暑い日が、続きますね。
ほぼ毎日が、35度を越える猛暑、クーラー無しでは過ごせない日本になりました。
長かった物語も最終章です。
 
もう少し、お付き合いください。
 
画像は、新作の「漆黒の天使猫」です。
 
 
《第12章 最終章②宴》
 
マゼラン星人達を筆頭に、村人達の一部や「橋渡しの民」達が屋敷へ続々と到着します。
ほとんどの村人達は、別棟の診療所以外の、寅次郎博士の自宅を、訪れるのは初めてです。
大きなイクサフィーゴ達は、堂々とオブジェのような顔で、佇んでいます。
 
マゼラン星人代表格数名も、やって来ました。
 
とても不思議な光景、地球人と宇宙人が、同じ空間、同じ場所で食事をするなど、ありえない世界が、小さな村の一角で、行われます。村人達もマゼラン星人達の件で、すっかり、宇宙人への偏見や恐れはありません(一部を除いては…)
 
美しい装飾品で飾られた大広間は、この日を迎えるために用意されたのではないかと思うくらい、ピッタリの人数が集まったのです。
 
「この度は、お暑いさなか、お越しいただきまして、ありがとうございます。本日は、この村で交流の深かったカンタスカラーナ星人が、無事、任務を終えました。ささやかではありますが、村人一同で、お祝いをしたいと思います」
 
「寅ちゃんよーこの猫さん達は、この村で、何してたんだ?」
 
事情は、よく知らないが、面白そうだと参加した年配の村人が質問します。
村の上空に、時々見える宇宙船を眺めていた人物でした。
 
「この魚達を探す、手伝いです」
 
「魚ってこのデカイのか?」
 
「彼等は、私の替わりに地球を飛び回り、彼等を探しだしてくれたんですよ」
 
「あんたの魚か!!?寅ちゃん…あんた一体…?」
 
「…そのうちお話しますよ。さぁ、始めましょう」
 
寅次郎博士は、猫沢さんに、マイクを渡します。
 
「本日は、私達の為に、お集まりいただき感謝致します。再びこの村の皆さんと、ご一緒出来たことを嬉しく思います」
 
簡単な挨拶を済ませると、乾杯のおんどが繰り広げられ、楽しい時間が過ぎていきました。
 
猫達は、村人達の素朴な質問に答えます。
 
「知らなかった。私達、繋がっていたんですね…」
 
地域猫の世話をする女性が、猫達の話を熱心に聞きます。
長年、猫達と過ごしてきて疑問に思った事や猫の習性について様々な質問を繰り広げます。
 
「ニャンタは、あなた達を、この村に入れる許可をしてたんですね。心広いなー」
 
「ニャンタ氏は、とても紳士的なボス猫です。彼の許可が降りなければ、私達は、ここに居ませんからね」
 
猫沢さんは、笑顔で話します。猫の世界に国境や宇宙間は関係なくテレパシーで会話出来る事を、伝えます。
他の村人達も興味津々です。猫の星の話や宇宙の話、地球人達が知り得ない異世界の話は、とても魅力的でした。
 
「君達の星が、大変なんだって?私達に何か出来る事はあるのかね?」
 
村長が、訊ねます。
 
「私達の星の事を案ずるよりも、このテラでの「争い事のない世界」を心の中で想像する事を優先してください」
 
「???それは、どういう事かね?それだけでいいのかね?」
 
村長は、キョトンとしています。
 
「現在のテラビト達は、見えない大きな不安にかられ、疑心暗鬼となり、足元に気を取られ、仲間同士での憎しみや哀しみをぶつけ合い、お互いの「正義」を押し付け、足を引っ張り潰し合おうとしています。そのエネルギーは、やがて方々に放たれ共鳴していきます。あえて、その逆の道を進んでみてほしい」
 
「どういう意味かね?逆と言うのは…?」
 
「テラビトのエネルギー放出の転換期を迎えているのです。そのまま突き進むか、逆を進むかは、どちらを選ぶのも自由です」
 
「もし地球人達が、争い事を増長する道を選んだら、君達の星は、どうなる?」
 
「意にそぐわない星との共鳴回避と言う、課題が増えるだけです」
 
「さっぱり解らんが、なんとなく、今のままではマズイ事は分かった」
 
村長は、若干モヤっとしながら席に戻ります。
猫沢さんは、村人達の様々な質問に丁寧に答えていくと、最後に村の若い住職が、やって来ました。
 
「あなた方は、猫の姿をした「光」なのですか?」
 
「正確に言えば「光」を取り戻した者です。私達もあなた達と同じ、物質世界の星の生命体であり当然ながら「闇」も持っています」
 
住職は、何かを掴んだような明るい表情で、深くお辞儀をし席に戻りました。
 
宴も終盤になる頃、寅次郎博士が、締めの挨拶をすると、大きな拍手で幕を下ろしました。
村人達は、祭りに向かいます。
 
 
「寅次郎博士、今日は、私達の為にありがとうございます」
 
「いやいや、カンタスカラーナ時代に出来なかった事をしたかったのさ」
 
「え?」
 
寅次郎博士は、はにかみながら「虎之助」としてカンタスカラーナにいた頃、皆でワイワイ食事をしたり、楽しげな事をする事なく、ただただ、黙々と己の使命を遂行する事だけ専念していた事や、研究に没頭していた事を、打ち明けました。孤独が友だったのです。
 
「まだ、時間はあるんだろう?祭りに参加していきなさい。君達も地球人のイベントの中に行った事はないのだろ?」
 
寅次郎博士は、少し寂しそうです。
 
「安易にテラビトの目に触れる事は、出来ませんでしたからね…」
 
「最後の日だ、楽しんでいきなさい。少なくとも、この村じゃ君達は顔パスだ。気兼ねなく遊びにきなさい」
 
「ありがとうございます」
 
猫沢さんと寅次郎博士は、笑っていました。
 
緩やかに時間が流れていきます。
猫達が、地球で過ごす時間は、あと僅かです。
 
[つづく]
 
  (※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】SF物語を展開中です。
 
そんな楽しい猫の星の世界観第6弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました。
 
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※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
 
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