、あれは僕だ」
「僕は、そうだ、昔から緊張しやすかったんだ」
「最近もずっとそのときの僕が出てきているだけだったんだ」
「あの、かわいらしい子リス」
「緊張しやすい、子リス」
「それが、僕だ」
「緊張しやすい僕を追い出すことなんてないんだ」
「いや、むしろ抱きしめてあげればいいんだ」
そう気が付いたとき、リスは、子リスが
いるか周囲を探しました。
やっぱり、抱きしめてあげればよかったと
思ったのです。
でも、もう子リスの姿はありませんでした。
リスは、そっと心の中で緊張しやすい子リスを
抱きしてめてあげます。
すると、不思議と自分の緊張感が
落ち着いてきたように感じました。
「緊張しやすい自分も自分」
「いいじゃないか」
「かわいらしいものじゃないか」
「緊張でけっこう」
リスは、そんな風に自分の一部を認めて
あげることができたのです。
次の日、新しい会社にリスは
出社しました。
「まったく緊張しなかった」なんて
魔法のようなことは起きません。
やっぱり、
「そこそこ緊張しました」
それでも、どことなくリスは
自然体で、なんだか取り繕うこともなく
自分らしくいられているようでした。
これからリスがどんな風に、進んでいくのかは
わかりませんでしたが、なんだかいい感じに
見えます。
リスは、初日の出勤を終えて、帰り道、
あのとき出会ってくれた子リスに感謝をしました。
「子リス、自然体でいられるコツを教えてくれてありがとう」
「僕は、君を追い出そうとしていたね」
「君も僕の一部だものね」
「教えてくれて」
「ありがとう」
【終わり】
-------------------------------------------------------------------
執筆依頼なども承っております。
-------------------------------------------------------------------
この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。