家までの道はいつもよりずっと短く感じました。

がんばれ私たち…!


玄関を開けて「ただいま~」と言いましたが、返事がありません。

リビングをのぞくとさっきまでいたはずの父はおらず、
かわりにクラシック音楽が流れていました。


仕方がないので
「あれ~どこ行っちゃったんたろう…2階を見てくるね」
と言って彼をリビングに通し、階段を上がりました。


このとき私は、奇妙な演出と玄関に出てこない父に苛立ちを感じていました。


父は自分の部屋でうろうろしていました。
いつもよりおしゃれなセーターに着替えていました。

私の家は玄関が吹抜けで声も通るので、
来たことは間違いなく気づいているはずでした。

来たことを伝えると「じゃあ行こうか」と言いました。


父もまた、明らかに緊張した面持ちでした。