急に居なくなってしまった彼
私は近所の公園や
彼の職場まで足を運んだ
でも彼はいない
私は途方にくれ
家路を進んだ
家に着くころ
私のマンションの前に人影が…
彼だ!!
膝を抱え
小さくなり
うつむいている彼がいた
当然だ
彼は「癌」と診断された
詳しい状況は分からない
でも病気になってしまったのは彼だ
怖いはず
辛いはず
私は
「気丈に振る舞わなければ」
と思い
彼のそばに
歩み寄った
鼻をすする音
彼は泣いていたのです
彼の横に座ると
ほのかに
お酒の匂いがした
1人で飲んできたのだろう
お酒を飲んだって
忘れられるわけじゃない
辛さが半減するわけじゃない
怖くなくなるわけでもない
この時の
彼の気持ちを考えると
どんなだろう
言いようのない恐怖
自分がこの世に
存在しなくなってしまうかもしれない
そんなことを
考えていたのかもしれない
私は彼の膝に
そっと手をやった
彼は顔をあげ
私の顔を見ると
無理をしているのが分かるような
笑顔を見せた
「辛い時は無理して笑わないの」
私は彼に
意地悪を言うように言った
「今の言葉で普通に笑えた」
彼はさっきより
笑顔らしい笑顔になった
「聞いた?」
私はうなずいた
「まったく…参るよなぁ」
「この若さで癌だって
ふざけんなって感じだわ」
彼は
笑ってるような
笑ってないような
何とも言えない表情で言った
私は彼の顔をじっと見ていた
「頑張れるかな…」
彼は
寂しそうな表情で言った
「私がいるのに頑張れないの?」
私はまた意地悪く
でも心から
彼の支えになりたいという想いで言った
「そうだな…」
彼は深く息を吐きながら言った
「私はずっといるよ
ずっと一緒にいるからね」
彼の手を強く握った
不思議だった
なぜか
この時の私は
泣きもしなければ
彼にすがることもなかった
私は心に決めていた
「彼と共に癌と戦う」
彼がどんな姿になっても
彼が寝たきりになっても
私は彼に添い遂げる
心の中でそう思っていた
「沖縄、どうする?」
私は彼に聞いた
「おれが治ってから行こう」
彼はすっかり
闘う顔になっていた
私たちは2人で
困難を乗り越えようと決めた
どんなことがあっても
彼のそばを離れない
今まで私は
どんなことにも屈しなかった
彼もそうやって生きてきた
今は会社よりも
彼の命が先決
もし会社が駄目になったとしても
もう一度
創りなおせばいい
仕事はどうにでもなる
そんなふうに考えていた
とにかく彼を最優先にしよう
彼には私しかいないのだから
私はそう誓ったのでした
いずれ来るであろう
壮絶な闘いも知らずに…
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