東京・四谷、大通りから少し奥まった住宅街に石津邸がある。
いかにもアイビー・ルックの元祖らしく、建物を覆いつくす蔦(アイビー)の見事さに
まずはじめて訪れる人は目を奪われるに違いない。
適度のウイットとユーモア、すがすがしさ、温かさ、もう一つつけ加えるならば
この家は実にチャーミングな匂いを醸し出している。
「T・P・O」「トレーナー」「Tシャツ」など
今では普通名詞になっているネーミングを考えた
天才的コピー感覚の持ち主でもある。
石津氏はある著書の中で、
「現在もっとも贅沢な住まい方、暮らし方、といったらなんだろう?
ボクはモノを、最小限しか持たない生活だと思う」と書いている。
モノに占拠されているような生活から自分を解放すること、そこから、はじめて
人間中心のインテリアが発想されてくる、というわけである。
「ボクのこの家はどんどん変わってゆくだろうね、変わるのは当たり前、
変わらないということは、ボク自身がちっとも進歩してないってことだからね。」
キリッとしたダンディな表情がくずれて、人なつこい、チャーミングな
笑顔がのぞいた。
ぼくの友人は、いまだにアイビールックを見事に着こなし毎回あらわれる。
数十年前の購入にしては新品のような保存の良さに驚き、その時のながれが
一瞬止まったようなその新鮮なフィーリングに再度驚きを感じてしまうのだ。
彼も、石津氏もタダモンじゃないよね まったく……