テロで悲しみと怒りにくれている
アメリカ人を前にして

イギリスの彼が私達日本人に聞いたこと。



『原爆を落とされたお前達日本人は
アメリカのことをどう思っているのか?』



同じように、憎んでいるのか?

許せないと言う思いは未だあるのか?


敗戦国として、
アメリカに対して、
アメリカ人に対して、
どう思っているのか?



わたしはこう答えた


『アメリカは憎くない。戦争が嫌だ。』


自分もそうだし、
周りの友達、家族がアメリカに対して怒ってる事なんて、正直見たことも聞いたことも無い。



むしろ
日本人はアメリカが大好きなように見える。


休みになったら
やれハワイだ
グアムだ
ニューヨークだ…



留学と言えばアメリカが真っ先に選考先に上がる。


果たして、
アメリカを憎んでいる人なんて、居るんだろうか?



わたしだって戦争の事は学校で学んできた。


全然知らないわけではない


でも、そこで教えられる事は
戦争が悪だと言うこと。


原爆でたくさんの人が死んだ事。


今も苦しんでる人がいる事。



そして、不思議な事だけど、
アメリカ人について議論した事なんて無かった。



戦争は
ちょっと自分達の生活からは遠い。



なんとなく、昔の話。


ピンと来ない。




戦争は駄目だ。




そうは思っているけれど、
何か一つの物を、具体的に憎むことなんて
考えもしたこと無い。




『アメリカは原爆を落とした。たくさんの人が死んで悲しいけれど、悪いのは戦争だ。そう教えられてきたし、そう思ってる人が多いとおもう』



わたしは、そう答えた。



イギリスの彼は
今度はこんな事を聞いてきた。



『えみたち今の現代人の気持ちはなんとなくわかった。じゃあ、お前の祖父母はどう思ってる?
聞いた話ではなく、何かに教育されたわけでもなく、実際に戦争を経験したおばあちゃん達は、アメリカを憎んでいるのか?今のお前達とは違う気持ちがあるだろう?どう思っているんだ?』




わたしは









わたしは





答えることが出来なかった。









学校でたくさんの事を学んできたけれど



実際に祖父母から戦争の話を聞いた事なんて
今まで無かった。




戦後は大変だった程度の
チラッとした話を聞いた事はあっても




どんな事があり
どんな気持ちを抱いたのか





聞いてみようと思ったことさえ無かった。









わたしは何にも知らなかった。








教科書やテレビではなく、
身近に聞く人が居るのに
経験してきた人がたくさん居るのに、




聞いてみようと思ったこともなければ、


疑問にさえも思わなかった。









わたしは何にも知らない事に気づいて
愕然とした。








『おばあちゃん達から戦争の話はあまり聞いた事が無い。』
言えたのは、これだけだった。









この時、本当はもっと言いたい事もあったのだけど、英語と言う壁に遮られて
言いたい事の半分も言えなかった私。








ひとまず日本を出れば、
何歳であろうと、
日本代表になる。






そして、
日本代表としての意見を求められる。







英語が話せないなら
もう意見はなかったものとして
話は進んでいく。






意見が無かったら、
やはり、それも、
何も無かったものとして話が進む。






英語も
自分の意見も
どちらも必須。




どちらかがかけても
無かったものになる






わたしは、
この時に英語の必要性を痛感した。






そして、本当のところを知るべく、
帰国してから、おばあちゃん達に頻回に会いに行った。






戦争の話を、戦後の話を聞きに行った。






あの時、何があって、
そして、どう思ったのか。






自分の祖父母だけでなく、
知り合う人みんなに聞いた。






旦那と出会ってからは
彼の祖父母にも昔の話を聞いた。







それぞれが、自分のストーリーを持っていた。






そこには、わたしの知らない世界があった。





わたしの知らない日本があった。









そして
誰もアメリカ人を憎んでなかった。











あの時代を生き、今の日本の基盤を作った
当時のおじいちゃんやおばあちゃん達





古き良き物と
新しい生活を調和させていく柔軟性が
彼らにはあった。








年寄りは生きる宝だ。






そこで聞いた話は
わたしを広げて
わたしを自由にした。






人との出会いは大切だ。





それは人生を変える。






わたしが香港の安宿で出会った人達は
私の人生を変えた





わたしに新しい世界を広げてくれた。






だからわたしは
どれだけお金を持っていたとしても、
安宿に泊まるんだと思う。