久々のブログ小説更新です。おまたせ致しまた。
個展や二人展等の準備で追われていましたが、ようやく時間が出来ました。

画像は、2023年の高円寺の猫の額さんで、木元慶子さんとの二人展の模様とDMハガキ用作品「君の始まりの日」

展示終了後も作品の一部の数点を、委託展示販売させていただいていますので、見に行けなかった!という方にも、少しですが、原画をご覧いただくことが出来ます。(昨年発表した作品等も数点)通販も可能ですので、下記の猫の額さんのHPのリンクを伝って、お問い合わせくださいませ。

では続きをお楽しみください。

《大肉球曼荼羅 第3章④祖父の形見》

猫沢さんを狙う、人気子猫歌手ロドニアの影に見え隠れする、かつてのライバル学者の姿、消えた大企業カルカナル、これらの点と線が交わる時、何かが起ころうとしています。

夕暮れ時の、カフェ虚空庭園、吟遊詩人ハーオスの演奏会が催され多くの猫達が、ドリンクとフードを楽しみながら、彼の出番を待っています。

黒い帽子と制服を身に着けたスタッフ猫達も大忙し、一人のスタッフの声

「まもなく開演しまーす!」

店内の照明が落ち、ざわめく猫達、客席を横切りステージに現れた、ロシアンブルーブロンドヘアの美しい猫に、スポットライトがあたると、熱い眼差しが注がれました。

ハーオスさんの登場です。つば広帽の隙間から見えるキリッとした面持ちに綺麗な瞳、美しいブロンドヘアー、彼は、竪琴魚(タテゴトウオ)をケースから放つと、魚は、尾ビレ辺りを丸め、糸のようなヒレが数本開き、まるで竪琴のような姿になり、猫達は驚きと同時に大喜び

滅多に見られない奏でる魚、彼の横には何故か黒い服を着たΣ-41の姿が、そう、あれは猫沢さんの竪琴魚、キラキラ輝く黄緑色の鱗が、彼を一層輝かせます。店長の風(ふう)さんが借りてきてくれたのです。

「すごい、似合ってる」

フロアーの後ろで眺めているスタッフ猫の中の一人が、呟きました。

「だろ?竪琴魚も彼に心を開いている。よい演奏を聴かせてくれるだろう」

横にいた風さんは、ウーロンニャイを飲みながらニコニコしていました。

流れるような音楽に、高めのハスキーボイスが重なると、猫達はウットリと耳をパタパタさせ、心地よい振動を受け彼の世界に惹き込まれていきます。

1曲目を弾き終えた彼が、

「本日は、お越しくださりありがとうございます。このような素晴らしい機会を下さったマスターに感謝致します。この曲は、大昔、私達の先祖達が残した、喜びの心を表現した曲です。今日、初めて、みんなの前で演奏する事が出来ました」

そう言って彼は竪琴魚を撫でると、大きな拍手に包まれました。

「短期間で、あの曲をマスターするなんて、素晴らしいな、、、」

先程のスタッフが、目を輝かせていると

「彼の才能は天下一品だよ」

風さんは、そう言うと厨房から、なにかの果物を切って持ってきました。

「これは?」
「彼からのお礼だよ。白鳥座の近くの星に実る珍しい果物だそうだ」
「うまい!」

2曲目が、始まります。
先程とは違った音色、、いつの間にか竪琴魚は客席の頭上を優雅に泳ぎ、彼の手には、いつもの中くらいのハープ、年期の入ったボディから奏でられられる音色は、どこかさみしげで、それでいて、優しく猫達の心に染み渡っていきます。

遠い昔の猫の民の記憶が呼び起こされるような、そんなメロディ

次々と曲が奏でられ、猫達はリズムに揺られ思い思いに楽しみます。

最後の曲を終え、一度、別室に入った彼は、ふと、思いついた事がありました。

(もしかしたら、、、!?)

鳴り止まぬアンコールに応え出てきた彼は、古く年季の入った、小さな竪琴を手に持っていました。

「これは、私の祖父の形見で命よりも大切な楽器です。私は、かつて祖父が旅した星や町を訪ね、奏で歩いてきました。この街は旅の最終地点、当時、祖父が、ここで出会った小さな友達に貰った曲です」

そう言うと、彼は優しく弦を弾き始め、カラフルな音色が溢れ出し、なんとも楽しげな雰囲気に包まれると、猫達は陽気に踊りだしました。

「この曲は、、、、!?」

先程のスタッフ猫が、大きな涙をポロポロ
それを見て風さんは、ソッと手ぬぐいを渡しました。

演奏を終えた、彼は、

「私は、この曲をくれた友達を探しています。もう随分と昔の事なので、会えないかもしれませんが、心当たりのある方がいたら教えて下さい」

そう言うと、丁寧にお辞儀をし、楽屋部屋に帰っていきました。

客席は明るくなり、余韻に浸る猫達が、追加のオーダーで賑わいます。

先程のスタッフ猫は、一目散に彼のいる別室にドリンク片手に突っ走っていきました。
竪琴魚もスタッフ猫の後を付いていきます。

「ハーオスさん、入ってもよろしいですか?」

ドアをノックして入ると、ハーオスさんは笑顔で迎えました。スタッフ猫は、ドリンクをテーブルに置くと、帽子と眼鏡を外し、

「ハーオスさん、素晴らしい演奏をありがとうございました。あの曲の再現は見事なものでした。竪琴魚も、たいそう喜んでいましたよ」

「猫沢博士、ありがとうございます!こちらこそ、貴重な楽曲を弾かせて頂いて光栄です。まさか、マスターの弟さんだったなんて驚きました!」

ハーオスさんは、目をキラキラさせました。

なんと、猫沢さんは、皆に紛れ従業員に扮していたのです。

「ハーオスさん、つかぬ事をお聞きしますが、あなたの御祖父のお名前を教えて頂けませんか?」

「はい、、祖父の名は、ケイオスです」

猫沢さんは、驚きの眼差しでハーオスさんを見つめました。

「貴方が、ケイオスさんのお孫さん、、」
「祖父をご存知なのですか?」

2人は、お互いの顔を見つめました。

(つづく)

※このブログ創作SF小説[大肉球曼荼羅]では、猫の星カンタスカラーナで繰り広げられる物語を展開しております。

次回の猫の額さんでの展示は、2024年6月を予定しています。

この作品は、とある音楽家の楽曲をBGMにし、浮かんできたイメージを融合させて制作する、実験的な物語です。


この作品の挿絵のポストカードや原画等、高円寺の猫ギャラリー&猫雑貨[猫の額]さん、茨城県大洗町シーサイドステーション動物雑貨専門店Only-shopさんでも、購入出来ます(^O^)


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