少しずつ春の気配、過ごしやすい気候になってきましたね。

見事、猫達にサンプルにされてしまった作者は、どうなる事やら…。その前に、もう一人のテラビトを紹介します。

《テラビト研究サンプルNo.2号》

私は、サンプル1号とのコンタクトが成功するいなや、次のテラビトに反応が表れたと報告を受け、次のテラビトに意識を合わせた。

彼は、山里に住む高齢のテラビトである。畑を耕し、山へ狩りに出掛け、ほぼ自給自足での生活をしている。時々、彼の親族らしき家族や友達が来訪し笑顔を絶やさない…

街のテラビト達とは違い、珍しく漬物石の蓄積が少ないテラビトだ。彼はサンプル1号とは違う視点で、この世界を見ているのだろう。

私達が強力な周波数アタックを仕掛けた数日後、テラビトBは思い出したように押し入れを探り、取り出したものは、年季の入った古い絵の具箱だ…

彼が一気に描き上げたのは、私達の絵である。衣装やΣ達の風貌はかなり違うが、雰囲気は極めて近い。

どうやら彼は、昔、絵の仕事をしていたと思われる。

「猫沢博士、周波数が同調します。出現準備してください」

Σ-41が、彼の描いたΣに姿を変えスタンバイしていた。私が子供の頃に見た、オモチャの猫にそっくりである。

私も彼の周波数に合わせた姿に変えた、分厚くて軽い宇宙服に、おもちゃのようなレーザー銃を手にし、旧型の宇宙船に乗り待機した。

テラビトBの宇宙人に対する私達のイメージは、おそらく、彼の記憶の中に眠っていたイメージだろう。私達から見れば、この装備や姿形は遥か太古のものである。

「博士、同調100%です!」

葡萄の木の下で眠りこけるテラビトBの前に、私達は現れた。

「おや、とうとうお迎えが来たのかい?」

顔をしわくちゃにしたテラビトBは、妙に落ち着いていた。夢うつつなのか、あの世からのお迎えだと勘違いしているようだ。

私は、彼に事情を説明すると「黄金の魚を探してる?専門家にでも頼んでくれ」と失笑された。

サンプル1号よりも理解力がありそうで、頼れそうだと感じたが、真剣に向き合う気持ちがない事が解った。

テラビトBは、生まれながらにして漬物石(遮断石)を自力で切除する力があるのか、とてもクリアーである。そのせいか、幼い頃から宇宙人や幽霊と言う類の物を見てきた形跡がある。あしらい方が慣れているのだ。しかし同時に大きな心の傷を負っている…。

いけない、これ以上干渉してはいけない。

この先のコンタクトは諦めて帰ろうとした時、テラビトBは語り始めたのだ。

「しかし不思議だなぁ…オレが描いた猫の絵が動き出すとはな。急に映画看板描いていた頃を思い出したんだ。あの頃は楽しかったなぁ…銀幕スターが輝いていた時代だぁ…映画の中には全てが同時に存在していた。映画の世界に未来への希望を夢見た。時には絶望を描いた…そしてわしらの時代は戦後の日本を立て直す為に死に物狂いで働いた。めざましい経済発展が終結した後…激しい歪みが来やがった。オレは歪みきった街の息苦しさに堪えかね、何もかも捨てて一人で山奥に逃げて来た…」

テラビトBは、タバコに火をつけると遠い目をして空を見上げていた。

「猫さん達よう、こんな臆病者のオレの所まで、わざわざ訪ねに来て貰って悪いが…静かに残りの余生を送らせて欲しいんだ…すまんなぁ…」

私達は、テラビトBに協力の意思は無いとし宇宙船に乗り込もうとした時、再びテラビトBは話しかけてきた。

「また、遊びにおいで、話だけなら聞いてやるからよ」

テラビトBの意外な言葉に驚いたが、サンプル2号としての観察記録の許可を貰い、彼の身に何かあれば駆け付けると約束し、すみやかに目の前から消える事にした。

サンプルが2体、確保出来た。

そうこうしているうちに、サンプル1号が変化し始めたと報告が入った。戻る事にしよう。

[つづく]

(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。

物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。

そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、[猫の額]さんでの個展にて発表致します。2015年6月5日~17日に決定いたしました(^O^)

猫沢さん作品のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)

※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)

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