悲しんでいたのではなかった
息子に先立たれてしまった私のことを
悲しんでいたんです」


一人息子を震災で失って
深く長い悲しみと
失意の間をくぐりぬけてきた母親が
ポツリと言いました。
「一緒に死んでしまいたいほど
切ないのに
そんな中にいながら
お腹が空いてしまう自分が
情けなく思いました
ごはんなんか…
食べなくてもいいのに…」
絶望の淵を
何とかつま先立って歩いてきた
母親だった。
ノイローゼにもなった。
自死への道を選んだ時もあった。
ただふらふらと
風船のように歩いている時もあった。


「でも…
不思議ですね
こんな母親に
あの子が呼びかけてくれたんです
母さん死んじゃだめだよ
母さんいなくなったら
ぼくにはもう母さんがいないんだから
夢の中の呼ぶ声で目をさましたんです
夢なんですけどねぇ…」
こんな母親を
あの子は「母親」にしてくれた。
そう言って
その人は泣いた。
悲しみのどん底で
境界を異にする別れを経て
この母親は我が子に
ほんとうに出逢った。
すべての人々よ
どうかこのような
悲しみのどん底の別れを
憾んでしまうのではなく
亡き者が示してくれた
明日への一歩を
ともに踏みしめていこう。
独りじゃない。
ひとりぼっちじゃない。
いつかまた会える日まで
ともに歩んでいこう。

息子よ…
寒かったろう。
怖かったろう。
痛かったろう。
苦しかったろう。
寂しかったろう。
そして今は…
そばに居てくれているのかい?

いつかまた会える日まで
「母さん」と
呼び続けてほしい。
※写真
Rmember3.11より
石巻市 川〇さま
あなたに出会えて
わたしは再び
命を頂きました。
合掌。