あっと言う間に8月、暑い日が続きますね。先日、発酵食品のイベントに行ってきました。とてもマニアックな奥の深い世界でした事を、お伝えいたします。
 
では、続きをお楽しみください。
 
画像は、寅次郎博士です。(物語用に即興で描かれたものですので、ポストカードはございません)
 
《第8章② 繋がる扉》
 
祭りの準備を終えた村人達は、自宅に帰っていきました。
 
寅次郎博士達も、明日に備え、静かな一夜を過ごします。
 
普通ならば、町内会の若者や、保存会の翁達が、前夜祭と称してドンチャン騒ぎでも、やりそうなものですが、この村では、それはありません。 
 
とても静かで、不思議な夜なのです。
 
自宅に帰った寅次郎博士は、タンスから法被を出すと、なんと、猫用の小さな法被も出てきました。
 
明日の準備を軽く済ませた、寅次郎博士は、神楽師匠の残した記録帳を引っ張り出し、村の記録を探していました。
 
「!?」
 
寅次郎博士の目に飛び込んできたのは、古びた村祭りの写真に紛れていた、顔は、微妙に日本人寄りですが、異様に手足の長い人達でした。あの不思議な形の神輿と一緒に写っています。
 
彼は、そっと写真を剥がします。
 
「やっぱり…」
 
裏面に書かれていたのは、この村に昔住んでいた民族の名称と撮影日時です。撮影者の欄には[千寿]と書かれているだけ…
 
記録によると、彼等は、異形の民として迫害され絶滅に追いやられた種族である。と書いてあります。
 
つまり、この村は、元々、現在の村人達のものではないと…?
 
あの蔵の中から出てきた、神輿は、普通のタイプと違います。
 
今、住んでいる村人のほとんどは、移住してきた人ばかりで、過去の村の様子を知る者はいません。 
 
その為、あの蔵の存在を知る者は、ほとんどいませんでした。知っていたのは、あの時、隣にいた元考古学者と、生まれた頃から、村に住んでいると言う80~90代位の村人数人。
 
祭りの準備中、偶然、神社の周りを探検ごっこをしていた子供達が、蔵を開けてしまったのです。鍵が腐り落ちていた為、すぐ開いたと言うのです。
 
その時、村の長寿者達が、真っ青な顔をして「鬼が来る!」と怯えていましたが、元考古学者が、一生懸命なだめ「鬼達を供養するから、安心してほしい」と説得しました。
 
寅次郎博士は、餅つきの片付けをしながら、彼等のやり取りを聞き、妙な胸騒ぎがして、開かずの蔵に向かったのです。
 
そして、元考古学者と名乗る村人[千寿学孝・せんじゅまなたか]の隣に、こっそり居合わせていました。
 
彼は、50代なかばのひょろっと背の高い、銀縁メガネの男性、五年ほど前に、移住してきた住民です。顔見知りではありますが、挨拶程度の付き合いで詳しくは知りません。時々体調を崩して、診療所に来る位の接点しかない、謎多き人物です。
 
寅次郎博士は、写真を眺めながら、なんとも言えぬ、胸を締め付けられるような気持ちになっていました。
 
「この村の化物伝説は、この人達の事だったのか…」
 
その時、部屋のドアの向こうから、ノックがしました。開けてみると、寅次郎博士の自宅を守る、猫谷エンジニアが、立っていました。
 
「猫谷くん…どうしたんだい?」
 
「村の周波数帯に、激しい変化が現れました。村人達が、鬼が来ると騒いでいましたが…何かあったのですか?」
 
「あぁ、ちょっと話を聞いてもらってもいいかい?」
 
「もちろんです」
 
猫谷エンジニアは、静かに部屋に入ると、小さな猫用のソファに腰かけました。
 
「君は、彼等の事を知っているかね?」
 
そう言って、先程の、手長足長の人達の写真を見せました。
 
「!?」
 
猫谷エンジニアは、目を丸くしました。
 
「マゼラン星雲の民のDNAを引く者のようですが、何故、ここに?」
 
「彼等は、かつて、この村に住んでいたようだ。だが、後から移住してきた者達に消されてしまった…今日、祭りの前日に、彼等の歴史が見つかったんだよ…君は、どう思う?」
 
「寅次郎博士、私から逆に質問します…以前、イクサフィーゴが3基目が稼働した瞬間、軽い地鳴りが起こりましたね。あれは、なんの現象でしょうか?」
 
「地鳴り?」
 
「はい、あの時も、周波数が変化しました。それに関して心当たりはありますか?」
 
「イクサフィーゴは、稀に、必要性のある時空同士を、一つに繋げてしまう事がある。地鳴りと共に、この村にある過去が現在に出現したんだろう…」
 
「このマゼラン型のテラビト達は、橋渡しの民のあなた達とは接点はあるのですか?」
 
「私にはないが…神楽師匠の関連だ…記録では、師匠が、昔、任務した星の民の末裔と再会したと、書いてある…」 
 
「なるほど…彼等は、この村で、あなた方を待っていたのでしょうか…?」
 
「かもしれない…」
 
二人は、しばし、考え込みました。
 
「そうだ、猫谷くん、君達のお陰で、カルカナル達は、私達の事を感知していないようだね。改めて礼を言うよ」
 
寅次郎博士は、猫谷エンジニアに深々とお辞儀をしますと、彼は、
 
「私達の宇宙船は、高性能のステルス機能を搭載し、この村全体にシールドを張っているだけです。猫沢博士が開発した周波数発生装置が素晴らしいのですよ。ですから、礼を言うなら彼に言ってください」 
 
「ほう、彼は発明家なんだね」
 
「はい、これまでも、様々な機器を作り、私達の星を守ってますよ。ですから、猫居一族…つまり、あなたの子孫達は、猫沢博士を全力でサポートしてるんです」
 
「たまげたな」
 
寅次郎博士は、まだ、猫沢さんの事を詳しく知りません。現在の飼い猫のアルハンゲルが、猫の星で、ケイオスと言う名で生きていた時に、出会った少年猫が、猫沢さんだった事位しか…
 
村に衝撃が走った祭り前夜、何事もなかったように静かに時間が過ぎていきます。
 
その頃、元考古学者の彼は…
 
「ようやく見つけた…早く、彼を探し出して、これを渡さねば…」
 
蔵から運び出した、古びた桐の箱を大切そうに抱き抱えていました。
 
一体、何が入っているのか?
 
[つづく]
 
 (※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
 
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
 
そんな楽しい猫の星の世界観第四弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
 
2018年の6月も、幻想の魚の秘密.第5弾を展示決定!お楽しみです。
 
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
 
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
 
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