もういやや! と叫んだのは和歌山からきた鳥丸くんでした。

まあまあ、とそれをなだめたの徳島出身の萬田くん。

彼は「一浪してます」と言っていたし、お兄さんが寮の先輩として在籍してるらしい。

「兄貴から聞いてんけど、特別厳しいのはオリエンテーション期間中だけみたいやし、少しの辛抱やで」

「少しって、あと3日もあるねんで。僕の精神が壊れてしまうわ」

僕もこの寮に4年間いるつもりはありませんでした。2年くらい生活してアルバイトでもして少しお金を貯めたら、アパートにでも移ればいい、なんて思っていたのです。

でも、2年間は辛抱しないといけません。今、この寮を逃げ出すわけにいかなかったのです。

「辛い、出て行きたい!」と叫ぶことができる鳥丸くんがうらやましいと思いました。

数人は、彼を止めようとしました。数人は静観していました。

僕も静観している方でした。

というか、可能であれば出て行きたいと思いましたが、貧乏な僕にはここより先、行くところはありませんでした。

でも、やっぱり“失敗した!!”と思いました。。