10月の一ヶ月間に渡り開催されました。つくばのカフェ GAZIOさんでの個展[森羅万象光明波-しんらばんしょうこうみょうは-]も無事に終了し、作品達は自宅で休息を取っています。

ご来場下さいました方々、ありがとうございました。

そして作品を通して繋がった方々、ありがとうございました。

素晴らしい場所を、個展会場として使わせて下さった、店主の平沢裕一さん、スタッフさん、ありがとうございました。

そして、裕一さんの弟であり、私の尊敬するミュージシャン平沢進さん、ありがとうございました。

晴れ晴れとした気持ちで、次に繋がる作品作りに力を入れる事が出来ます。

感謝いたします。



お待たせいたしました。
[星を繋ぐ猫達]の続きをお楽しみ下さい。

画像一枚目は、2015年個展作品[奈落の底へ]カルカナル族、ウィラード一族。この作品の原画は東京 高円寺 猫の額さんにてご覧頂けます。

二枚目は、つくば個展の様子です。


《第二章 寅次郎博士とジャッコ博士⑤カルカナル族の正体》

カンタスカラーナの技術が地球…いや、日本で使われているとは??

「寅次郎博士、一体それはどう言う事なんですか?」

猫沢さんは、身を乗り出します。

「当時のカンタスカラーナでは、カルカナル族が医療分野を統括していた。東西南北の猫の民達が、昔ながら伝承してきた民間療法を排除し、全く違うやり方で塗り替えていった事は、皆知っていると思う…」

寅次郎博士は、虎之助時代に体験した、カルカナル時代の実体を話すと…

「はい、教科書に載っていました!次々に病気を作り出し、カルカナル社は、劇薬のような薬をばらまき猫達を半病猫に仕立て上げ、延々と病院に通わせていたと…現在のカンタスカラーナでは考えられません…」

最年少の猫 赤猫(あかね)君が、学校で習ったカンタスカラーナの歴史を話します。

「その通りだよ…薬漬けの猫達が、さ迷う悲しい時代だった…」

「寅次郎博士、カルカナル族とテラでの現象が重なるのは何故なのですか?カンタスカラーナの技術が、テラへ流れて来たのは?この気味の悪さを説明してくれませんか?」

猫沢さんは、地球に着いた当初から感じていた違和感です。

「地球に…カルカナル族が存在しているんだよ…」

「カルカナル族が?猫の姿のですか!?」

「いや、彼等は基本、物質的肉体は持っていない…いや…持つ事が出来ないエネルギー体だ。彼等は星の生命体の肉体と精神を乗っ取る事で存在を維持している…」

寅次郎博士は、カルカナル族の正体を明かしました。

宇宙には、沢山の生命体が存在します。形態も様々、物質的肉体の他に、霧やガスをまとった体や、細かい粒子だけの存在、固い岩のようなゴツゴツした体等、個性豊かだと言います。

「肉体を持たない生命体…!?カルカナル族の正体は猫型生命体ではないと…?では、カルカナル社創始者のウィラード一世は…何者なのでしょうか?」

猫沢さんは、ウィラード一族のホログラム映像を出しました。鋭い青と金色の混ざった瞳を持った紳士猫や淑女猫の姿…

「別の星からやって来た、哀れな難民猫だよ…」

寅次郎博士は、悲しい顔をしました。

「元々は我等と同じだと??信じられない…彼等、ウィラード一族は代々に渡り、悪の限りを尽くしました。しかし後継者の三代目が失踪した辺りから崩壊の一路を辿った…」

かつて、カンタスカラーナの頂点に立っていた、ウィラード一族…猫沢さんが、悪名高い猫一族の名を出すと、猫達の間でどよめきが走り、深い嫌悪の波長が空間を歪ませていました…。

その歪んだ空間を眺める、元カンタスカラーナ猫、アルハンゲルの深い海のようなブルーの瞳は、どこか悲しそうでした…。

「では、どのような経路で、テラでカルカナル族の支配が始まったのですか?どのようなテラビト達が、乗っ取っとられているのですか?」

猫沢さんは、質問をします。

「あの頃…私達[橋渡しの民]の働きによって開いた、カンタスカラーナ星人達の意識が動き、支配が失敗に終わる事を察知したカルカナル族達が、次にターゲットにしたのは地球だ…彼等は人間達の脳神経を乗っ取り紛れ潜んでいる。この人間達を巧みに操り、姿の見えない支配者として君臨している…私は、彼等を追ってこの星に来た…まぁ…こんな話を話した所で、周りの人間達には信じて貰えないだろうがね…君達なら大丈夫だろう?」

