二月のある日、ちゃまは、とある神社の境内にいました。
もちろん、泣いてはおる。
そこの摂社で祀られている小さな稲荷をお参りした時、なんだか胸が、どくん、と高鳴るのを感じたのです。
源九郎稲荷神社。
聞いたことのない神社でした。
けれど、源九郎という、あまりに凛々しいその名の響きは、一瞬で、ちゃまの心をつかんで離さなくなりました。
源九郎稲荷、源九郎稲荷…
なんか、カッコいい。言うだけで、ときめいてしまう

←そんな理由?
調べてみると、奈良の大和郡山にある神社らしい。
行ってみたいな
思ったものの、翌日は、雨。
ちゃまは、一日を、もどかしい気持ちで過ごし、夜が明けると、焦がれる思い全開で、大和郡山へと向かったのです
鳥居をくぐると、別世界でした
空気の色が、違うのです
柔らかくてあたたかい、パステルカラーの羽衣が、ふんわりと境内全体を包み込んでいるようでした。
なんて優しいの…


ここの神さまが、いかに人を愛しく思っているかが、心に染み入るように伝わってきました。
ちゃまは、たちまち源九郎の神さまの虜になりました。
にもかかわらず、いつものように、号泣する事態にならなかったのは、境内に、人がたくさんいたからだと思います。
その週は、たしか郡山のお雛祭りのイベント期。
境内に飾られた古い雛人形に、見物の人びとが群がっていました。
源九郎稲荷は、大きな神社ではありません。
人であふれかえった境内は、騒がしく、落ち着ける気分ではありませんでした。(ふだんは、静かだYO。そして、すご~くいい匂いがします
)
何とか参拝は済ませたものの、未熟なちゃまの精神では、集中することが全くできず…。
来る日を間違えたのかな…
来た時の感動は、すっかり消えて、寂しい気持ちが胸に広がっていました。
「源九郎稲荷さま、源九郎稲荷さま…」
境内にある、赤い毛氈(もうせん)の敷かれた長椅子に座って、ちゃまは、一生懸命呼びかけました。
このまま帰るのは、忍びない気持ちだったのです。
せめて、今日来た思いくらいは伝えたい。優しいご神気に、どんなに感動したか、現したい。
けれども、人の気配や、沈みがちな気持ちのために、意識も言葉も、途切れ途切れになり、そのうち、力なく、じっとご本殿を見つめることしかできなくなりました
~つづく~
今日も読んでくれてありがとう
