もうすぐ平成が終わりますね。新しい元号、歴史的大イベントを経験する私達は、とても幸運なのかもしれません…。
 
画像は、チャット博士と、猫の星のイクサフィーゴです。
エネルギーを生産し、猫達の生活を支えています。彼の名前は「シヴァ2世」本体の「シヴァ」の細胞を取り出し造り出したクローン体です。生まれて地球時間で30年、体は巨大ですが、まっさらな子供です。
 
では、物語の続きをお楽しみください。
 
《第11章① イクサフィーゴの謎》
 
ループ次元で、あわあわする作者を置き去り、猫達全クルーは、寅次郎博士の元に到着します。
 
「あ、猫君達!」
 
庭の植物に水やりをしていた寅次郎博士が、水を止めホース片手にやって来ました。
 
「イクサフィーゴに変化が現れたと聞き、飛んできました」
 
「あぁ」
 
猫達を、大広間に通しますと、
 
「なんと!」
 
猫達は、目を丸くしました。
 
「いったいこれは…」
 
「君達は、以前、彼等を養殖していたと言っていたね?」
 
「はい…養殖と言うかクローン養殖ですが…」
 
猫沢さんは、イクサフィーゴ達を見つめながら言いました。
 
「こんな事は、私が彼等と旅をしてきて、はじめての事なんだ…」
 
なんと、3メートル弱の培養器の中で、小さいと言っても、イルカほどのサイズの黄金の稚魚が1体、泳いでいました。
 
産み落とされた。
 
と、言った方が、よいのでしょうか…?
 
「私は、正直、彼等の生態を、よく知らないんだ…グランティオス時代の「私」なら、知っているだろうが…今の「私」には、解らない…」
 
いつも冷静な寅次郎博士が、困惑気味で、猫達は、心配そうに見つめます。すると、チャット博士が、
 
「私は以前、彼等の養殖研究に携わった事があります。彼等には性別と言う概念はありません。個体を産み出したのは「分身」と言うか…記憶と意思を継続したままの「生まれ変わり」です」
 
「生まれ変わり…?」
 
「彼等は、肉体の細胞分裂の寿命に近づくと体内に複製体を創り、新たな肉体に移ります。私達は、これを「生まれ変わり」と表現していますが、永き命の器を維持していくためのボディと考えています。ですが、クローン養殖で造り出した個体達は、オリジナルよりも寿命が短かく短期間で生まれ変わりを繰り返し、やがて、光となって還っていきました…」
 
「ほう、そうだったのか…」
 
寅次郎博士は、元気に泳ぎ回るイクサフィーゴを、静かに見つめていました。
 
すると、猫谷エンジニアが、質問します。
 
「チャット博士、あのシヴァ2世は…?クローンと聞いているが?」
 
「彼は特別です。まだ、一度も「生まれ変わり」を起こしていません。限りなくオリジナルに近い個体で、本体の初代シヴァも健在です」
 
「では、私達の住居エリアに取り付けられている、超ミニイクサフィーゴは?彼等は生まれ変わるのか?」
 
猫谷エンジニアが、不思議そうに見つめました。
 
「彼等は、別のエネルギー宇宙魚の掛け合わせで、一代限り、何年かに1度、取り替えてるはずです」
 
「知らなかった…そう言えば、子供の頃、父が、外したミニイクサフィーゴ達を「空に還す」と言って、培養器から取り出し光になって消えたのを見たことある…」
 
「特殊捜査官のあなたも知らない事があるのですね。無理もありません。エネルギー部門は、猫居グループのチームが担当してますし、養殖イクサフィーゴの管理は、一部の猫達が請け負っています」
 
チャット博士が、ニコリと微笑みました。
 
「そうか、そう言う事か…私の父は、その一部の猫達だったのか…気がつかなかった」
 
「あなたと同じ、特殊任務ですからね。猫達の住居の近くに配電盤のような物が設置してあるでしょ?そこに各住居に繋がる超ミニイクサフィーゴ達が組み込まれていて、ライセンスを持った猫達が定期的に交換してます」
 
「ほーう」
 
猫谷エンジニアは、深く頷きながら納得しました。
 
「…すると、この大きな個体は既に脱け殻なのか…?」
 
寅次郎博士は、イクサフィーゴの鱗の変色に気がつきました。白くなっているのです。
 
「…はい、このままにしておいても、徐々に自然と姿は消えていきます。培養器から出してしまうと、すぐに光の粒となって飛んでいってしまいますが…」
 
チャット博士の言葉に、寅次郎博士は、即座に「このままでいい…」と答えました。
 
「イクサフィーゴの寿命は、はるか永く、遺伝子にプログラムされた回数の「生まれ変わり」を終えると、宇宙に還っていくようです。寅次郎博士が連れているイクサフィーゴ達は、最も古く長寿の種族のようです」
 
「そんな事まで解っているのかい?」
 
「はい、幼い頃、イクサフィーゴ達に聞きました」
 
チャット博士は、ニコッとしました。彼は、小さい頃から、イクサフィーゴと会話する能力を持っています。
彼等は、元々、戦闘種族のイクサフィーゴ、現在、地球にいるイクサフィーゴ達は、イルカ等と同じ、心優しい守護的な存在です。寅次郎博士が連れているのは、勇敢な戦士達、かつての生まれ故郷星では、かなり気性が荒かったそうです。
 
そんな彼等が、地球に渡り、グランティオス時代から彼を守っていたと言うのですが、その経緯は詳しくは分からないと、チャット博士は、彼等から聞いた話を、ようやく、皆に話してくれたのでした。
 
遥か昔の、寅次郎博士とイクサフィーゴの間には、何があったのか…
 
偶然、博士の家を訪れた千寿氏から、残りのイクサフィーゴ1体とオーパーツの情報が入ったと知らせを受けた猫達は、緊急合同会議を開く事に…
 
博士は、自家製カリカリを、皿に盛り、美味しいお茶を入れ、連日、調査に勤しむ猫達の、労をねぎらいます。
 
寅次郎博士率いる[橋渡しの民]の任務は、水面下で進んでいます。猫達の協力で、20年以上のタイムラグが縮み、カルカナルのループ次元を抜け出し始めた人達が増えてきたと言う、うれしい報告もチラホラとあるようです。
 
これを書いてる作者の、2016年現在は、ループ次元を選んでしまったので、何かしらの困難に見舞われると言うのですが、当時の当の作者は、気づいていません。
 
猫沢さんからは、現在の2019年時点で、これを書いている作者に、2016年の作者に、コンタクトを取るようにとアドバイスを受けましたが、いまいち、要領が解りませんが、やってみる事にしてみたのです。過去の「自分」に呼び掛けろ。と言うのは、どういう意味なのか…?
 
とりあえず、当時の自分に「何が起きても落ち着いて行動し、カルカナルの幻想に惑わされない事」と言うメッセージを、送り続ける事となったのです。
 
さて、どうなることやら…?
 
そして、イクサフィーゴは4体揃うのでしょうか?
 
[つづく]
 
 (※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
 
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
 
そんな楽しい猫の星の世界観第5弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
 
2019年の7月19日(金)~7月31日(水)、幻想の魚の秘密.第6弾を展示決定!お楽しみです。
 
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
 
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
 
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