新渡戸稲造著 山本博文訳
以前読んだ内田樹氏の著書の中で、新渡戸稲造の「武士道」の一文が引用されていたのを覚えていて、先日本屋をうろついている時に思わず衝動買いした本。新書本の帯にも、内田樹氏の推薦の言が記載されている。
新渡戸が外国人に対して日本文化の礎としての「武士道」を英語で書いたものを逆輸入している本。
山本博文氏が、原文どおりではなく、新渡戸が採用したであろう原典を調査し、その言外の意味も含めて訳文を作っているのでしょう、とても読みやすく、理解しやすい文章でした。
内容的には、「武士道」とは何ぞやを、外国人が理解しやすい、海外の事例との比較をしながら解説していくスタイル。日本についてもたれていた「野蛮な国民」という誤解を解かんがために書かれた本ということで、日本の文化や風習が、西洋の慣習や哲学・思想とも通じる価値を持ったものであることを丁寧に書き下している。
ただし、訳者の山本氏の解説にもあるが、この本が書かれたのは、日清戦争後間もなくということなので、武士社会崩壊後。つまり、新渡戸自身、本当の意味での武士道を実体験している訳ではなく、ある種の郷愁を抱きながら、過ぎ去りし時代を美化して書いている傾向は否めない気がする。
また、武士道として紹介されている価値観が、必ずしも武士特有のものではなく、日本人なら誰もが共有していたであろうものもたくさんあるような気がする。
そういうことを差し置いても、あの時代に、客観的な手法で、日本の文化を理路整然と可視化したことは、大変な功績だと思う。
私自身がそうなのだが、学校教育の場で、新渡戸稲造という人物について、あまり深く学ぶことはないように思う。しかし、本書が当時果たした役割の大きさを考えれば、本書の内容とともに、もっとフォーカスされても良い人物であるような気がする。
少なくとも、ワタシには、「温故知新」的な新しい発見のあった読書でした。