ギターを弾きに外にでる。
自慢のハイゼットに乗って雲一つ浮かばぬ透き通る青のグラデーションに見惚れている間に見知らぬ草原地帯に迷い込んだ。

目の前には鳥海山がいつもの立ち振舞いで存在しているからおそらく現実の世界。
でこぼこの砂利道を何も考えずに進むと、どこまでも道が続いて二度と帰れなくなりそう。
このまま消えてしまおうかの衝動を砂利道の脇のスペースに車と一緒に停車。
見渡す限りの草原、草原。
ふと何かに目がとまる。
何かいる。
茶色い、犬?
犬にしてはまわりに飼い主らしき人影はない。

「キツネだ」

部分的に草が刈り取られた裸の芝生に寝転んでいる。ゆっくり近づいてみたが逃げない。
もう20メートル、目の前。
すっと立ち上がりピョンピョンはねて藪に消えた。

一瞬緊張したな。
それがばれたか。
もっと自然に呼吸をし、いつ何時もけして心乱さずに存在できれば、きっと触れる事も話す事もできるだろう。

まるであの鳥海山のようにただ存在できれば。
松本アンダーグラウンド-King Of Freerunへの道--image.jpg