師走の冷たい風が身にしみる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。 

長期にわたって世界中を震撼させてきたコロナ恐怖も一端の静まりをみせ、世間はようやく慌ただしい日常を取り戻してきた。

そんな中にあって、昨日。

金曜日の夕暮れ時。

コメダ珈琲大阪本町店で
椅子に深々と腰を掛け、優雅にコーヒーを飲みながら本を片手にニタニタしていた男性を見かけられたであろうか。

なにを隠そう、

それは十中八九ワタクシである。

ボクの手元にある本は、
暇つぶしの相棒、推理小説。

元来より‘’妄想‘’能力に長けており、他に目立った能力やスキルもないボクは、

参加する合コンではそれを特技として盛大に発表し、

世の女性を
「キャーキャー」
というよりも

「ギャー」
という地鳴りにも似た悲鳴と、蔑さげすまれる眼差しを向けられる人生を粛々と送ってきた。

が、
しかし、昨日はどうにもこうにも犯人を推理できない。

それ以前に文字が頭に入ってこない。

それもそのはず。

ボクの右隣の二人掛けテーブル席で、女子大生二人が大きな声で歴代彼氏について怒涛の発表会を始めたのだ。

「実は、前の彼氏と別れてな〜、とんでもなくキモかってん~」

「えぇ!ワタシもキモ男とようやく別れられてんけど〜、偶然やなぁ!」

聞こえてくる情報によると、どうやら彼女ら二人はとんでもないキワモノと付き合っていたようだ。

自尊心のないゲスの極みのボクは、自分よりも下の恋愛体質のオトコの話を聞くとちょっと安心する。

こうなるともう気になって仕方がない。

犯人を推理する趣味よりも、
いま、この時間はオトコとしての安心感を得たい。

うっへっへぇ。
オレよりもクソな男ってどんな男なんだい。
さぁ、聞かせてごらん。

小説を読んでいるフリをしつつ、
脳と耳は女子大生にロックオン。

そして、ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅううう
大きく息を吸って、
肺に酸素をたっぷり取り込み

「全集中の呼吸」

一瞬にしてガールズトークに対して
‘’高い集中力‘’と‘’身体能力‘’
を手にしたのだ。

「イケメンでもないくせにスカしちゃってさ。部屋着までカッコウつけてそれがほんまにキモくて〜」

「ウザいくらいマメでぇ〜、私、バイトで忙しいからぁ〜、LINEとかグイグイこられるとイヤやねんケドぉ〜、私が浮気していないか心配やったみたいでぇ〜」

女子2人のマシンガントークは一向におさまるところを知らない。

「それそれ!分かる、ワカル、わっKAruuu」
「あっひゃっひゃっひゃ〜、それまじウケる〜!」

一方が、もの凄い勢いでまくしたてると、もう一方はもの凄いスピードで相づちを打つ。

しかしよくよく聞けば、君たちの元カレは普通の男ではないか。

むしろ見方によっては
室内は常にジャージでゴロゴロするボクよりも、いつもカノジョの前で格好よくいようとする男はダンディズムの象徴やし、

スマホを放置してLINEがいつまでも既読にならない手ぶら男より、マメに連絡する旦那の方が、我が家の妻は大喜びするだろう。

なんだ、オレなんかよりもよっぽどマシじゃないか。

あぁ、結局そうか。

多くの人は
行為そのものに対する「是非」以前に、
好きな人がやることなら許せる理由を探すし、嫌いな人の言葉にはツッコミどころを見つけようとしてしまう。

二人の尋常じゃない数の元カレネタを聞きながら、ふと自分自身の環境に重ね合わせてみると、様々なことが頭のなかを駆け巡ってきた。


目次
「俺、ドSってよく言われる」
ネット社会が生んだ‘’アンチ‘’と‘’ファン‘’の対立構図を排除する時代へ
スキ、キライを簡単に意思表示ができたフェーズから、時代は‘’キライ‘’を排除しようとするフェーズに移行した。
仕方がないから女子大生二人の会話に再び耳を傾けた。

 「俺、ドSってよく言われる」

彼女いない歴42年の大学の同級生テツ君が、自身を紹介する時に今でも用いる自虐ネタである。

話の腰を折り、場を静まり返らせても本人はご満悦だから痛いことこの上ない。

一時期、‘’壁ドン‘’が流行ったことで、女性が誰それ構わず強引な男性に魅かれるとでも思っているのだろうか。

女の子からすると、山崎賢人なら
「胸キュン」
するかもしれないが、真逆のところにポジショニングするボクやテツ君のような‘’非モテ男‘’が性癖を絡めた発言をしようものなら、一様に吐き気をもよおされてしまうだけである。

