笠井正博版画展の準備をしていてふと感じることがあるのだ。
彼の作品の自然の事象たちをじっと見つめているうちに、
作家は幻想世界に旅立とうとしてるのではないか、
そんな感じをうけたのだ。
そこで私が若いころみた映画のいちシーンを突然おもいだした。
その映画名はフランスのジャン・コクトー監督の「オルフェ」
そして主人公詩人役のジャン・マレーが
大きな姿見の中をすっとくぐりぬけて
現実の世界から幻想世界へと移り入って行く姿、
それは不思議な非日常のことであり、
そのワンシーンの詩的映像に感動したものだ。
笠井正博の作品の一つ一つが
その現実世界と幻想世界を隔てる鏡にも思え
自分もいつか幻想、追想の彼方へ
なんとなく入り込んでいく気がしたもんだ。
勝手な思い込みであろうか、
みなさまのご感想も是非伺いたく思うのです。