皆さま

 

なんだかんだと幸せを追い求める

人生を送ってみると、どこかで

日常こそが幸せだったのだと

気が付くときがやってきます。

 

以前はオウムの話しを書いたことも

ありましたが、今回はカルガモが

いろいろと体験してきてくれました。

 

詳しくは本文をお読みください。

 

本日もよろしくお願いします。

 

【自己紹介】

幸せな人生に転換できた僕の物語

 

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「大切な人たちと一緒に過ごせるだけで幸せな物語」

~カルガモの親子が実感する~

 

とある沼地にカルガモの親子が

住んでいました。

 

お父さん、お母さん、そして

ほとんど同時に生まれた

子どもが5羽の計7羽の家族です。

 

カルガモの親子はいつも、どこへ

行くにも一緒でした。

 

沼でご飯を探すときも、沼を

泳ぎまわるときも、巣の中で、

一緒に過ごすときも、眠るときだって

一緒です。

 

カルガモの親子にとっては、それが

日常でした。

 

そんなある日の夜、カルガモ親子が

7羽で身を寄せ合って、眠っている

ときです。

 

急に、ガサゴソと音がしました。

 

お父さんが、「逃げなさい」と

お母さんと子どもたち5羽に

指示をしたのです。

 

お母さんは、お父さんの言うことを

聞いて、子どもたち5羽を引き連れ

その場から逃げだしました。

 

それからは、何が起きたのか

良く分かりません。

 

黒いカルガモからしたら大きな影が

2つか3つ見えて、カルガモのお父さんが

連れて行かれてしまったのです。

 

それから、朝日が昇り、お母さんと

子どもたち5羽が、自分たちの巣の

様子を見に行きました。

 

「きっと、お父さんは、そこで笑顔で出迎えてくれる」

 

誰しもがそう願い、想いを強め、

巣の中を覗きます。

 

「・・・」

 

そこには、お父さんの姿はありません。

お父さんの大きな羽がいくつも落ちている

だけでした。

 

お母さんは、たまらず、子どもたちもたまらず

泣いて哀しんでいます。

 

それは、この状況を見ることで、

お父さんの身に何かが起きたと

皆がなんとなく理解したからでした。

 

残されたカルガモの家族6羽にとっては、

大きく深い悲しみが残ります。

 

お父さんがいつか帰ってくるかもしれない、

そう淡い願いを小さな胸に秘めつつ、

カルガモの家族は生き続けました。

 

お父さんがご飯の獲り方を教えてくれて

いましたが、代わりにお母さんが教えます。

 

一緒に泳いで遊ぶことだって、お母さんが

お父さんの分までやりました。

 

カルガモの子どもたちも、そんな

お母さんの愛情を受けながら

少しずつ成長をしてゆきます。

 

自分でご飯を獲れるようになり、

自由に沼を泳いで遊ぶことができるように

なったりと、成長をしてゆくのです。

 

だから、お母さんは、その姿を見て、

「本当に良かった」と苦労はあったけど

思えるようになりました。

 

でも、やっぱりこの姿をお父さんにも

見せてあげたいとふと思うと、涙が

止まらなくなるのです。

 

カルガモの子どもたちは、そのことを

秘かに、とても近い位置で感じていました。

 

お母さんは、物心がついてきた

子どもたちに聞くことがあります。

 

それは、お母さんなりに、何か子どもたちに

できることはないかと、感じた末からの

行動でした。

 

「あなたたち、何か欲しいものはある?」

 

5羽のカルガモの子どもたちは、

顔を見あいながら、迷いなく答えるのです。

 

「お父さんに帰って来て欲しい」

 

お母さんは、一瞬息が止まるような

感覚がしました。

 

そうして、子どもたちの1羽が、

話し始めるのです。

 

「お父さんに帰って来て欲しい」

「ただ、それだけでいい」

「そうしたらお母さんもきっと幸せでしょう?」

「僕たちだって幸せだよ」

「・・・」

 

「家族一緒にただただ暮らせれば、それでいいんだ」

 

最後の言葉は、5羽子ども全員からの

ものでした。

 

お母さんは、子どもたちがとんでもなく

成長したのだと実感するしかありません。

 

「ありがとう」

 

お母さんは、今までの想いが

一気に蘇ってくるようでした。

 

もう、あふれ出る涙は、誰の力を

使っても止まることはありません。

 

そんなお母さんを見て、5羽の子どもたちは

小さな羽をお母さんの身体を包みこみました。

 

お母さんも5羽の子どもたちも

この日ばかりは、泣き続けます。

 

「ただ、家族と一緒に暮らせればいい」

 

これは、紛れもなくこのカルガモ家族の

本音だったのです。

 

だからこそ、6羽全員の心が

震えました。

 

それが、引き金となって感情が、涙という

ものに代わってあふれ出たのです。

 

6羽になったカルガモの家族の絆が

ぐっと固くなったときでもありました。

 

それから、少しの日が経ちます。

 

カルガモの親子6羽が、いつものように

沼でご飯を獲って巣に帰ってくると、

まさか、カルガモのお父さんがいたのです。

 

6羽全員がくちばしからご飯を

その場で落としました。

 

お父さんは笑っていました。

 

「ただいま」

 

「お、おかえり」

「お、お父さん!」

 

6羽全員が、お父さんのもとへ

駆け寄ります。

 

「ただいま」

「ずいぶん待たせたね」

 

お母さんも子どもたち5羽も

何が起きているのかハッキリ

わかりませんでした。

 

でも、うれしくてうれしくて

ただうれしくて。

 

久しぶりに7羽揃ったのです。

 

お父さんは、その間、何があったのか

何も話しませんでした。

 

お父さんは、もしかしたら鳥かごなどに

入れられていたかもしれません。

 

お母さんも子どもたちも何も聞きません。

 

もう、それでいいのです。

 

お母さんと5羽子ども、さらにはお父さんは

大きなことを学んだからです。

 

「ただただ、家族が一緒に暮らせて、一緒にいられるだけでいい」

 

このことは、7羽共通の

思いでした。

 

その日からは、それぞれがそれぞれなりに、

一日一日を大切に、一瞬一瞬を噛みしめるように

家族の時間を過ごすようになったのです。

 

カルガモの親子7羽は、今日も沼を

縦横無尽に泳ぎ回っていました。

 

【終わり】

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この物語を読んで何か一つでも

感じていただけたら嬉しく思います。

 

想いを乗せて書いています。

 

皆さまよろしくお願いいたします。