少しして、委員が帰ってきました。相変わらず真っ暗なままでした。

「西村~俺がいつそんな寮歌教えた!」

「どうもすいませんでした。」

委員の一人でした。

「優しい幹事さんに怒られたやないか!」

 

そんな風に責められ、またひとしきり寮歌の練習をしました。

いったい何時間しているのか?

私は、覚えてしまいました。

ただ、極度の緊張感で出てこない、そんな感じでした。

西村も一緒だと思います。歌詞は頭に入っているけれど、追いつめられるとなかなか言葉にできないんだと思います。

詰込みの極致ですよね。

「おまえら、わかったんか! 返事!」

「はぁい」

その返事をするときにみんなが鼻で息を吸う間合いがわかりました。苦も無く、声をそろえて返事ができました。

人間てどんどん順応して行くんだなあと思いました。

この夜の時間が何時間続くんだろうと思いました。

 

でも、やはりスケジュールがあるらしく1時間程度で終わりました。水滸伝が見たいとか、英語の学習塾に行きたいとか、そんな希望は一切消えました。

 

とにかく早くこの拘束から解放されたい、解放してほしいと思いました。

最初にもらった栞(しおり)、寮歌や、寮則の書いてある、がぼろぼろになってきました。

 

「よく読んどいてね~」

数時間前、軽く言われた言葉を発した委員さんが鬼のように吠えていました。いったい私はどうなるんでしょうか? まだ入学式を迎えてはいませんでした。。