久々の更新です。
2022年も半分となり、年月の経つスピードの速さに驚いている今日この頃です。今年は、9月に東京、高円寺[猫の額]さんにて木元慶子さんと二人展を開催致します。
今年のテーマは、お祭り 懐かし縁日や世界のカーニバルなど、楽しむ猫達が満載です。ただいま、作品制作中お楽しみに

では、物語の続きをお楽しみください。
画像は、昨年2021年に岐阜県各務原市[カフェ&ギャラリー204]で開催された個展の模様、猫沢さん作品を展示しました。
そして、二人展のお知らせです。

[大肉球曼荼羅 第2章⑭不穏な風]

猫沢さん達は、お土産に貰った、ナッツローズティーを箱いっぱいに詰め込み、猫居博士達と別れ、研究所の角を回ると、Σ-41が、

「猫沢博士、また、あの波を感知しました」

「!?」

Σの目線を追うと、朝方見た、あのモヤのような物体が近づいて来るのを目撃しました。猫沢さんは思わず耳を立てます。

「どうしました?」

Σは、首をかしげます。

「…聞こえる」
「?」
「…歌っている」
「歌?」

マシンを運転しながら聞き耳を立て首をかしげる、猫谷エンジニア

「俺には聞こえないが」

「なんて悲しいメロディーだ…」

猫沢さんは、黒い靄の物体には何もせず、ただただ耳を澄ませていると、靄はスッと消えていきました。

「あれは一体なんだ?幽霊か?」

「わからない、何を歌っているのか分からないが、とても心が痛む…」

猫沢さんは、小さく肉球を叩くと、先程のメロディーを再現してみました。

「もの悲しいなぁ…」

猫谷エンジニアは、そう言うと大通りに面している、ニャーコースト公園の脇を通過していきます。

すると、大勢の猫だかりが目に飛び込んできました。
猫沢さんは、気になったのか耳をパタパタと動かしています。

「どうした?」
「あの猫だかりは何?」
「大道芸でもやってるんじゃないか?あそこは、いつもいろんなイベントをやっているし」
「止めて」
「?」

猫沢さんは、駆け寄っていきます。猫谷エンジニアも後を着いて猫混みをかき分けていくと、そこには、旅猫姿の青年が弦楽器を奏でていました。
ウェーブがかったブロンドがなびくと、帽子からチラリと見える優しい瞳が遥か遠くを見つめ、高く伸びやかな力強い歌声が見つめた先をめがけていきます。

「ケイオスさん!?いや、そんなはずは…」

猫沢さんは、目をぱちくりさせ、彼に釘付けになっています。

「ケイオス?誰それ?ハーオスさんよ、素敵な歌声でしょう」
隣にいた、少し派手な身なりの中年女性が、うっとりしながら聞き入っています。

「ハーオス?」

猫沢さん達は、しばし彼の歌に浸っていると、どこかでヒソヒソと声が、猫谷エンジニアがとっさに猫沢さんに帽子をかぶせ、猫だかりの輪から連れ出し、マシンに戻りました。

「危なかった」

「?」

「気を付けろよ、袋叩きにあうところだったぞ」

猫谷エンジニアは、猫沢さんの帽子を更に深く被せ、マシンを走らせます。猫沢さんは、ハッと気づきミラーに映る、追いかけてきた柄の悪い数人の猫影に震えました。

今、テラ派遣クルー達は、言われなき誹謗中傷の中に居るのです。
彼は、リーダーということもあり面が割れている為、身の危険に晒される確率が高いのです。

研究所に着くと、建物の回りには大勢の警備員達に厳重に守られていました。最初は、大袈裟だと笑っていましたが、笑い事では済まない事だと、研究所の仲間たちの安否の確認を急ぎます。

「おかえりなさい!猫沢博士」

研究室では、いつものメンバーが笑顔で待っていました。

「みんな、大丈夫だったか?」

「大丈夫です。それよりも、こちらを」

「?」

三毛野くんが、目をキラキラさせ大きな箱を抱えて来ました。

「猫沢博士、研究発表会用の衣装ですって♪先程、届きました!」

猫沢さんが、手に取り開けようとした時、

「ちょっと待ってくれ!明日、猫居博士の所で受けとる約束をしてる筈だ、ここには届かない」

猫谷エンジニアが、猫沢さんの手から荷物を外しました。
三毛野くんは、キョトンとしています。

「私達が確認させてもらう」

猫谷エンジニアは、外にいる警備員達と連絡を取り合うと、荷物は別室へと運ばれて行きました。

「三毛野くん、どんな猫が持ってきた?」
「キャロールさんです」
「知り合いかね?」
「僕の友人のお姉さんです」
「配達員か?」

「はい、白猫急便で働いています。僕が受け取ったのは偶然だったんですが驚きました」

「ひとつ聞いていいかい?」
「なんでしょう?」
「君の友人のお姉さんは、ロドニアのファンかい?」
「分かりません、友人がロドニアの熱狂的なファンです…」

「ありがとう、もし、今後荷物が届くことがあれば、私達に報告して欲しい。関係者の君達も狙われる可能性がある」

今回の発表会はただ事ではないと緊張感が部屋いっぱいに広がりました。猫沢さんは、そそくさと給湯室へ入って行きました。

「なぜ、ロドニアは猫沢所長を狙うのですかね?」
「詳しいことは分からないらしい、面識もないし接点もないよ」
「確かに、所長はアイドルでもなければ同期ライバルでもない…」
「ライバル?どう考えてもおかしいよ!所長は普通のおじさん猫だよ」
「いいえ、相当普通じゃないおじさん猫よ」

夏音(なつね)さん、三毛野くん、大和さんをはじめ、猫沢さん直属の研究主要メンバーが、ヤイヤイ談笑しながら休憩室でくつろいでいます。
この小さな研究所には30名程の研究員が在籍し、その半分は、猫居博士の研究員達がΣ達のメンテナンス及び、ロボット研究の為、在籍しています。

「お茶が入りましたよー」

猫沢さんは一人一人に手渡し、席に着くと

「このお茶は、ナッツメック星の特産のナッツローズと言う植物から作られたお茶です。猫居博士からサンプルを頂いたので、飲んでみてください」

「これは珍しいものを、甘い香り、あの黄色い方々の星のお茶ですか?」
「スッキリしてほのかに甘い、これは美味しいですね」
研究員達は、次々と感想を述べていくと、最後の一人が
「ごめんなさい…私、この味苦手です」
ショートボブでアメショー柄の研究員が、申し訳なさそうにカップを置きました。
「あぁ、気にしないで、素奈尾(すなお)さん、あなたはアンニャミラーズのケーキは食べた事ありますか?」

「いいえ、私、甘ったるいお菓子は苦手なんです…」
「なるほど、口直しにニャンコーヒー入れましょう」
「い、いえ、大丈夫です」

「そう言えば、さっき、私の事、相当普通じゃないおじさんて言いましたね?」

猫達は、ちょっと慌てます。

「この研究所にいる、あなた方も、相当普通じゃない猫達です、おあいこですよ」

猫沢さんは、ニコニコしながらナッツローズティーをすすりました。

「猫沢博士、ちょっといいですか?」

猫谷エンジニアに呼ばれ、別室の扉を開けました。

「さっきの荷物だがな…」

[つづく]
  (※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】SF物語を展開中です。
そんな楽しい猫の星の世界観、毎年、東京.高円寺[猫の額]さんにて発表しています。2022年9月は同会場にて、木元慶子さんとの二人展「宇宙の猫祭り」を開催いたします。来年も開催決定です。よろしくお願いいたします。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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