寅次郎博士は、宇宙猫達相手に、随分とリラックスしています。何かホッとしているのです。地球上で、ようやくまともな話が出来る相手に出会えた事を…

「ちょっと待って下さい!頭の中にあるモヤモヤを整理させて下さい!私達[東の猫の民]が、テラ時間にして千年前にカンタスカラーナ星に移住して来た時…かつての私達の故郷星はカルカナル族によって滅ぼされたのです…あの時の猫一族は、コースタリィ一族と言われていました…私は、てっきり、猫の姿をした生命体の中にカルカナル族と言う種族が存在するのかと思っていましたが……違うのですね?」

「違う、星によって彼等は姿を変える…既存の生命体に寄生する…地球人の場合もそうだ。カルカナル族に、最も忠実な下部になる地球人を探し出し、本来の人間らしさを奪い、富と栄誉と地位、最高の智恵と技術を授ける。彼等の支配欲を満たし、地球人類を思い通りに操り、あらゆるものを奪い尽くし破壊し尽くす、この悲惨な状況下に強いられた人類は、憎しみや憎悪の感情……んー…カンタスカラーナ言語で言う[ムィクア]を生み出し、カルカナル族のエネルギーとなり彼等は生命維持し続ける事が出来る。私達[橋渡しの民]は、これらを阻止する為に存在する…」

寅次郎博士の真剣な表情の中に見える[橋渡しの民]としての、重い任務を背負った苦悩の心が見え隠れしていました。

「ムィクア…それがカルカナル族の目的…」

「ムィクアを発生させる為に適した星は、成長途中の幼い星の、低い周波数を持った生命体の存在が必要だ。例え高い周波数を持った生命体でも、カルカナル族の手で蝕む事は可能だ…時間をかけて、自分達に適した周波数の星に作り変えてしまう…」

寅次郎博士は、表情を曇らせています。一体、この地球で何が起きているのか…?一見、平和そうに見える地球の現実に対して、作者には皆目見当もつかないのです。彼が言っている事が、ただの妄想や戯れ事にすら聞こえるのは…カルカナルの技によるものなのか…?

「なんて恐ろしい…私達は、そんな生命体にカンタスカラーナを乗っ取られていたのですね……そして今、この美しい星でも…」

調理担当の猫 花音(かのん)さんが、涙をポロポロと流していました…横ではテラネコを祖先に持つ、ターラ博士と、ミッシェルが泣いていました…。

「私が、今 このタイミングで記憶を取り戻したのには、意味があるのだろう…それ以前の何も解らない私に、ジャッコ博士は、根気よく、カンタスカラーナの、様々な知識や技術を教えてくれた…そして虎之助の智恵は、当時の私を何度も助けてくれた…」

寅次郎博士は、記憶を取り戻す前の自分の話に戻し始めました。その顔は、厳しい面持ちの[橋渡しの民]から、茶目っ気のある、穏やかな地球人[風天寅次郎]の顔に戻っていました。

「蕎麦修行の傍ら、店主の師匠と耕した畑は、周りの専業農家達には非難の的だったなぁ…。虎之助農法は非常識だとね…」

寅次郎博士は、自家製の蕎麦チップスと野菜チップスを綺麗に並べ始めました。

「決して土を殺してはならない
虫達を殺してはならない
森を殺してはならない…」

猫庭博士は、祖父から教わった言葉を、丁寧に唱えました。

「それは私が猫庭十三郎博士に伝えた言葉だ!よく知っているね」

「この教え…まだ沢山の続きがありますよね。祖父から教えて貰いました。私も教えを守り小さな畑をやっています」

猫庭博士は、ニッコリ微笑みました。

「一番大切な事なんだ…それを無視して作られた作物達は、形こそ美しく均等だが、中身はすっかり朽ち果ててしまっていた…私達は、これらを昔ながらの生命力の高い作物に復活させたかったのさ…ジャッコ博士は、カンタスカラーナでの農法を丁寧に教えてくれた。かつての私が、広めた方法だと言って…小さな体で、畑を耕してくれた…これが、カルカナル族達の支配から、身を守る術と気づいたのは…随分、後になってからだ…」

寅次郎博士は、アルバムを取り出し、唯一、カメラに収められたテラネコ姿のジャッコ博士の写真を見せてくれました。

色味が若干褪せた写真には、美しい瞳のキリッとした猫の姿のジャッコ博士の姿と、神楽屋の店主、寅次郎博士が写っていました。

[つづく]

(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。

物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。

そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、今年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表。2015年6月5日~17日に開催いたしました(^O^)
来年の6月も、幻想の魚の秘密.第三弾を展示決定しました!既に準備は始まっています。お楽しみです。

猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)

※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)

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