いつの間にか7月です。
先月の個展にお越し下さいました方々、誠にありがとうございました!今回、実りある展示になりました事、感謝いたします。
さて私、サンプル1号の作者は、次の展示、7月29日~8月10日に地元である岐阜県美濃加茂市の太田宿 中仙道会館での[猫ちゃん祭]に向けて準備中です。
こちらの展示では、ぬいぐるみ作家の柴田里美さんと二人展。ほのぼのした、かわいらしい作品を展示いたします。猫沢さん作品とは違うファンタジーな世界をお楽しみいただけますよ(猫沢さん作品も少し展示しますよ~)
では、お待たせいたしました。寅さんの話題を再開します。
画像は、即興作品[寅次郎博士とアルハンゲル](注.ポストカードにはなっていません)
人物画を、この物語の中で、公開するのは初めてかもしれません。
《科学者.風天寅次郎》
猫沢さんは、寅次郎博士が出してくれたお茶を、一気に飲み干し、おかわりと湯呑みを差し出しました。
寅次郎博士は、ニッコリ微笑むと、新しく入れ直した熱々のお茶を注いでくれました。
「猫沢くんは、このお茶が気に入ったのかね?嬉しいねぇ」
「はい、私がテラに来て飲んだお茶の中で1番美味しいです!」
「そうかい!このお茶はねぇ、ここの村人達が作ったんだよ。過疎化して荒れ地だった茶畑を蘇らせてね。今じゃ特産品さ。宇宙人の君の口にも合って嬉しいよ」
寅次郎博士は、微笑みながらお茶をすすります。
その様子を見ていた猫谷エンジニアも、恐る恐る、初のテラビトの飲み物を口にします。
「あ、本当だ…これは…カンタスカラーナの東の猫の民の飲み物に、どこか似ている…懐かしい…」
猫谷エンジニアはしみじみと、小さな湯呑みを包み込むように見つめます。
猫沢さんは、お茶と一緒に出された蕎麦チップスを食べると、とても美味しかったのか、テラビトの食料に対して警戒する、猫谷エンジニアの肉球に乗せました。
ほのかな蕎麦の香が広がります。
「私はテラに来て、テラビトサンプル達数名から、何度かお茶や茶菓子等を出して貰いましたが、ほとんどのものは、とても口に出来るようなものではありませんでした…」
猫沢さんは、作者の他にもコンタクトの取れるテラビト達がいる為、お茶等で、もてなされる事も少なくないようです。
「そうだろうねぇ…ほとんどの物は化学的に加工された土壌で薬を使いコントロールし効率的に栽培されたものが多い…本来の茶葉の力や味を殺したものが流通している…君達には、単なる刺激物でしかない…もちろん私達、人間にもね…」
寅次郎博士は、軽くため息をつきました。
「私は、テラ調査で死んだような土壌で育つ作物達や、無機質な工場で造られる化学的食料を何度となく目にしてきました。いちじるしく低下した周波数の地で、テラビト達が生きているのを見て驚きました。ですが、この地は全く違いました。周波数が非常に高く落ち着くのです。まるでカンタスカラーナにいるような懐かしさを感じます。ここの大地は生きています!」
猫沢さんは、目を輝かせました。
「大地が生きている。嬉しいねぇ~!この場所の良さが伝わっているのかね?そうかぁ、私が何年もかけてやってきた事は、間違いはなかったんだな…間違ってなかった…これで良かったんだ…うん」
寅次郎博士は、まるで自分に何かを言い聞かせるように、うなずきながら、猫沢さん達の目をジッと見つめました。
実は、猫沢さんは、既に到着直後、この村一帯を、ぐるりと一周し周波数データを収集していたのです。時空路を通過した途端、えもいわれぬ美しい空気に驚いたのです。
ここは本当にテラビトの住む場所なのか!?違う周波数帯の世界に迷い込んだのではないか?と疑う程の衝撃を受けたのです。
「寅次郎博士、あなたは今、テラでどんな研究をしているのですか?」
「私の研究?私の専門は植物や生物…厳密に言えば微生物かな。彼等は素晴らしい存在であり、彼等無しに私達の生存はありえない」
寅次郎博士は、目を輝かせます。
「それなら、猫庭博士とお話が合いそうですね。今度連れて来ます」
