幻夢ちゃんの作り方です。
お久しぶりの作り方シリーズです。
この役は、20年近く芝居をやってきた中でも上位に入るくらい個人的に大好きな役なので、備忘録も兼ねて書いておきまする☆
全然夢が無いので、万が一幻夢ちゃんのイメージを崩したくないぞ!という奇特な人がいたらば、読まないほうがロマンがありますので、アレしてくださいね☆
そもそも誰が読むのかわかりません。
まあいいのです。
無対象に書きなぐります!!(*´ω`*)
超長文な上、ネタバレしか含まれないくらいのネタバレっぷりなので気をつけてくださいね(´•_•`)
【里見幻夢】は、「帝都探偵奇譚ジゴマ2」に出てくる、阿片中毒の元宗教団体の教祖、現在は恋人の文代ちゃんと共に、連続殺人犯を神に見立てて新たな組織を扇動しているキャラクターです。
なんだこのうっとりするくらいの美味しい設定は!!!
しかも演説を除くと、4シーンしかない役で、きちんと起承転結に分けられるので、とてもやりやすい役です。
さらに、この役は文代ちゃんと共にかなり独立していて、キャラクター性がストーリーの本筋にほぼ関与しないので、正直、100通りくらいやり方のある役だと思います。
ジゴマ劣化版にすることもできるし、ものすごく知能の高いタイプにする事もできますし、超小物にする事もできます。クールにも、アッパーにも、穏やかにも激情的にもできます。
自由すぎる役です。
阿片中毒の深度、教祖としての能力の高低、恋人との関係の近遠、ジゴマへの心酔度と、自由に発想していいポイントが山ほどあります。
わっしょいわっしょいです!
この時点でどれだけこの役が面白いかってことです。
設定だけでよだれが出るレベルです。
壱岱さんの脚本に出てくるキャラクターって、本当にやり甲斐がありますね。
設定が美味しい役が多い!!!
壱岱さん自身、役者を見ながら稽古中にどんどん脚本を変えていく作家さんです。
「ほうほう、この役者はこの設定を拾うのか、じゃあこういう台詞足そう、ここは削ろう」
みたいな事を考えながら稽古をしてるんじゃないだろうか。
僕のイメージですが。
だから使ってもいいし、使わなくてもいい設定がたくさんあって、僕にとっては遊園地みたいな脚本なのです。
そこで丸山は全部載せにしました。
どうせなら難易度ベリーハードでいきましょうの精神ですね。
阿片中毒MAX
教祖としての能力(扇動力)MAX
文代への愛情MAX
ジゴマへの心酔度MAX
身体性MAX
信仰心MAX
激情MAX
落ち着きMAX
(ジゴマへの心酔度は徐々にMAXになるやつです)
そして、ゼロ部分も増やしました。
計算力ゼロ
他人への共感ゼロ
社会性ゼロ
精神的強さゼロ
迷いゼロ
信仰心ゼロ
みたいな感じですね。
すごくアンバランスですね。これだけ見たらどうやって演じていいかわからんですね。
「演説の能力が高くて、他人を扇動することはできるが、先の事は考えていない。
文代ちゃん大好き!でも他人にはいくらでも悪魔になれるタイプ。
しかし精神的にものすごく弱い阿片中毒の人。
神様を強烈に信仰しているが、強烈に憎んでいる。
ものすごく落ち着いてるときもあれば子供のようにはしゃいでる時もある。
一度は必死に神に救いを求めたが、救われないと気付いた。徐々にジゴマに心酔していき、気づいたら引き返せない状態、人としても、文代ちゃんとの関係も」
文章にすると少し分かりやすくなりますね。
序盤、文代ちゃんと二人きりのときは、"ジゴマ"と呼び捨てているのに、いつのまにか"ジゴマ様"と呼ぶようになったり、その後「ジゴマがただの人殺しでもかまわない」と言ったりして、一貫性が無いのも、とても人間味を感じますね。
「色んな面があるが、本当は何を考えているのか全くわからない」
というのが、台本を読んだ印象での、このキャラクターの最大の魅力だなぁと思いました。
なので劇中に考えてる事を全部説明するのは野暮ですね。
思考や人格については省いて、それ以外を説明しますね(*´ω`*)
今回、相手役の三浜さんが、とてもキュートでお芝居が大好きというのが伝わってくる若い女優さんだったので、この魅力的なキャラを活かさず置くべきか!と思い、「文代ちゃん大好き」というイメージだけは最初から最後まで徹底することにしました。
ボニー&クライド的なイメージです。
悪い事するけど愛情だけは本物、みたいなやつです。
それを実現するために、まず序盤にどれだけ文代ちゃんとの関係を押し出すか?をテーマに稽古をしました。
指切りや手品なんかが分りやすいですね☆