「好きな人でも、良いことばかりを言ったりするわけではないし、逆もまた真なり」

なのは誰しも頭では理解できているつもりであっても、

やっぱり

「ナニを言ったかよりも、誰が言ったか」

を重視してしまうのは、
これもまた人間のリアルな現状である。

「部長からの提案ですが…」
と枕詞がつくかつかないかで提案内容が素晴らしいモノにもゴミカスにも聞こえたりするし

ふわっとした格言めいたことを言う
「成功者」っぽいアカウントの発言をよく吟味せずままに正しいと判断してしまうし、

インフルエンサーの発言を100%鵜呑みにして高額商品を買ってしまったりするし、

ボクたちホモ・サピエンスは、スキやキライ、そして権威に圧倒されると目がくらんでしまう特性をもっているのだ。

 ネット社会が生んだ‘’アンチ‘’と‘’ファン‘’の対立構図を排除する時代へ

You Tubeが「低評価数」を非表示にした。

ヤフーが「眞子様のご結婚についての報道」を機に、ヤフコメの誹謗中傷対策を強化した。

これらの機能は元来より、
視聴者がターゲットコンテンツについて簡便にスキ、キライの意思表示をしたり、
匿名性が守られた中で日頃言えないようなこともズバッと言える要素があって

「火事と喧嘩は江戸の華」

と言われるように、良くも悪くもファンとアンチ同士のやり取りが盛んな場であった。

しかし
「ナニを言ったかよりも、誰が言ったか」

が、多くのヒトの感情を支配する中で、やっぱりコンテンツの全容、全文を見ずして、発信者、対象者だけで判断して一方的な悪口で評価しているケースが目立っていたのは事実であり、対象者を‘’批判‘’から守るために規制がかかったと言える。

どんなニンゲンであっても、敵と味方は存在する。

キムタクの出演するドラマに魅了され、
メッシュ入りの茶髪に、ワンレンのロン毛にボディパーマ。真似たジャケットにアクセサリー。
キムタクになりきったつもりで「カッコいい俺」と勘違いしていたボクのようなキモヲタ信者もいるかと思えば、

「キムタクは何を演じてもキムタク」
と批判的に言う人もいる。

ふと、右手人差し指でスマホを左にスワイプしてみた。

最近のニュースが掲載される中に、
ここにもボクの世代の
‘’とある大スター‘’
の記事があった。

なにやら杖をついた写真をインスタにアップされたようで、芸能ニュースに疎いボクはまったくその一連の出来事を存じあげなかったが、

どうやらその‘’とある大スター‘’は、

11月4日に足を骨折し、

11月6日は痛みをこらえて車椅子でライブを強行。
ライブ終了時はヨロヨロと車椅子から立ち上がって
「ありがとうございましたー」
とファンへ渾身の感謝のメッセージを送るなど、まさに全米が涙するほどの感動の名場面を演出。

しかし負の連鎖は続いた。
ライブ終了後、アナフィラキシーショックで一時意識不明の重症となり、
予定していた翌7日の公演の中止を発表。

かと思えば、一転。
復活は早かった。とても。
11月中に骨折の手術も終わらせて、
12月1日はテレビの生放送で笑顔で熱唱。

直近では、サウナデビューをしたようで、その様子をインスタにアップできるまでに回復したとあって…

いやぁ、まさに同世代の大スターである。

一ヶ月前の意識不明の状態から
不死鳥のような復活劇に、
やっぱりボクのような鼻クソほじってボケーっとしているボンクラ庶民とは

生命力や、
歩む人生の濃度、
プロ魂がまったく違うよね、

スゴイよね、

なんて心底思う
…たぶん。

しかしどうやら‘’ヤフコメ‘’では様相が違う。

“いいね”がたくさんついているコメントをみると、脅威のボキャブラリーを駆使して批判的なものが占有。

「空港芸人が…また…」なんてのもあったりして。

ボクは‘’空港芸人‘’とはナンの事やらサッパリ分からないが、どうやら

帰国日を意図的にリークし、マスコミを空港に大集結させ、その前をサングラスとマスクで顔を隠して恋人と手を繋いで通り過ぎる
“the空港芸”
を頻繁にする特殊スキルをもった芸達者のヒトのことを言う、

