皆さま
親子関係というものは、本当に
いろいろなことを学ぶことができますね。
どんな風に学ぶかもその人次第なのかも
しれません。
この物語がそんなことを教えてくれました。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「親子関係で愛を学ぶ物語」
~母の日のカーネーション~
思春期真っ盛りの女の子が
いました。
女の子はお母さんと住んでいましたが、
いつもケンカばかりで、仲良くできずに
いたのです。
それでも女の子は、強がってしまいましたが、
心の底では、お母さんと仲良くしたいと
思っていました。
でも、どうやって仲良くしていいかも
わかりません。
会って、目が合うと、気が付けば
言い争ったりしてしまい、ケンカに
なってしまうのです。
そんなある日に、女の子は、
街を歩いていました。
よくよくわかりませんでしたが、
どうやら近々母の日なるイベントが
あることを知るのです。
もちろん、母の日というイベントは
知っていましたが、自分とは無縁だと
思っていました。
でも、女の子は、「母の日」という
言葉を目にして、自分のお母さんを
思い浮かべます。
いつも怒らせてしまうお母さんでしたが、
思い浮かべたお母さんの顔は、なぜだか
暖かな笑みを浮かべていました。
「小学校のときに仕事を休んできてくれた」
「授業参観のときに見せてくれた」
「お母さんの笑顔だ」
女の子は、不思議とそうやって
お母さんの笑顔を思い出したのです。
そう、もしかしたら、それからお母さんが
笑顔を浮かべることが、なかったのかも
しれません。
そんな風に女の子が街を歩いていると、
「せっかくだから買ってみよう」
女の子にしては、意を決して、お花屋さんに
入って行きました。
「母の日」が近いこともあり、
カーネーションの花がたくさん
置いてあります。
カーネーションを見ているだけで、
女の子はなんだか照れ臭くなりましたが、
そのうちに、真剣に探すようになって
いました。
「お母さん、何色が好きだったかな」
「花束だとすぐに枯れちゃうかな」
そうして、お母さんのことを真剣に
考えることは、女の子にとっても
とても久しぶりのことです。
そうして、お財布の中身と相談して、
せっかくだからと言って、女の子は、
まだツボミの多い鉢植えのカーネーションを
買うことにしました。
それなら、長いこと、お母さんに
カーネーションを楽しんでもらえる、
そんな風に考えてのことです。
女の子は、まだまだ照れ臭いまま
カーネーションの鉢植えを買って
帰りました。
「メッセージカードは?」と
店員さんに聞かれるものの、
女の子は、「特に要らないです」と
恥ずかしそうに答えます。
女の子は、カーネーションの鉢植えを
持って、家に帰りました。
あいにく、お母さんは不在だったので、
女の子は、鉢植えを自分の部屋に
置いておきました。
お母さんに渡すところを想像すると、
恥ずかしさで、何度も躊躇ってしまいます。
女の子は、鉢植えを置いて、ベッドに
横たわりました。
鉢植えに目をやると、小さなツボミが
たくさんついていて、なんだかとても
愛おしい気持ちになります。
「これから花が咲いていく」
そんな暖かくも、ワクワクするような
不思議な感覚を少女は持ちました。
「こんな感覚久しぶりだな」
そうしているうちに、お母さんが
帰ってきます。
「今日は、お母さんに優しくしよう」
「それで、夜にでもカーネーションを渡してみよう」
少女は、そうやって考えていました。
でも、お母さんといざ会ってみると、
気が付くとやっぱり言い争いになって
しまったのです。
どちらも大きな声を上げていました。
なにかのきっかけで、お母さんは
とどめとも言える言葉を発していたのです。
「あんたなんてウチの子じゃない!」
「出ていって!」
女の子は、茫然として涙を
流していました。
こうしてしょっちゅうケンカはしていましたが、
女の子が涙することは今までありません。
女の子は、そのまま家を飛び出して
いってしまいます。
お母さんは、しばらくの間、怒っていて
我を失っていましたが、時間が経つに
連れて、女の子がなかなか帰ってこないことも
乗じて、だんだん心配になっていきます。
そのうちに時刻は夜中になって
いたのです。
お母さんは、強がっていましたが、
心配になって、女の子の部屋に
入っていきました。
そこに、何かてがかりでも
ないかとお母さんは考えたのです。
そうして、部屋に入って最初に目に
飛び込んできたのは、まだまだ
ツボミだらけのカーネーションの
鉢植えでした。
「お母さんありがとう」という
備え付けのプレートが、お母さんの
目にも飛び込んでくるのです。
お母さんから言葉は出てきませんでした。
そのままお母さんも家から飛び出して
行きます。
どこに行っていいかなんてわかりません。
自宅の近くをお母さんが走っていると、
公園がありました。
お母さんにとってみたら、娘である
女の子とよく遊んだ思い出の場所です。
特に考えずにお母さんは、夜中の
公園に入って行きました。
すると、電灯の下にあるベンチに
人影を見つけます。
まさしく、お母さんの娘である
女の子でした。
女の子は、静かに座っています。
お母さんが女の子に近づきます。
「よかった」
「ここにいたの」
女の子は、お母さんが来たことを
すでに気が付いているようでした。
「お母さん」
女の子は、お母さんに抱きしめられて
います。
「ごめんね、ごめんね」
「あなたの気持ちも知らないで」
女の子もお母さんも泣いていました。
「うんうん、いいの」
久しぶりにその日は、女の子は
お母さんと一緒に家に帰って行きます。
小さい頃、公園からお母さんと一緒に
帰っていたことをアリアリと思い出して
いました。
家に着いて、女の子は、まだ恥ずかしさが
ありましたが、部屋に置いておいた
カーネーションの鉢植えをお母さんに
手渡します。
「母の日だから」
「お母さん、ありがとう」
お母さんは、涙目でしたが、いつか
見たあのうれしそうな笑顔を浮かべています。
「ありがとう」
カーネーションの小さいツボミが
買った時より少し膨らんだ気がしました。
【終わり】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。