毎日こんな事してイチャイチャしてるんだろうなこいつらって思って貰えてればラッキーです。
"いつもやってる感"を出すために、何度も何度も同じシーンを合わせてもらいました。三浜さんが稽古好きなタイプの女優さんだったので、助かりました。
(ちなみに、ちょくちょく三浜さんが指切りのお芝居を変えてきていて、「げんむちゃん♡」のときもあれば、「げーんーむーちゃーん♡」ときもあって、それはもうおじさんは毎回新鮮にキュンキュンしておりました。客席の皆さんからも、ぽわんとしてる空気が伝わってきて、劇場が平和な空気に包まれておりました。彼女が人気があるのがわかりますね!!かわいいなぁチクショウ属性を持っているのです。"文代ちゃんを利用してるだけで、無下に扱う"というプランも組めたと思うのですが、三浜さんだったから、ああいう関係になりました。まだ芝居を始めたばかりだとの事なので、これからに期待できる女優さんですね)
話を戻します☆
聖書引用にしろ、手品にしろ、出したアイデアを否定せず発展させてくれる壱岱さんは、本当にすごいと思います。
僕が手品をやれば、「手品いいね!後のシーンでもう一度やってほしい。あれだけ綺麗に見えていた花が今は綺麗に見えないってイメージで」という演出をすぐにつけてくれます。
本来台本に"文代"と書いてあるシーンの返し稽古で僕が試しに「文代ちゃぁん」と言ったら、次の日には別のシーンが「文代ちゃん」に書き換えられていて、本当に感動しました。
ちゃんと見ていて、ちゃんと聞いていて、ちゃんと受け入れてくれて、さらっと示してくれるのです。
文代は台本上一度も幻夢の名前を呼ばず、幻夢のことを「あんた」と呼んでいたのですが、稽古中にふと壱岱さんが「幻夢ちゃん」と言ったのがなんかすごく愛に溢れてて、幻夢ちゃん呼びにしてもらいました。
壱岱さん自身が、ものすごくものすごく愛に溢れている人なので、ポロッと出るそういった愛情に、僕はすごく影響を受けます。
ハンマーで三笠の脚を叩くシーンも、最初は1度も叩いてなかったのですが「やっぱりどこかで一発は叩いてほしい」と言ってもらい、腹が座りました。
演出家からGOが出れば役者は何でもやれる生き物ですね☆
阿片のシーンでは
壱岱さんが「阿片は落ち着く薬物」でも「テンションを上げてほしい」という演出をして下さり、さて、この矛盾をどう解決しようかと考えました。
阿片のシーンはダウン系のお芝居で、そのまま殺陣に突入したあとテンションが上がる方法は無いかと、3日くらい考えた結果生まれたのが聖書殺陣のシーンでした。
台本上にも、"ノアの方舟の話"と"カナン征服の話"が出てきたので、そこに幻夢の信仰やら執着の根源がある気がして、「殺陣で聖書のノアの方舟とカナン征服のくだりを引用したい」と言ったら壱岱さんも、殺陣づけの小栗くんも、面白いと言ってくれて、あのシーンを細かく演出してくれました。
「最終的に哀しく見えるといい」、とか、"あのタイミングで抱きしめる"というアイデアは僕の頭から出てこないアイデアだったので、すごく刺激的でした。
最初、僕はボソボソと聖書を唱えていたのですが、「いや、ちゃんと聞こえたほうが面白い、何章何節か全部わかるように」と壱岱さんが言ってくれて、やってみたらそっちのほうが遥かに難しい!しかし難しいもの程、ちゃんとやれれば面白いのです、お芝居は。
小栗くんも「文節で区切らないで、殺陣と関係なく喋れない?」と、超高難易度の要求をしてくれて、「無茶をいいよる!笑」と思いましたが、確かに絶対そっちのほうが面白いと思いました。
腕をキメられながらも、転ばされながらも喋り続ける異様な光景は小栗くんのアイデアですね☆
三笠役のむおも、「まるさん、ガンガン来てください!手加減しないで下さい、僕の事は気にしないで全力で来てください。当たってもいいです、危なくても絶対避けます、面白いほうがいいです」とスーパー協力姿勢です。
むおは、手加減すると怒る後輩です。
大人になると、手を抜く事も増えてきますので、すごくシャキッとさせてくれる存在です。
彼の存在自体にありがとうと言いたい。
直接言うのは恥ずかしいのでアレですけども。
そんなこんなで出来上がったシーンですが、1人の頭で考えた事なんて知れてますから、やはり発展させてくれる演出家、仲間は不可欠です。
だから、あのシーンの評判が良くて、すごく嬉しかったし、すごく安心しました。
やったぞ俺!と思うより、やったぞ俺たち!って思う人生のほうが価値があります、僕にとっては。
そして!!!