らしいのだ。
あぁ、なるほどね。

くそワロタ笑

あ、やべ…
いやいや。

こういう‘’空港芸人‘’と揶揄するのを

アンチが過激に反応した
「感情の吐き捨て場」とみるのか、
「世の中のリアルな反応を反映している場」とみるのか、

これもボクには全く分からないが

コメント自体の‘’いいね‘’の評価機能が誘発剤となって、内容以前に‘’いいね‘’の数によって次第にカキコミ者の承認欲求が満たされていくことは容易に想像がつく。

とくに悪口に関していえば、より素早く、過激に反応したほうが多くの‘’いいね‘’が得られる傾向にあるので、

その結果、どうしても批判が上位を占有するヤフコメは、「暴走している」と受け止められてもおかしくない。

 スキ、キライを簡単に意思表示ができたフェーズから、時代は‘’キライ‘’を排除しようとするフェーズに移行した。

You Tubeの「低評価の非表示」にしても
ヤフコメの誹謗中傷対策の強化にしても

こうやって弱者を守るために
「他人を傷つけること」
への規制や罪が厳重になればなるほど

「思いがけずに自身が加害者になってしまう可能性が高まる」
という側面は忘れてはならない。

ボクやテツ君が「オレって、どSやねん」と若い女の子を前にニタニタして言えば「セクハラ」

我が子が外出先で言うことを聞かずにギャン泣きが止まないからきつく叱って頭をコツンとしたら「虐待」

教師が授業を妨げる生徒の手を引っ張ると「体罰」

これらの規制は、誹謗中傷、体罰や虐待、そしてハラスメントを減らす効果があり、

ボクはこれ自体が「悪いものではない」と思っているが、

「正しいかどうか」よりも「相手が嫌な気持ちになったかどうか」が焦点となる風潮が過度に強まってしまうと

たいていの人が
「いやいやそれは騒ぎすぎ…」
と思うようなことであっても、

その人は被害者であり、
自分は加害者になってしまうのだ。

今の世界は「傷ついた弱者」に優しい。

「結婚には『税金』が伴う。国民の理解を得るべき」
という条件をつけたところで、

病気の事実をもちだされて
「儀式はすべてやりません。一時金は辞退します。国民の誹謗中傷に耐えられないので質問事項は事前に文章で。回答はワンウェイで」

となれば、それ以上はもう誰も強くは出られない。

これの良い悪いの二者択一ではなくて、
こういう形が色んな場面で結局認められるようになるのであれば、わざわざリスクを負ってまで対立する相手とコミュニケーションを図ろうと努力する方が、バカらしい世の中になっちゃうよね。

って。
古臭いおじさんは「ナニかがちがう」という違和感を抱きながら………

うん……

これ以上はこんな繊細ネタをリスク背負ってまで脳内の主張をさらけ出すのはやめとこう笑

ここでボクの脳内がポイズンした…ということで…

言いたいことも言えないこんな世の中じゃ、poison♪

と口ずさもうか。


 仕方がないから女子大生二人の会話に再び耳を傾けた。

「今の彼氏さぁ…メッチャいい」

え?すでに彼氏いるの?
いったいどんなスピードサイクルで男と付き合ってんだい。

「え〜、ぶっちゃけぇ、本当にスキな気持ちって、エモくて他人に説明できないよね。もう今回ばかりはヤバいもん」

うんうん分かる、うん分かる、分かる分かる、分かるぅぅう〜!分かるうううー☆

ふんふん!ふんふん!FunFun〜

相方が、超笑顔で手を叩きあって共感して頷く。「説明できない」って言ってんのに、一体彼女に何が「分かって」しまっているのか分かり方が尋常ではない。

おじさんは何も分かんないぞ。

あ、

そうか。そういうことか。
これが答えか。

もうこれからの感情表現は
「エモい」と「ヤバい」
でいいのだ。

「スキ・キライ」を伴う発信は、それを否定したい、という勢力を必ず生み出す。
そして、その行き着く先は不毛な論争と、それに伴う過度な規制である。

エモいとヤバい。

今日は冬的にはエモくて、寒さがヤバいけど、やはり暖かいこたつの中がヤバい。

買ったばかりの新ドラム式洗濯機、これまじヤバいよ。

キムタクもヤバいし、テツ君もヤバい。

意識不明からの驚異的な復活劇はエモいし、ヤバい。

もう誰も傷つけないし、誰も傷つかない。
ふわっとエモいで説明し、受け手にヤバいの立場を判断してもらう。

これだこれ。

新しい時代を生きる最強のコミュニケーションボキャブラリー。

だから困ったトキは
「エモかった〜」「ヤバかった〜」
って言っちゃいましょう。

ネ!
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