お待たせいたしました。久々の更新です。
展示用の作品を製作しておりました。

まだまだ、コロナ騒ぎはおさまらずの状況ですが、物語は淡々と進んでいきます。

2022年も、9月に猫の額さんにて木元慶子さんと二人展を致します。
お馴染みの猫沢さん達も活躍する展示となっております。

画像は、初期作品の猫沢さんと2代目シヴァです。街の中に聳え立つ、とても大きな黄金の魚がイクサフィーゴは猫の星のシンボルタワーであり、エネルギー供給システムです。

では、物語の続きをお楽しみください。

《大肉球曼荼羅 第2章⑬ 2代目シヴァ》

猫沢さんは、研究施設から1キロ程先に設置されているイクサフィーゴに向かって歩いていこうとしていました。猫居博士達と、猫谷エンジニアは護るように彼を移動マシンで拾い上げ、スッとイクサフィーゴの前で降ろしました。

安全な施設内であれど、何が起きるか分からないのです。

あのイクサフィーゴに目玉を植え付けた侵入者の謎が解明されていないのですから…

巨大な培養器に黄金の魚イクサフィーゴ、正確には初代シヴァから複製されたクローン体、彼等は猫の星のエネルギーを生産する謎多き生命体、元々は既に滅びた星の民である彼等は[橋渡しの民]地球人、風天寅次郎(かざまとらじろう)博士(猫の星の時は猫居虎之助)と共に旅をしているのです。1体だけ休眠状態だった初代シヴァは、この星に滞在し暫くの間、エネルギーを作り続ける任務を任されていました。

猫達は、もっと沢山のエネルギーが必要だと、造り上げたクローン…

そのクローンの全長は70メートル近く(培養器を入れると138メートル)、7メートルの初代よりも大きく星全体のエネルギーを供給できる素晴らしい個体へ成長し、30年近く猫達の生活を支えていたのです。しかし、カンタスカラーナ歴1121年、地球時間西暦2013年に当たる年にイクサフィーゴの腹部に巨大な目玉が現れ、エネルギーが絶たれてしまいました。

猫居博士達は復旧作業に伴い、休眠していた初代シヴァを再起動させた途端、星の西と南と北に設置されていた仲間のイクサフィーゴ3体が、姿を消してしまった事で猫達はパニックに陥った当時、猫沢さん達が、彼等を連れ戻す為に地球へ向かい2年後に帰還

帰還直後、カンタスカラーナの猫達も少ないエネルギー生活にも慣れ、あらゆる術(すべ)を身に付けていた為、大きな混乱はなく、それどころか、イクサフィーゴ達が地球から帰らない事情を知った猫達は、兄弟星の民達の為に祈りました。

ですが、ロドニア達がばら蒔いた妙な噂が拡がると、手のひらを返したように、猫沢さんをはじめ派遣クルー達は、非難の目にさらされてしまったのです…。


「2代目シヴァよ…なんと痛ましい姿…」

シヴァの前に言葉を失う猫沢さん、遠くから見えなかった脆くなった鱗やヒレは艶をなくし、輝きを失った瞳は、猫沢さんの気配に気づいたのか助けを求めるように見つめます。

今は、カンタスカラーナ歴1123年…1121年以降、目玉の怪物を抱えながら星を護り続けている彼を、猫沢さんは美しいメロディーで覆いました。そう、あの不思議な楽器です、肉球を何度も叩くと綺麗な音色と共に光の幾何学模様が現れ、2代目シヴァの体内に吸い込まれていくのが猫居博士達の目に映り驚きを隠せません。

その後も猫沢さんは、しばらくの間、彼の側で空間を弾き音楽を奏でていました。弦楽器にも管楽器にも打楽器にも聴こえる、何層にも重なりあう不思議な音色、次から次へと即興で繰り出されるメロディーは、まるで天界のオーケストラ

15分ほど奏で…

「これが、今の私に出来る精一杯だ…明日もまた来るから…」

そう言うと、猫居博士達が待つ移動マシンに戻ってきました。

「猫沢博士、素晴らしい演奏をありがとうございました!さきほど制御スタッフから、停止していた一部の機能の回復の兆しが見えたと報告がありました、部屋に戻りましょう」

「良かった…」

猫沢さんは、安心した表情でイクサフィーゴを見つめます。
地球でイクサフィーゴ達と直接出会った猫沢さんは、彼等の星の話や、寅次郎博士との旅の話を聞き、彼等の事を何一つ知らず過ごしていた自分を恥ずかしく思いました。

猫達の生活を当たり前のように支えていた彼等、猫居一族の絶え間ない努力と技術の結晶が、今、途絶えようとしている…

「猫居博士、明日は初代の所に連れて行ってくれないか?」

猫居博士は、ソッと笑顔でうなずきました。

戻って来ると、部屋にはニャフタムーンセットがテーブルに並べられ、ニャンベリーの良い香りが広がっていました。

着席すると、温かなニャティーが注がれ、猫沢さん達の心を癒し、少し冷えた体を温めます。

「美味しい!このニャティーは初めて飲む、なんてお茶だい?」

猫沢さんは、目を輝かせカップをきゅっと握りました。

「ナッツメックの方が育てたナッツローズのお茶です。昔から飲まれているのを、星の特産品にしようと試作を持ってきてくれたんです」

「素晴らしいね、どんな植物かな?」

「可愛らしい黄色い花びらで、花と葉が、お茶になるそうです。ウトゥサを食べ過ぎた時に高速分解出来るとの事で、もしかしたら?と思い持ってきてくれたんです」

「もしかしたらとは?」

「今、調べている途中なのですが、ここににいる、アンニャミラーのスィーツ中毒を起こしている猫達に試飲して貰ったところ、期待できそうなのです」

「君達のスタッフの中にもウトゥサ中毒がいるのか?何が期待できるって?」

「解毒作用です。アンニャミラーは元々小さなスィーツショップでした…ここの施設に近かったので、元々の店のファンが多いんです。ロドニアと組んだ時に味が変わってしまったと騒いでいたのですが…次第に…あの味に飲み込まれてしまって…ドクター猫白、ここのニャックシュー最高でしたよね?」

彼は、静かにうなずきました。
ニャックシューは、看板スィーツのひとつで、フワフワの生地にフワフワのクリームが入っていた、消えてしまった幻のお菓子で彼の大好物でした…

猫居博士は、心配そうな表情で小さな溜め息をつくと、研究施設専属のパティシエ猫達が再現した昔のアンニャミラーのニャンベリーコーツを「これじゃないんだよな…」と言う表情で口に運びました。

猫居博士達も、あの頃の店のファンだったのです。

「猫居博士、このニャティー、少し分けてくれませんか?」

「少しなんて遠慮しないで下さい。ナッツメックの民に届けてもらうように手配させて頂きますよ。あ、とりあえず、この試作品持ってって下さい」

そう言って、棚から持ってきた箱を渡しました。

「ありがとう!!」

猫沢さんは、何かを閃いたのか笑顔でニャンベリーコーツをペロリと頬張り、穏やかな時間を過ごしました。

[つづく]

  (※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】SF物語を展開中です。
そんな楽しい猫の星の世界観第6弾を2019年、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました。2020年2021年は、同会場にて、木元慶子さんとの二人展を開催しました。2022年の9月に開催決定です。よろしくお願いいたします。

猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)

※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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