もう間もなく新年カウントダウン、平成最後の大晦日が、近づいて来ます。
いかがお過ごしでしょうか?

画像は、つい先日、仕上げた作品「寅次郎博士とアルハンゲル」です。
画材は、顔彩絵具、水性顔料マーカー、コピックです。

数年ぶりに、筆を使って描きました。普段は、マーカーなので、キッチリした着色ですが、ぼかしや、にじみを使った作品は、久しぶりに描きます。

この作品は、来年7月の個展にて展示予定です。

では、続きをお楽しみください。

《第9章⑩ テラの声》
 
花音(かのん)さんの、懸命な処置のお陰で、命の危機を回避した寅次郎博士、すっかり元の年齢の姿に戻ってしまいましたが、とても体調も良く元気です。
 
「花音さん、よっちゃん、はっちゃん、もう大丈夫だよ。ありがとう」
 
寅次郎博士は、お礼に、手作りのカリカリを、Σ達には、光の輪っかのような、何かを渡しました。
 
「良かったです。あなたのいたグランティオスは、リラの人達が、生まれ変わり移り住んだ場所だったのですね…」
 
「そう、我々は、数々の星を点々としながら、地球に辿り着いた。グランティオスの他にも、この地球上には、幾度となく文明を築き上げては滅んでいった…これで何度目だろう?何百回…いや何千回だ!?…私達は、何度、同じ事を、繰り返したら、気が済むんだろうな…はははは…」
 
博士は、遠い遠い目をして笑いました。
 
「私達の星も、その中のひとつなのですね…」
 
「あぁ…」
 
博士は、手のひらに現れた、美しい神聖幾何学の球体を転がしながら、
 
「ほとんどの地球人達は、もう、この模様の意味も使い方すらも、すっかり忘れてしまった…」

数個に分かれた幾何学球体を、ジャグリングするように、見せてくれる寅次郎博士、猫達は、球体を、くるくると、目で追いかけます。
 
「この模様達は、私達の星にも存在します。テラの古代遺跡等に、数多く刻まれていますね。今、これを理解出来るテラビト達は、ほとんどいないと、猫沢博士は言っていました…」
 
美しく回転する、幾何学球体に、花音さんは、ついつい、ちょいちょいと、じゃれるように触れながら、言いました。
 
「単なるオカルトティックな、まじないか、御守り程度の認識しかない。理解できる者が居たとしても、ほんのごく一部の人間か、先住民族の子孫あたりさ…。このカルカナル世界で生きる人間達に、テラの声、宇宙の声すらも、届かない…」
 
博士の声は、切なげです。

「あなたは、そこに、風穴を開けに来た!」 
 
Σ達が、光る輪っかをクルクル回し、遊びながら、元気に答えました。
 
「ここには、私の他にも、[橋渡しの民]はいる。彼等は、人間達に、何度も何度も、語りかけているんだよ…」 
 
「寅次郎博士!テラに遊びに来た宇宙人達も、テラビトになって生きてるって聞いたよ!」

ΣS‐8が、無邪気に言います。

「あぁ、たくさんいるね。この星は、稀に見る。重く粗い物質世界、肉体を持たない生命体にとっては、素晴らしい世界、遊園地さ。そして、この星に人間として生まれるには、激しい争奪戦が繰り広げられている。しかし皆、ここに来た目的を忘れ…調和は乱れ、ひずみの中に居る事に、全く気がつかない…私とて…遭難者だ」

博士は、苦笑いして言います。

彼の言う地球での[遭難者]と言うのは、ひずみの中に入ってしまうと、この星に来る前の記憶を失い、普通の人生を歩んでしまう事。[橋渡しの民]にとって記憶の欠落は、任務遂行不可能者であり「遭難」を、意味するのです。

彼は、それを見込んで、猫の星の民に命綱を預け、地球にやって来たのです。

「現在、テラの周波数は、どんどん上昇しています。そして宇宙からの、強い周波数の波が注ぎ込み、テラビトの心体に変化が起きています」

Σ-41は、静かに伝えると、

「恐らく、カルカナル達は、地球人達が、それらの周波数を受信出来ないよう、仕掛けてくるだろう…」

「ストーンブロックの蓄積ですね。多くのテラビトの脳の一部は、石灰化して、アンテナとしての受信不能。他の器官にも蓄積されて除去不能、ミトコンドリアの破損が加速しています。それがここ、ヒノモトの民に集中してます」

Σ-41は、膨大な地球人達のデータを、空間上に、パッと映しました。

「ひどいもんだな…これじゃ、目隠しされたも同然だ…解ってはいたが、改めて可視化されると落ち込むなぁ…医者ん時は、こんなの[普通]の現象だと思ってたからな…」

深く、ため息をつくと、あの頃の自分の姿が、脳裏によみがえりました。

「普通と思わされていたんですね…」

「あぁ…大半の人間はそうさ。造られた[普通]の世界が本物だと思っている。いつも、この話題で、仲間達と話し合っては、堂々巡りになってグッタリさ…」

博士は、刻々と、リミットが近づくホログラムボディーを眺めつつ、頭を抱えました。

「諦めないで下さい。カンタスカラーナと同じ道に進みましょう」

花音さんは、入れたての、クロ・チャンを、手に渡しました。

突然、屋敷猫のアルハンゲルが、スマホをくわえて、部屋に入ってきました。
受けとると、何件かメッセージが…

その中に、

「あ、千寿さんからだ。なになに、明日、例の[橋渡しの民]の仲間が来るって?」

「また、一人増えるんですね!!」

猫達は、大喜びです。

「二人も来るって…?おいおい」

博士は、驚くばかり。
新しいメンバーの出現で、大喜びです一体、何が起きるのか?

[つづく]

 (※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。

物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。

そんな楽しい猫の星の世界観第5弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)

2019年の7月、幻想の魚の秘密.第6弾を展示決定!お楽しみです。

猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)

※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)

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