前回間違えました!10ですね^_^;
今回が11です…
facedown…anotherstory
成瀬の精密検査は何度か行われたが、
何も異常は見つからず、同僚にも診察を求めてみた…
記憶を無くした状況から、頭部に外傷があったわけではなく、脳に損傷も無い……
考えられることは心理的状況によるもの…
つまりは彼自身がもしかしたら、記憶に蓋をしているのかもしれない…
それを開けようとする心理と、それを拒否する心理とがせめぎ合い、脳を混乱させ身体に悪影響を与えているのではと……
井ノ原も、成瀬の状態から精神的に不安定になっているのが解る…
これ以上あの場所や、他の人間の接触を止めさせた方がいいのか……
でも、彼の気持ちや彼女と逢ってからの生き生きとした表情も彼の生きる糧となっていたのは否めない……
どうすべきか……榎本にも色々確認したいこともある…そう思って何度も電話するが、一向に返事がない……
一体何をしているのか………。
ふと部屋の奥をみると成瀬が窓辺に立っていた。
どこを見るでもなく、ただぼんやり眺めていた、が…
え………?涙?………

そう言えば彼の涙は初めて見た……
どうしたのか?慌てて声を掛ける。
『どうした?どこか痛むの?』
その声に驚いて、はっと振り返る
『え……あ、いえ…何か?』
『何かって…涙…』
『………あ……本当だ…どうしたんだろう…気付かなかった……』
その姿を見た井ノ原はなんともやり切れない切ない思いを感じた……
『君は何て泣き方をするんだ……苦しかったり辛かったりしたら、ちゃんと泣きなさい。声を出していいんだよ』
……しばらく黙っていた成瀬だったが、
いつものように穏やかな微笑みを見せた
『いえ……大丈夫。ご心配おかけしました…部屋に戻ります』
その後ろ姿に思わず声を掛けた。
『君の過去に何があったかは知らない。君は思い出したく無いのだと思う。
それでも、何か見えてしまったら…どうしても苦しくなったりしたら、必ず僕に言ってくれ。どんな過去だろうと、君が今の君である限り僕は君の味方だ…』
成瀬はふっと笑顔を見せると軽く会釈して戻っていった。
……君が今の君である限り……
僕は予防線をはった。
過去の彼がもし、彼女と直人と繋がりがあったとして………
今の君がいなくなって、過去の僕の知らない君に戻ってしまったら……
僕は………君を守る自信が無い……

その頃榎本は、リハビリ担当の男を尾行していた。
以前、井ノ原から渡された彼の履歴書…
写真の顔にどことなく見覚えがあったが、
見た目に好青年な姿……眼鏡は伊達だとすると……思い当たるふしがある…
ある小さなアパートに入りしばらくするとまた出てきた。
明らかに風貌が変わる……
その顔は、先程までの明るい好青年とは違う、まるで獲物を狙う獣のような、鋭い眼差しをしていた。
真っ直ぐ前を見つめて歩いていく。
榎本が隠れている横を通り過ぎたが気付いていない。
すれ違いざま、榎本は確信し指をせわしく動かしはじめる………

やはりそうだ………あの時……
すれ違った昔の成瀬のような冷たい眼差しの男……………
あいつか……………

続く…………