1961年の暮れ、ジングルベルが街中に聞こえて

いる頃だった。神戸三宮のセンター街をそぞろ歩き

して、生田筋と交差した付近のレコード店を覗いた

時だった。ふと目に止まったレコードジャケットの

女性のプロフィール、それが瞬時に体中にある種

の衝撃がはしり、夢遊病のごとく、そのレコードを

レジにさしだした。(現在、そのレコード店はなく

紳士服店となっている)

 

 

それがどんな曲のレコードかも、その女性がどういう

人なのかも知らずに購入したのだ。

それがオペラ歌手マリア・カラスとの出会いだった。

そんなことがあって、オペラの魅力にはまり、次々と

彼女のレコードを聴くこととなった。

そんなことが、きっかけで今は大のオペラフアン。

 

「、マリア<回想のマリア・カラス>」 ナディア・スタンチョフ著

音楽之友社刊を読むと、ドラマチック・ソプラノでファンを

虜にした彼女にも大変な苦労があったよう。加齢に

よる声の衰え、そのうえギリシャの海運王アリストテレス

・オナシスとの恋の破局など。

 

「神聖歌手とよばれるのは、好きじゃない。私はマリア・

カラス、一個の女にすぎません。」の彼女の言葉が

ニューヨーク・タイムズ(1971.10.31)にあったそうだ。

彼女の物事に動じない毅然とした姿勢と同時に、深い

悲しみを感じ胸が熱くなった。