阿片のシーンのやり方も書いときます!!
これさえ読めば、君も今日から阿片中毒の演技ができるぞー!!レッツトライ!
誤解のないように言っておきます!
実際は、やってませんよ!!
そもそもアレがリアルな阿片中毒の演技なのか、僕にはわかりません。笑
僕はそこまでリアル思考なタイプではないので、お客様がそう感じればOK、ストーリーに合っていればOKという感じでやんす。
まず、調べたところ阿片という薬物は、鎮痛作用、陶酔作用がある、いわゆるダウナー系の薬物の様です。
そして炙って煙にして吸い込むとのことです。
煙を吸って気持ちいい、落ち着く、陶酔、、
もっと言えば
息を吸って吐いてとても気持ちいい状況。。。
ふむふむ
何か似た状況は無いだろうか?
ありました!!
お風呂です!!!!
お風呂に入る瞬間、大きく息を吸い込み、少し止めてからゆっくり大きく息を吐き出しますよね?
そして浸かってる間は陶酔してるような気分になりませんか?
なりますよね
「ふぃいぃいいい」
って言いますもんね。
お風呂に入る瞬間、というか、大きく息を吸い込む時って、実は目が大きく開くのです。
(眉間に皺を寄せたまま深呼吸してみてください、すごくやりづらいですよ☆)
大きく息を吸う時に勝手に開いてしまう目を、開いたままにして"瞳孔が開いていく"という表現に代用しております。
種明かししてしまえば、僕はずっと大きくゆっくり呼吸しながら、お風呂に入ってる感じで演技してましたという事なのです。
夢の無い話です。
それに朝ベッドで寝ぼけてる感じを足して、完成です。
是非ともDVDで確認してみてください。
完全に寝ぼけながらお風呂に入ってる人ですよ!
聖書のくだりなんかは、実は寝ぼけてる感じでやると頭もぼやけて、台詞が出づらくなるので、聖書引用し始めてからは、いわゆるアングラ芝居に切り替えております。
視点は定めないのがポイントだよ☆
(難しめの暗算をする時、目を開けてるのに、どこも見てない状態ってありますよね?
脳はあの状態にして、見てるけど何も見てないモードにしたまま、意識はハッキリ、台詞はクッキリという感じですね)
アングラや新劇の俳優さんで凄いなぁと思う人達は、全員、どんなに動きながらでも、ものすごいテンポで、ものすごい量の長ゼリフを、台詞のプロポーションを全く崩さず聞かせる技術があります。
言葉に対する執念みたいなものがあるのです。
阿片のシーンだけの話ではないのですが、僕は何かを想像して表現するのはとっても大変だと思っていて、だったら実感を使ったほうが早いなぁと思うタイプなので、過去の経験から使える実感(肌感覚)を引き出して使う事が多いみたいです。
「俺は阿片をやってるぞ!」と想像して表現するのは僕には難しいので、「お風呂の実感!ふぃいいい気持ちいい!!」ということです☆
そういう実感と、想像するのが簡単なものは想像しつつ、一呼吸ごとにバチバチ切り替えていくと、なんかいい感じにイッちゃってる感じになります。
切り替えの具体的なイメージは
お風呂
アングラ
めっちゃ普通
すごく感情的
の4つです。
この4つを呼吸ごとに短時間で切り替えていくと、すごく違和感のある感じに仕上がります☆
呼吸ごとと言ったのは、人間の状態が切り替わるとき、必ず呼吸が切り替わるからです。
例えば、人は驚く時は素早く大きく息を吸います。
素早く脳に酸素を送って、状況を理解するためですね。
怒る時はゆっくり大きく吸います。
これは怒りを抑えるために脳に酸素を送るからですね。
身体と呼吸と感情は凄く密接な関係にあるので、呼吸のほうを切り替えると、感情も変わるのです!
どんなに嬉しいときでも、下をむいて大きく息を吐くとテンションが下がり、上を向いて大きく息を吸うとテンションがあがります。
やってみてください。
ね?
こうして言葉にすると、とっても簡単阿片中毒演技!!
きみもレッツトライ!!
ジゴマ3にも幻夢ちゃんで出演したいなぁ。
クリスチャンに戻り、出身地の九州あたりで、文代ちゃんと慎ましく暮らしてたりしたらいいなぁ。