手術の翌日にはICUから一般病棟個室に移動します、と言われていた。

なのに一般病棟の受付に来たら、まだICUにいるのでそちらに行ってと伝えられた。


容態が悪いのだろうか…
心配で息苦しくなる。


ICUのドアが開くと真正面に母が寝ている。
ほんの少しベッドが上がり、すぐ顔が見えた。

私が手を洗浄していると、母はこちらに向けてヒラヒラと手を上げた。

意識がある!


てっきりウトウトと眠っていると思っていた。

近づくと、おもむろに
「ベッドが空かなくてまだ上にいけないのよ」
と喋りだした。

喋ってる!
口がはっきりあかず、酸素マスクでくぐもった声だけれど、はっきりききとれる。

しかも怒っている…。
ICUは機械音ばかりでつまらない、はやく移動したいと顔をしかめて不平をどんどんならべる。

私が来る前にも男性看護師に文句を言っていたらしい。

手術の後、気管切開の予定もあり、くちびるの端を切ることもあり、しばらくはお話はできません、大きな手術なのでせん妄になるかもしれません、との説明であったので、こんなに元気な姿を見られるとは思わなかった。

力が抜けた…。

その後もなにやら家の仕事のことや、こどものことや、喋り続けた。
なんだか喋りすぎでは…?

そして急に嘔吐した。
痛み止めの影響か、ずっと動かないせいか、胃腸の働きが弱まっているせいだろうとのことだった。

まだ元気というわけではない。そりゃあそうだ。
昨日手術したばかりなんだから。

私がいると、喋りがとまらず負担をかけそうなので、スタッフにご挨拶して帰ることにした。

ベッドがいっぱいで一般病棟に上がれないのは本当らしい。
明日は移動できていますように。