悪夢の後に目が覚めて、どこからどこまでが夢なのか混乱する。

一瞬すべてが夢なのかと期待してしまう。

でも母が癌だというのは現実と気づき、また落胆してしまう。



詳しい検査の結果を聞くたびに、少しずつ悪いニュースが増える。

目に見えている口の中の変色した部分とその周りだけ切除すればいいと思っていたけれど、それよりも深く広く癌が広がっていることがわかった。

頬の部分を口の中からえぐりとり、くちびるの端まで切り取る。他の身体の部分から皮膚を血管ごと移植する。

血管をつなぐため、転移を防ぐため首のリンパを切り取る。

呼吸を止めないために気管切開する。

術後は鼻から栄養を摂って、しばらく喋ることがてきない。口を開けたり閉じたりにはリハビリが必要。
リンパを取るため、手が横からあげられなくなる。リハビリをして少しよくなるが、完全にはもどらない。

失うものばかりに目がいってしまう。
今まで通りの生活には戻れないかもしれない。
それでも命があるだけいいってことなのか。

ひとりで車を運転していると、いつもと同じ風景なのに世界が終末に向かっているような感覚になる。一週間後、1カ月後、一年後、世界はどうなっているんだろう。