暑い日が続きます、台風5号が発生したようですね。

ここ数日、新しい章の構想を練っていました。
この物語を綴りはじめた当初に登場した猫達が、再び活躍します。古くからの読者の方なら、あぁ、あの時にチラッと出てたネコさんだ!と、なると思います。
続きをお楽しみください。

画像は、東京.高円寺、猫の額さんにて開催の、9月の二人展のお知らせ&茨城県の大洗町大洗シーサイドステーションonly-shopさんで委託させていただいている模様です。ポストカード等を置いていただいています。お近くにお出掛けの際は、是非、お立ち寄りくださいませ。

《大肉球曼荼羅 第3章①ドクター・クロウ》

猫沢さんは、いつものようにイクサフィーゴの前で軽やかに奏でていると、猫沢さんの1番弟子、ドクター猫宮(ねこみや)氏が、やって来ました。

「猫沢先生、お久しぶりです!」
「あれ、どうしたの?元気してた?」

猫沢さんは、演奏の手を止めトコトコと駆け寄ります。

「元気は微妙です。最近、患者さんが減ってしまいましてねぇ…」
「あー…やっぱり」

猫沢さんは落胆した表情で、うつ向きました。昨今のバッシング騒動で、クルー達にも少なからず影響が出ているのです。

「あのですね、先生がロドニアの曲を心底嫌っている理由が分かったんですよ」
「なんだって?」
「実は、あの曲の中の波」
「うん」
「私の元師匠のものでした、、」
「何だって‼生きてるのか?」

猫沢さんの顔色が変わりました。

「分かりません、ただ、ロドニアの楽曲のメロディーは、ほとんどは彼によるもの…もしくは、彼を知る者…」

ドクター猫宮氏は、彼は猫沢さんの1番弟子でありますが、以前は、ドクター・クロウと言う、猫沢さんと同業者でありライバルにあたる学者の弟子でした。
ドクター・クロウは、猫達を狂わせる波を作り出しては問題を起こし要注意猫としてマークされていた為、危険を察知した猫沢さんは、猫宮氏を彼から引き離し連れてきたのです。

現在の猫宮氏は、猫沢さんの技法を修得し独立、波を使った治療院を開院しドクターをしています。

「猫爪光明(ねこつめこうみょう)…!?こいつがドクター・クロウなのか?」
「分かりません、それは制作チームの名称で複数の猫達が手掛けているとも聞いています」
「その中に、クロウの知識を持つものがいる…かもしれないと…?」
「はい、生きていたとしても、こんな速さで次々と新曲を作り出す事は不可能だと思います。もう少し深く調べてみますね」
「、、、、、、。」

猫沢さんは、しばし言葉を失いボンヤリしていました。
ドクター・クロウ、もう20年以上昔の出来事、彼が生きていれば人間年齢で言うと90歳をとうに越えているはず…彼の作ったものは、あの時、封じられたはず…

「猫宮くん」
「はい」
「君は今でも、元師匠を尊敬しているか?」
「、、、、はい、破壊的な性格には付いていけませんでしたが、師匠の創るものは、天才的で素晴らしかったです、悪用しなければ、、、」
「あの頃のクロウは、既に猫であって猫ではなかった」
「出会う以前から、猫ではありませんでしたよ」

猫宮氏は、短期間でありましたが、彼の狂気と向かい合ってきた数少ない猫なのです。彼は、猫宮氏を正式破門して数ヵ月後、行方知れずとなり、姿を現す事はありませんでした。

「あ、これ飲む?猫宮くんもアンニャミラーズのケーキ食べてるよね?」

猫沢さんは、ナッツローズティーを紙コップに注ぎ、手渡しました。

「はい、患者さんが差し入れで持ってきてくれるので、時々」
「実はあれ、知ってるかもしれないが、有害な物が含まれているんだ」
「ウトゥサですね、先生は昔、この物質で体を壊したと聞いています、どうなってしまうんですか?」
「美味しいからと食べ続け量が増えていく、食べすぎると思考が鈍り倦怠感におそわれ、静かに体を壊していくんだ、いろいろ厄介だよ」
「動けなくなる…どうりで」
「私は、幸い、花音さんの食事療法で回復出来たけれど、ウトゥサの強烈な中毒症から抜け出すのは大変だったよ」
「ロドニアカンパニーの専門家は、ウトゥサは安全な物と言っていました。先生の言っている事が本当なら、とんでもない事です」
「私が子猫の頃までは普通に使われていたが、カルカナル社が撤退した時、ウトゥサは危険な物質として一切禁止された」
「昔の猫達は大丈夫だったんですか?」

猫宮氏は驚きます。

「随分、長い間普通に使われていたから、あらゆる感覚が麻痺していたんだよ、その分、今よりも病気になる猫は多かったらしい、今は、薬品としての栽培と、ナッツメック星の民の為に栽培されているだけさ」
「ナッツメックの民は平気なんですか?」
「彼らは私達と体の構造が異なる、ウトゥサは、エネルギーになる大切な植物だよ。猫達にだって少量なら薬になる摂取量が増えれば毒さ」

猫宮氏は、納得したよう、最近、妙に患者が多い事を気にかけていました。
例えるなら、人間が安心して食べる事が出来る植物や果物が、他の生き物にとって有毒であったり、その逆もある。

「このお茶は、ナッツローズティーと言ってナッツメック星の特産品だ、これは、ウトゥサの成分を高速分解し内臓に負担をかけず解毒できる、この味が苦手な猫には、花音(かのん)さんの店のトルソー饅頭をおすすめする。患者さん達に教えてあげてほしい、帰りに猫伊博士から受け取っていきなさい」
「ありがとうございます!」

しばしの時間、二人は楽しげに雑談を交わし、テラでの思出話に華を咲かせていました。

猫宮氏は、お茶を飲み干すと、元気そうな猫沢さんを見て安心したのか帰り支度をし始めました。彼の護衛はマジシャンのような細身のカッコいいボディのロボットSP-777、懐に武器をたくさん仕込んでいるとの事。

「もう帰るの、良かったら演奏聴いていきなさい」
「発表会の内容知ってしまったら悲しいので帰ります!先生、楽しみにしてますね!」

猫宮氏を見送った後、猫沢さんは、彼が何かの役に経つかもと置いていった荷物の箱を開けてみました。驚いた事に、ドクター・クロウに関する封印ファイル、大切に保管していたであろう年季の入ったケースには、師弟お互い信頼していたであろう痕跡が消されていました。

彼が、猫沢さんに託した意味とは、、、?

[つづく]
 (※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】SF物語を展開中です。
そんな楽しい猫の星の世界観、毎年、東京.高円寺[猫の額]さんにて発表しています。2022年9月は同会場にて、木元慶子さんとの二人展「宇宙の猫祭り」を開催いたします。来年も開催決定です。よろしくお願いいたします。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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