猫沢さんは、虎之助博士と1番近しい猫の名を出しました。
猫庭博士の祖父、猫庭十三郎は、現在テラビトとして存在している寅次郎博士の、以前の存在(過去生)である猫伊虎之助博士の愛弟子。
その意思を受け継いだ孫猫が、猫庭博士なのです。彼も同じ分野を研究している為、共通点が多いかもしれないと…
「猫庭博士?君達は二人だけじゃないのかい?」
寅次郎博士は、驚きの表情です。
「いえ、あと12人の猫達と一緒です」
「それは驚いた!是非会いたいねぇ!みんな連れてきたまえ。かわいいお客さん達を大歓迎するよ!」
「分かりました。みんなを連れてきます!」
盛り上がる三人を静かに見守っていた、ロシアンブルーのアルハンゲルは、スタスタと近づくと寅次郎博士にスリスリし、何かを知らせます。
「あ、もうすぐご飯の時間だ。アル達、もうちょっと待ってなさいね。ところで君達は?何故、地球にやってきたんだい?」
アルハンゲルは、話に夢中な寅次郎博士に、仕方ないなぁと言う表情で離れて行きました。その周りにはいつの間にか、十匹以上の猫達にぐるりと囲まれ、いまかいまかと食事を待っているのでした。
見渡した、猫沢さんと猫谷エンジニアは、猫達に囲まれドギマギしてます。
「タ、タニィちゃん!私達、もしかして、食事の時間を邪魔してるのかな?猫達の目が怖いね」
「そうだな。寅次郎博士には猫達に食事を…」
にじり寄る猫達…
「と、寅次郎博士、猫達が待ってます。食事をあげて来て下さい。話はその後でも大丈夫ですから…」
猫沢さんは、殺気立つ猫達の目線に耐えながら訴えます。
「あ、そうかい?じゃあ…君達ちょっと待っててね」
そう言うと寅次郎博士は[猫の餌ボックス]と書いてある箱の中から、カリカリや猫缶等をガサガサ取り出しに行きました。よく見ると、街で売られているキャットフードではなく、手作りパッケージです。すると、我先にと十匹以上の猫達がワラワラと寅次郎博士の周りを囲みます。
ニャアニャアガヤガヤ賑やかです。
器に盛り付け床に置くと猫達は一斉に群がり、それを見守る寅次郎博士は、とても優しい眼差しです。
賑やかな食事のさなか、突然ドアのチャイムが鳴りました。
「はいはいはーい!どちらさまー?」
寅次郎博士は、玄関先に向かいます。
猫沢さん達も、どんなテラビトが来たのか興味深々で再び、トコトコついて行きました。
ドアを開けると、血相を変えた女性が、怪我をした子供を抱えていました。
「寅さん先生!うちの子が木から落っこちて!」
「分かりました。診療室に運んで下さい」
寅次郎博士は、穏やかな表情で迎えると、研究室とは違う別の扉を開けました。
しばらくすると、笑顔で親子が出てきました。
「先生、ありがとうございました」
急患の親子が帰ると、屋敷内には静けさが戻りました。寅次郎博士は何事もなかったように部屋に戻ってくると
「寅次郎博士、あなたは一体?」
「私のもうひとつの仕事は、村の診療所の医師だよ。と言っても、病気になる村人は滅多にいないから、傷の手当てくらいしかないけどね」
寅次郎博士は、ただの蕎麦打ち科学者ではないようです。
「さて、本題に移ろう、君達が地球に来た目的を教えてくれないか?遊びに来た訳ではないんだろう?ジャッコ博士の時とは別の何かを感じるんだが…?」
穏やかな表情から真剣な表情に変わった寅次郎博士が、一瞬、虎之助博士に見え、猫沢さん達はハッとしました。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、今年も東京.高円寺猫の額さんでの個展にて発表。2015年6月5日~17日に開催いたしました(^O^)
来年の6月も、幻想の魚の秘密.第三弾を展示決定しました!既に準備は始まっています。お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
(※ このblog内の画像や文章を無断で転載等をする事は、ご遠慮下さい)