温暖の差が激しく、体調管理が難しい、今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?現在 6月末に開催される東京 高円寺 猫の額さんでの個展準備加速中、会場でお会いできる事を楽しみにしております。

画像は、猫沢さんです(2015年作品)

では、お楽しみください。

《第4章テラビトサンプル1号録2014年夏から󾬄③》

サンプル1号は、大切な事を忘れている。いくら食べ物に気を使った所で、ある一つの動作を忘れていては、効果は無いに等しい…漬物石(遮断石)を、効果的に除去する事は、不可能である。

「他に、何か違う物を食べると良いのかな?」と、サンプル1号は、首を傾げたので、私は、迷わず、サンプル1号の顎に猫パンチしたのだ。 

驚くサンプル1号に、私は「テラビトに、既に備わっている器官を使いなさい」と、顎を使う事をアドバイスした。 

私は、ここ数十年の間に、テラビト達の食べる物に、変化がある事を指摘した。昔は歯応えのある食べ物が好まれたが、現在のテラビト達は、軟らかい食べ物や、甘くてフワッとした食感の、噛まなくても食べられる物が、好まれている。

結果として、顎の骨は退化し、細くなり、軟らかい食べ物を流し込むように摂取している事が、調査で分かった。細く小さく狭くなった顎の骨の中は、歯が全部生えきらないと言う現象が起き、歯並びがガタガタになり、うまく噛めない、食べられないと丸飲みに近い状態で、食べ物を摂取しているテラビト達が多いのだ…。

サンプル1号は、幸い、昔、上顎前突を改善する為に、歯並びを矯正している上に、顎はガッチリしている。土台は出来ている。

私は、サンプル1号が、普段の一回の食事にかかる時間を計ってみた。10分足らずと、とても短い…なんでも、仕事場の休憩時間が、2時間に1度 15分しかなく、忙しいと休憩中でも呼び戻される。その為、早食いなのだと言う。

「ゆっくり噛んで食べる時間がないから、パパっと数回噛んで飲み込むだけ」と、言っていたのだ。

それでは、意味はない。私は、一回に30回以上噛んで食べる事を薦めた。ハードル高いと文句を垂れる為、最初は10回から始める事にした。

サンプル1号は、私に、噛んで食べる事の意味を聞いてきた。

口腔内と言うのは、食べ物が一番最初に対面する消化器官である。ただ、食べ物を胃腸に入れる為のジョウゴ的な器官ではない。 「カレーは飲み物」と言う解釈が、あるそうだが、私は納得できない。


既ににご存知だと思うが、噛めば唾液が出る。当たり前だ。テラビト達は、この唾液の本来の働きや機能を、すっかり忘れているのだ。

唾液の中には、消化酵素が存在する。 この中には、食べ物を分解する力があり、口の中で噛むと同時に、食べ物と唾液を混ぜる事で消化しやすい形へと変化する、胃に辿り着いた時、更に胃液と混ざり腸へと運ばれていくのだ。 

咀嚼を怠れば、唾液である消化酵素は食べ物と混ざらず、固形物のまま、胃に運ばれていく。すると、どうなるか?固形物を流し込まれた胃は、胃酸を出すが、唾液が少ない為に、うまく混ざりきらない上に溶かし切れないまま、未消化のままの、固形物感を残した食べ物達を、十二指腸や小腸や大腸達に送り込む… 

分解が進まないままの食べ物から、栄養素をうまく取り出せず、そのまま、役目を終えた腸内細菌の死骸と共に排泄されるのである…もったいないではないか… 

やや固形物感の残った食べ物と言うのが、消化器官達には、厄介な代物で、場合によっては胃腸の壁を傷つけてしまうのだ。 腸内には、栄養を取り込む為の、繊細な絨毯のような繊毛と言う細胞があるのだが…これが、固形物感溢れる物質に触れると、傷付き剥がされてしまう。しまいには、絨毯が剥がされ板の間のような腸壁になり、栄養素を取り込めない体になってしまう。 

いくら、栄養のある物や体に良いと言われている物を食べても、役に立たない…

咀嚼の力をないがしろにしてきたテラビト達を、待っているのは、日頃の積み重ねが招いた事が原因の1つである、様々な疾患。

咀嚼とは、消化器官達が適切な作業が行えるようにする為の大切な動作なのである。最初の作業を怠れば、後の段取りが崩れてしまう重要な部分…  
そして、咀嚼にはメリットがあり、顎を動かす事で、脳に信号が行き血流も良くなる上に、認知症予防になると言う良い事がある。

噛む力を、あなどってはいけない。口をジョウゴにしてはいけない。きちんとした役割を与えるのだ。

この事を踏まえ、サンプル1号に実験をさせた結果。

ゆっくり食べる事で、満腹中枢が刺激されて、食べ過ぎを防げるうえに、少量で満腹になる事に加え、虫歯が減ったのだ。噛む事で、摩擦がおき歯石や汚れ等が落ちる。虫歯が出来難い口腔内になったのだ。

おまけに、顎のラインがスッキリして、会う人、会う人に「痩せた?なんか若返った?」と、言われて上機嫌である。

サンプル1号は、大喜びである。単純である。

以前なら、歯の詰め物が取れる度に歯医者に行くと、必ず虫歯が見つかり治療を繰り返していた。しかし、今は、実験開始後の定期検診で虫歯は見つからなかったのである。咀嚼30回は、ほど遠いが、以前よりも格段と増え、唾液分泌も増えた。食事にかける時間も増えた、仕事場での15分休憩も、おにぎり一個を極力ゆっくり噛んで食べるようになり、少ない量で、ハードワークをこなしている。

そして、唾液には、有害物質に値する食べ物の毒性を、制御、分解する力がある事も、付け加えておこう。

それと共に、蓄積した漬物石(遮断石)を、除去する事が可能になるのだ。テラビト達が、一斉に咀嚼回数を劇的に増やせば、漬物石がたちまち減り、私達の星カンタスカラーナの、エネルギー供給システム[イクサフィーゴ]が、再稼働するのではないかと、思っているのだが…咀嚼に意識を向けるテラビト達が増えない限り、実現は難しいだろう…。

咀嚼力を取り戻した、サンプル1号の体は、改善の兆しを見せ始めたが、まだまだ問題だらけである。

引き続き、私は、実験を続ける事にした。

[つづく]

(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。

早いもので、この物語も三作目を迎えます。この物語は、猫の星カンタスカラーナと地球を巡る、壮大なスケールでお送りするSF猫物語です。

そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、2015年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)

2016年の6月24日(金)~7月6日(水)幻想の魚の秘密・第3だん虚空高舞上]を開催。会場は、同じく、猫の額さんです。お楽しみです。

只今、在廊日程調整中です。決まり次第お知らせしますね。

猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)

※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)

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